第1章 組織犯罪との闘い 

(3)フランス

 フランスには,都市郊外に北アフリカ等の出身者等により構成された粗暴犯罪や強窃盗を行うグループ(ギャング)が存在していることに加え,最近はパリ市内にも勢力を伸ばしてきているといわれているが,これらの集団そのものは,マフィア等と違い一時的なグループであることが多い。これらグループは,誘拐,強窃盗,恐喝等の多くに関与しており,これに対処するため,組織化されたギャングによる誘拐等の犯罪には,加重処罰が行われている。さらに,粗暴犯罪グループから発展した一部の集団は,フランス国内のみならずヨーロッパ諸国において若い女性を対象とした人身売買にも関与しているが,集団そのものは一時的なグループであることが多い。
 また,犯罪グループによって文化財や盗難自動車の不正取引も行われており,これらの取引がマネー・ローンダリングに利用されることもある。さらに,カンナビス(インド大麻),ヘロイン及びコカイン等薬物に関する犯罪においては,国境を越えて不正に薬物が輸出入されていることに加え,医療用の薬品が利用されることもあるため,警察だけでなく医療担当部局とも連携を強化し情報の一元化の図るための不正薬物取引中央総局(OCRTIS)を設置して対策を進めている。
 こうした組織犯罪に対しては,様々な形態の組織犯罪を担当する国家警察の刑事司法警察局(DCPJ:la direction centrale de la police judiciaire)が取締りを行っているほか,7つのセントラルオフィスが国内の関係機関の連携調整も行っており,専門知識が必要な捜査や専門家の育成を行うとともに,情報の一元化や犯罪防止のための施策を推進している。

 

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