第7章 公安の維持 

第7章 公安の維持

1 国際テロ情勢

(1) イスラム過激派

 2001年(平成13年)9月11日の米国における同時多発テロ事件以降、各国政府がテロ対策を強化しているにもかかわらず、国際テロの脅威は依然として高い状況にある。中でも、国際テロ組織「アル・カーイダ」は、これまで多くのメンバーが身柄拘束されているものの、全世界のイスラム過激派と連携し、凶悪なテロ事件を引き起こしている。

 
表7-1 2003年(平成15年)以降にイスラム過激派が起こしたとされる主なテロ事件

表7-1 2003年(平成15年)以降にイスラム過激派が起こしたとされる主なテロ事件
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 また、「アル・カーイダ」は、イラクにおける主要な戦闘の終結後も、米国その他の部隊派遣国のほか、米国を支持した国々や親米湾岸・アラブ諸国を非難するとともに、全世界のイスラム教徒に対してジハード(聖戦)を呼び掛ける声明を発している。2003年(15年)10月18日には、オサマ・ビンラディンとされる者が、カタールの衛星放送「アル・ジャジーラ」を通じ、英国、スペイン、オーストラリア、ポーランド、イタリアやクウェート等の湾岸諸国と並べて、日本を攻撃対象国の1つとして名指しし、2004年(16年)5月の同人のものとされる声明でも日本に言及している。
 イラクでは、2003年(15年)12月13日にフセイン元大統領が米軍によって身柄拘束された後も、テロ攻撃が多発している。テロの対象も、米英軍以外の駐留外国軍、外国人関係施設等へと多様化している。そうした中、同年11月には、ティクリートの南方約30キロメートルの地点で我が国の外務省職員2人を含む3人が襲撃、殺害される事件が発生した。また2004年(16年)4月には、武装グループがファルージャで邦人3人を人質とし、我が国に自衛隊の撤退を要求した事件(後に解放)やバグダッド近郊で邦人2人が身柄を拘束される事件(後に解放)が発生し、さらに、同年5月には、邦人ジャーナリスト2人が乗車した車両がバグダッド郊外で襲撃を受け、イラク人運転手を除く3人が殺害される事件が発生した。
 東南アジアでは、2003年(15年)8月5日、「アル・カーイダ」とも関係を有するとされるイスラム過激派「ジェマア・イスラミア」が、インドネシア・ジャカルタにおいて、米国系大型ホテルに対する自動車爆弾による自爆テロ事件を引き起こし、12人が死亡、150人以上が負傷した。このことは、依然として、大規模・無差別テロの脅威が我が国と地理的に近い東南アジアに及んでいることを示しており、我が国の権益や在外邦人へのテロの脅威が高まっている。
 我が国でも、国際手配されていた「アル・カーイダ」関係者であるフランス人が、近年、他人名義の旅券を使用して入出国を繰り返していた事案が16年5月に判明し、我が国が国際テロリストと無縁でないことが明らかとなった。

 
サウジアラビア・リヤドにおける爆破テロ事件(2003年(15年)5月)

サウジアラビア・リヤドにおける爆破テロ事件(2003年(15年)5月)

 1 国際テロ情勢

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