第1章 組織犯罪との闘い 

(4)薬物対策の充実強化

ア 政府における総合的な薬物対策

 厳しい薬物情勢にかんがみ,平成9年1月,内閣官房長官を本部長とし総理府に置かれていた「薬物乱用対策推進本部」(昭和45年設置)は,閣議決定により,内閣総理大臣を本部長(国家公安委員会委員長は副本部長)とし内閣に設置されることとなった。
 また,10年5月には,我が国が第三次覚せい剤乱用期にあるとの認識の下,「薬物乱用防止五か年戦略」が策定された。同戦略では,第三次覚せい剤乱用期の早期終息と世界的な薬物乱用問題解決のための国際貢献を基本目標とし,さらに,青少年の薬物乱用傾向の阻止,密売組織の取締りの徹底,密輸の水際阻止と密造地域における対策の支援,薬物依存・中毒者の治療と社会復帰の支援を具体的目標として,関係省庁が連携して薬物乱用対策を戦略的に講じることとなった。
 しかしながら,14年中の覚せい剤事犯の検挙人員は,2万人に迫った9年と比較して減少しているものの,1万6,771人と高水準にあり,また,大量の覚せい剤が押収されているなど(第1節4(1)ア参照),依然として我が国は第三次覚せい剤乱用期にある。また,14年にはMDMA等の錠剤型合成麻薬や大麻樹脂の押収量が過去最高を記録するなど(第2章第6節「薬物犯罪の現状と対策」参照),新たな乱用薬物の拡大もみられ,我が国の薬物情勢は厳しい情勢にある。このため,関係省庁では,第三次覚せい剤乱用期の終息に向け,総合的な対策を推進するための取組みを強化することとしている(15年7月29日,「薬物乱用対策推進本部」は,新たに「薬物乱用防止新五か年戦略」を策定するとともに,薬物の密輸入阻止のために緊急に水際対策を講ずるため,「薬物密輸入阻止のための緊急水際対策」を策定した。)。

 

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