第2章 生活安全の確保と警察活動 

(2)国民の自主防犯行動の促進

 治安を回復し,「犯罪に強い社会」を構築する上で,国民,地域社会,関係機関・団体が果たすべき役割は大きい。警察では,次のような取組みにより,国民の自主防犯意識の高揚を図り,自主的な防犯行動の促進を図っている。

1)地域安全情報の効果的な提供
 居住地域における犯罪の発生状況等の地域安全情報を提供することは,国民の自主防犯意識の高揚を図り,実効ある自主防犯行動を促進する上で極めて重要である。警察では,地域における犯罪の発生件数のみならず,多発している罪種・手口の分析結果や犯罪からの具体的な防御手法等も含んだ幅広い情報の提供に努めている。
 また,情報の提供方法についても,警察官による巡回連絡や町内会等を通じた提供はもとより,学校における児童,生徒等を通じた保護者への提供や犯罪の被害を受けやすい業種に係る業界団体を通じた提供,テレビ,ラジオ等の報道機関への素材提供やインターネット等の電子的媒体を活用した提供等を行っている。

事例1
 京都府警察本部の犯罪情勢分析室では,管内で発生した街頭犯罪(8罪種)の実態を各警察署から電子メールで集約するシステムを構築するとともに,時間帯別に色を分けて見やすくした犯罪地図などをホームページで公開し,身近な場所における犯罪発生実態の情報を発信することで,住民の防犯意識の高揚に役立てている。
 
管内住民に広報している犯罪地図(京都)

管内住民に広報している犯罪地図(京都)

事例2
 警視庁では,犯罪の発生件数を市区町村別にグラフ化した統計や多発地域を色分けした犯罪地図をホームページ上に公開している。これを受けて,侵入窃盗の発生が都内最多であった世田谷区では,住民の不安を解消するため,学校警備や公園の巡回等の既存業務を拡充し,24時間体制で区内の住宅街や公園等の防犯パトロールを実施するとともに,防犯ボランティア活動の支援事業を併せて行うこととした。

2)防犯相談の実施
 警察では,新たな侵入手口の出現に際して,侵入手口を踏まえた防犯設備に関する防犯相談を積極的に行ったところであり,その後も,次のような相談に対応している。
 ○錠前,防犯ガラス,ガードプレート,防犯ブザー等の防犯設備や防犯機器に関する相談
 ○防犯灯の設置等,犯罪防止に配慮した公共空間・住宅の環境設計に関する相談
 ○ひったくり,侵入盗,強盗等の犯罪の被害に遭わないための方策に関する相談

3)参加・体験・実践型の防犯教育(学習)の実施
 地域での犯罪発生状況や具体的な防犯対策が容易に理解され,自主防犯行動が実践されるようにするためには,住民が参加・体験・実践する防犯診断,防犯訓練等を開催することが望ましい。警察では,防犯設備士等の専門家の参加を得ながら,機会をとらえて犯罪類型,対象者等に応じた防犯教育(学習)を実施している。

 
侵入に強い錠前を紹介する防犯教育

侵入に強い錠前を紹介する防犯教育

4)環境設計活動の推進
 住宅地,商店街等の地域において,実地調査等に基づき犯罪危険箇所の地図を作成して問題意識の共有を図る取組みや,自主的に防犯灯や防犯カメラを整備する取組み等が行われており,警察は情報の提供等により,これらの自主的な環境設計活動を支援している。

5)街頭における犯罪抑止活動の推進
 街頭において公然と行われ,住民の不安感を高めている違法行為を防止するため,関係行政機関,防犯指導員,職域防犯団体,ボランティア団体等により,いわゆるピンクビラや放置自転車の撤去,落書きの消去,危険箇所のパトロール等の活動が行われている。警察はこれを積極的に支援するとともに,これらの活動と連携して違法行為の指導取締りを推進している。

6)地域安全活動パイロット事業の実施
 警察は,地域住民の自主的な防犯行動を促進するため,地区を指定して重点的に地域安全活動に取り組む「地域安全活動パイロット事業」を実施している。この事業は,指定地区において各方面からの支援や協力を集中させるとともに,地区防犯協会を中心とした民間防犯組織の整備を進めることにより,地域の犯罪抑止効果を高めることを目的としている。

事例
 パイロット地区に指定された地区を管轄する警察署では,定期的な車両防犯診断及び防犯パトロールを実施するとともに,自主防犯組織の結成を働き掛けて,警察との協働による防犯活動を実施した。この警察署の管内では,14年中における侵入盗,強盗,性犯罪,乗物盗及び車上ねらいの認知件数が,13年の認知件数を下回った(茨城)。

 

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