第4章 組織犯罪対策 

第3節 薬物銃器対策

1 薬物情勢

 近年、覚せい剤事犯の検挙人員及び覚せい剤の押収量が高水準で推移しており、その需要は根強いものと認められる。また、平成16年中は、大麻及びMDMA等の合成麻薬に係る事犯の検挙人員及びこれらの薬物の押収量が過去最高を記録するなど、乱用薬物が多様化していることがうかがわれた。このように、我が国の薬物情勢は、極めて憂慮すべき状況にある。

(1) 根強い覚せい剤の需要
 平成16年中の覚せい剤事犯の検挙件数は1万7,699件、検挙人員は1万2,220人と、それぞれ前年より2,430件(12.1%)、2,404人(16.4%)減少し、押収量は406.1キログラムと、前年より80.7キログラム(16.6%)減少した。
 このうち、密輸入事犯の検挙件数は102件、検挙人員は120人と、それぞれ前年より55件(117.0%)、55人(84.6%)増加した。

事例
 台湾人の男(48)ら2人は、覚せい剤99.3キログラムを、貨物船のコンテナに積載した缶入りの化学薬品に偽装して香港から密輸入した。16年2月、海外の取締機関からの情報を端緒として、覚せい剤取締法違反で逮捕した(警視庁、神奈川)。

 
図4-3 覚せい剤事犯の検挙状況の推移(平成7~16年)

図4-3 覚せい剤事犯の検挙状況の推移(平成7~16年)
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 覚せい剤事犯の検挙人員が減少した要因として、15年3月以降、相次いで大型密輸入事件を検挙するとともに、政府を挙げて国際海・空港等における水際対策を強化したことにより、密輸入を阻止できたことが挙げられる。また、20歳代を中心とした若い世代では、覚せい剤ではなく、大麻やMDMAを乱用する者が増えており、薬物乱用者の嗜好が変化しているとも考えられる。
 しかし、検挙人員が減少しているとはいえ、いまだに相当量の押収があること、航空機を利用した携帯密輸入事犯や、国際宅配便等による航空貨物便を利用した小口の密輸入事犯が増加していること、密売価格の高騰が継続していることなどから、覚せい剤の需要は根強いと認められる。

 
(2) 乱用薬物の多様化
 [1] 大麻事犯
 平成16年中の大麻事犯の検挙件数は3,018件、検挙人員は2,209人と、それぞれ前年より246件(8.9%)、177人(8.7%)増加し、いずれも過去最高を記録した。20歳代を中心に、乱用の拡大が続いている。大麻樹脂の押収量は294.5キログラム(前年比27.5キログラム(10.3%)増)と過去最高の記録となった。乾燥大麻の押収量は606.6キログラム(前年比69.4キログラム(12.9%)増)と過去3番目の記録となった。

 
表4-8 大麻事犯の検挙状況の推移(平成12~16年)

表4-8 大麻事犯の検挙状況の推移(平成12~16年)
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 [2] 麻薬等事犯
  ア MDMA等合成麻薬
 16年中のMDMA等合成麻薬事犯の検挙件数は833件、検挙人員は417人と、それぞれ前年より325件(64.0%)、161人(62.9%)増加し、いずれも過去最高であった15年を大幅に上回った。特に、20歳代を中心とした若年層への乱用の拡大が顕著であった。押収量は46万9,126錠と、前年より7万6,038錠(19.3%)増加し、これも過去最高であった15年の押収量を上回った。

 
図4-4 MDMA等合成麻薬事犯の検挙状況の推移(平成12~16年)

図4-4 MDMA等合成麻薬事犯の検挙状況の推移(平成12~16年)
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体に巻き付けて密輸されたMDMA
体に巻き付けて密輸されたMDMA

  イ コカイン
 16年のコカイン事犯の検挙件数は161件、検挙人員は76人と、それぞれ前年より2件(1.3%)、18人(31.0%)増加した。押収量は85.4キログラムと前年の約37倍に増加し、過去最高を記録した。

 
表4-9 コカイン事犯の検挙状況の推移(平成12~16年)

表4-9 コカイン事犯の検挙状況の推移(平成12~16年)
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  ウ ヘロイン
 16年中のヘロイン事犯の検挙件数は41件、検挙人員は13人と、それぞれ前年より72件(63.7%)、59人(81.9%)減少し、その押収量は32.6グラムと大幅に減少した。

 
表4-10 ヘロイン事犯の検挙状況の推移(平成12~16年)

表4-10 ヘロイン事犯の検挙状況の推移(平成12~16年)
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  エ 向精神薬
 16年中の向精神薬事犯のうち鎮静剤事犯の検挙件数は48件、検挙人員は24人と、それぞれ前年より4件(9.1%)、2人(9.1%)増加したが、その押収量は11万222錠(93.6%)減少した。

 
表4-11 向精神薬事犯の検挙状況(平成15、16年)

表4-11 向精神薬事犯の検挙状況(平成15、16年)
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  オ あへん
 16年中のあへん事犯の検挙件数は80件と、前年より4件(4.8%)減少したが、検挙人員は59人と、前年より9人(18.0%)増加した。押収量は3.5キログラム(67.3%)減少した。

 
表4-12 あへん事犯検挙状況の推移(平成12~16年)

表4-12 あへん事犯検挙状況の推移(平成12~16年)
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 [3] シンナー等有機溶剤事犯
 16年中のシンナー等有機溶剤事犯の検挙(補導を含む。)人員は、摂取、吸入及び摂取・吸入目的所持によるものが4,057人、知情販売(乱用する目的で購入すると知って販売すること)等によるものが396人であった。それぞれの55.3%、70.2%を少年が占めた。

 [4] 脱法ドラッグへの対応
 近年、薬物取締法令に触れることなく多幸感や性的快感等の薬理作用が得られるなどと宣伝し、いわゆる脱法ドラッグを販売する事案が散見される。警察では、この問題について関係機関と連携して諸対策を講じており、成分中に規制薬物が含まれ法令に違反する場合には、厳正な取締りを行っている。
 17年3月には、3-[2-(ジイソプロピルアミノ)エチル]-5-メトキシインドール(通称5-MeO-DIPT)及びその塩類等が、新たに麻薬及び向精神薬取締法における麻薬として指定され、規制対象となった。

 第3節 薬物銃器対策

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