第7章 公安の維持 

3 対日有害活動の現状と警察の対応

(1) 北朝鮮による対日諸工作

 北朝鮮は、核問題の解決に向けた我が国の動向について「日本が米国の対朝鮮孤立圧殺策動に便乗して分別なく狂奔するなら、その代価を十分に払うことになるであろう」と警告を行ったり、6者会合(注)で日本人拉致問題を取り上げることに対して盛んにけん制を行ったりするなどの動きをみせた。


注:北朝鮮の核問題の解決に向けた多国間の枠組みによる協議。北朝鮮が米国との二国間協議を求める一方で、米国は、1994年(平成6年)の米朝枠組み合意が破綻したことを教訓に、周辺国を含めた多国間協議を主張した。2003年(15年)4月の米中朝による三か国協議を経た後、日本、韓国、ロシアも加えて、同年8月に第一回会合、2004年(16年)2月に第二回会合、同年6月に第三回会合が、いずれも中国の北京で開催された。

 また、我が国の外国為替及び外国貿易法の改正や、第159回国会に提出された特定船舶入港禁止特別措置法の制定の動きに対して、当初から強い反発を示し、朝鮮労働党の機関紙である労働新聞の論評等を通じて「報復には報復で、強硬には超強硬で」、「日本の経済制裁を宣戦布告とみなし、断固たる自衛的措置を採っていく」などの激烈な表現で非難を繰り返した。
 国内では、朝鮮総聯(れん)が、北朝鮮の動きに呼応して、外国為替及び外国貿易法の改正や特定船舶入港禁止特別措置法の制定の阻止に向けて、政界人に対して様々な手段を用いて盛んに働き掛けを行った。また、慶祝行事に日本人を招待したり、時宜をとらえて幹部が地方公共団体の首長等を訪問したりするなどして、日朝国交正常化への協力や朝鮮総聯の活動への理解を求めるなどの諸工作を行った。
 北朝鮮は、今後とも、時宜をとらえた対日非難を継続するとともに、我が国の各層に対して、過去の清算を最優先させた早期の国交正常化への協力や朝鮮総聯の活動に対する理解を求めて、直接に、又は朝鮮総聯を介した諸工作を活発に展開するものとみられる。
 警察は、こうした諸工作に関する情報収集活動を強化するとともに、関連して行われる違法行為に対しては厳正な取締りを行うこととしている。

事例
15年2月、警視庁が虚偽の氏名等を用いて我が国で活動していた在日朝鮮人を公正証書原本不実記載・同行使、出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)違反で検挙したが、一連の捜査や公判において、韓国軍兵士を主な標的とした主体思想信奉者の育成や北朝鮮に関する宣伝工作等の対韓工作活動に携わっていたこと、そうした活動について「万景峰92号」の船内で北朝鮮幹部から工作の指示を受けていたことが明らかになった。

 
万景峰92号

万景峰92号

 3 対日有害活動の現状と警察の対応

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