第7章 公安の維持 

(2) 北朝鮮

 〔1〕 日本人拉致容疑事案
 これまでの捜査の結果、警察は、平成16年7月時点で、北朝鮮による日本人拉致容疑事案は10件発生し、15人が拉致されたものと判断している。また、拉致に関与した北朝鮮工作員や「よど号」のハイジャックに関わった犯人ら3人について、既に逮捕状の発付を得て、国際手配の手続等を行っている。警察は、ほかにも北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案があるとみて、所要の捜査や調査を進めている。
 拉致の主要な目的は諸情報を総合すると、北朝鮮工作員が日本人のごとく振る舞えるようにするための教育を行わせることや、北朝鮮工作員が日本に潜入して、拉致した者になりすまして活動できるようにすることなどであるとみられる。
 2002年(14年)9月17日の日朝首脳会談の席上で、金正日国防委員長は、拉致問題について、「(北朝鮮の)特殊機関の一部の盲動主義者らが英雄主義に走ってかかる行為を行ってきたと考えている」との認識を示し、謝罪した。しかし、その後も北朝鮮側は、拉致問題は「本質上すべて解決した問題」であり、日本に帰国した5人の被害者については「(日本は、5人を)強制抑留し、逆に拉致している」などと主張して、被害者の家族の帰国や安否不明者に関する情報の提供に前向きな姿勢を示さず、日朝間の交渉は膠着状態に陥った。2004年(16年)5月22日、小泉首相の再訪朝により日朝首脳会談が開催された際、金正日国防委員長は、「今回の会談を踏まえ、改めて白紙に戻り、早期に、本格的かつ徹底的な調査を行う」と表明した。また、同日、拉致被害者の家族5人が帰国するとともに、7月18日には、残りの家族3人の帰国・来日が実現した。

 
表7-2「北朝鮮による日本人拉致容疑事案」の概要

表7-2「北朝鮮による日本人拉致容疑事案」の概要
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 〔2〕 北朝鮮による主なテロ事件
 北朝鮮は、朝鮮戦争以降、南北軍事境界線を挟んで韓国と軍事的に対峙(じ)している関係にあり、韓国に対するテロ活動の一環として、これまでに、工作員等によるテロ事件を世界各地で引き起こしており、その危険性はいまだ変わらないものとみられる。
 北朝鮮は、日本を足場としたテロも引き起こしており、これは、「大韓航空機爆破事件」において、偽造された日本人名義の旅券を北朝鮮工作員が使用した例からも明らかである。

 
表7-3 北朝鮮による主なテロ事件

表7-3 北朝鮮による主なテロ事件
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 1 国際テロ情勢

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