第2章 生活安全の確保と警察活動 

(3)防犯システムたる生活安全産業の育成

1)防犯システムとしての警備業の育成
 警備業の業務は,施設警備を始め,交通誘導警備,雑踏警備,現金輸送警備,ボディーガード等の幅広い分野に及び,自主防犯行動を補完又は代行する重要な役割を担っている。また,ホーム・セキュリティシステム等に係る機械警備の普及拡大等に伴い,警備業は民間におけるセキュリティサービスとして定着してきており,平成14年末現在の警備業者数は9,463業者,警備員数は436,810人に達している(図2-3)。

 
図2-3 警備業者・警備員数の推移(昭和47~平成14年)

図2-3 警備業者・警備員数の推移(昭和47~平成14年)
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 警察による警備業者に対する指導,監督等は,主に警備業務を適正に実施させる観点から行われてきたが,警備業が犯罪に強い社会を構築する上で不可欠な存在となっている状況を踏まえ,今後,警備業を警察が立案する犯罪対策体系の中に積極的に位置付けていくことが検討課題の一つとなっている。
 警察は,その前提として,警備員等の検定制度を利用して,警備業務の種別に応じて専門的な知識及び能力の向上を図ることなど,質の高い警備員を確保し養成していくことを進めていくことが必要である。また,警備業が,犯罪の抑止に資する「防犯システム」として国民のニーズに的確にこたえることができるように,侵入犯罪対策の一環としての機械警備業務,テロ防止対策の一環としての重要施設警備業務について,その業務の在り方を検討していくこととしている。
 また,14年には,警備業法が改正され,警備業者等の欠格事由について,暴力団員と密接な関係にある者等が追加されるとともに,精神病者に係る事由の見直しが行われたほか,変更の届出手続が簡素化された。

 
雑踏警備

雑踏警備

事例1
 兵庫県明石市の花火大会において発生した雑踏事故(13年7月)を受け,(社)全国警備業協会では,契約の締結,計画の策定,警備活動の実施等が適正に行われるようにするため,警察庁と協力して「雑踏警備の手引」を制作し,関係事業者に配布した。

事例2
 不審火事案が多発している3か所の警察署管内において,県が緊急地域雇用創出特別基金により,警備会社に夜間のパトロール(約50人)を委託実施した結果,14年9月から15年3月までの不審火事案が11件(前年同期比18件減)に減少した(静岡)。

2)古物商・質屋を通じた盗品の流通防止と被害品回復
 古物営業法及び質屋営業法は,古物商,質屋に盗品等が持ち込まれる蓋然性が高いことに着目して,これらの業者に取引の相手方の確認や不正品の疑いがある場合の申告,取引の記録等を義務付けることによって,盗品等の市場への流入を阻止するとともに,いったん流入した盗品等を発見するなどして,窃盗その他の犯罪の防止及びその被害の回復を図ることとしている。警察では,犯罪情勢や取引実態に配意しつつ,その適正な施行に努めている。

○古物営業法の改正
 高度情報通信ネットワーク社会の進展とともに,古物取引においてもインターネットの利用が拡大してきている。これに伴い,古物商の確認等の義務に関する規制緩和要望が提出されていたほか,ホームページを利用した無許可業者が出現するとともに,インターネット・オークションにおける盗品等の処分が多発するなどの状況が生じていた。

事例
 フリーターの少年は,駐輪中のオートバイから部品を盗むなどした上で,別の少年に頼んで盗品をインターネット・オークションに出品し,売りさばいていた(11点,27万6千円)(大阪)。

 このような状況を受け,古物営業法の一部を改正する法律が14年11月に制定され,15年9月1日より施行された(一部については15年4月1日施行)。その主な内容は,次のとおりである。
 ア インターネットを利用した古物取引に関する規定の整備
  ホームページを利用して取引を行う古物商に関し,1)ホームページアドレス(URL)の届出,2)氏名又は名称,許可証番号等の表示等の遵守事項等を定めるとともに,古物商が取引の相手方の確認等を行う方法として,相手方による電子署名が行われた電磁的記録の提供を受けることなどを追加した。
 イ インターネット・オークションにおける盗品等の売買防止等のための規定の整備
  インターネット・オークション事業者について,1)営業の届出制,2)遵守事項(盗品等の疑いがある場合の申告義務,出品者の確認及び取引の記録に関する努力義務),3)警察本部長等による競りの中止の命令,4)業務の実施の方法に関する認定制度等の必要最小限の規定を設けた。
 ウ その他
  品触れの効果的な活用のため,ファクシミリ等の情報通信の技術を利用する方法についての規定や古物商等への立入検査を一層推進するため,立入検査の主体に一般職員を含める規定等の整備を行った。

3)防犯設備業との連携
 国民が自主的な防犯行動をとるためには,安価で十分な量の優良な防犯設備が供給されていることが条件となる。防犯設備には,錠前,緊急通報装置,防犯カメラ,位置探知システム等様々なものがあるが,そのほとんどは民間によって開発・供給されていることから,警察は,犯罪情勢や手口の分析結果等を開発者に提供するなど,民間における開発を支援していくことが必要である。
 また,(社)日本防犯設備協会において運用されている防犯設備士は,防犯設備の設計,施工や維持管理に関する専門的な知識・技能を有する専門家として活躍しており,今後の防犯対策に大きな役割を担う「防犯システム」の一環として期待されるものであることから,警察では,環境設計活動,防犯相談,防犯診断等の際に,かかる専門家の支援を求めることができるように協力態勢の確保に努めている。

4)その他
 探偵社,興信所等の調査業については,詐欺事案等,悪質な業者による不適正な営業活動が後を絶たないことから,警察では,悪質な調査業者の取締り等を行うことによって,調査業の健全な発展に取り組んでいる。

 

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