第1章 組織犯罪との闘い |
事例1
平成10年5月,指定暴力団四次組織の幹部甲は,都内の繁華街にあるパチスロ店で中国人A及びBと顔見知りとなった。甲は,Aらと話をするようになり,何回か飲食を共にするうちに,Aらから,集団密航の手伝いをするよう持ちかけられた。甲は,報酬が高額であったことから,これに応じることとし,これまで,数回にわたり集団密航の手伝いをしてきた。 今回も,Bから,「近々,都内の海岸に密航者45人を載せた貨物船が接岸するので,これを受け入れる仕事を手伝って欲しい」と依頼された。具体的には,密航者を乗せるパネルバン2台を用意すること,密航者を一時的に隠匿するための貸別荘を用意すること,パネルバンの運転手を用意すること,密航者を監視することなどを依頼された。そこで,配下の暴力団員ら2人に,詳しい事情を説明しないまま,これらの準備を行うように指示して準備を行った。これらの経費は,すべてAが支払った。 密航当日は,接岸場所に甲ら3人,A,B及び中国人数人が待機し,貨物船から45人の中国人密航者を受け入れ,パネルバンに分乗させ,千葉県内の貸別荘まで運搬した。 貸別荘では,甲ら3人と中国人らが密航者を監視し,Aらは,携帯電話を利用して,中国在住の密航者の家族,親類らに連絡し,密航が成功したことを伝えた上で,密航代金を支払うよう命じていた。 甲は,報酬としてAから250万円を受け取る約束になっており,その中から35万円を配下の2人に支払うこととしていた。 Aらは,別の中国人Cから指示を受け,現場における密航の仕事を取り仕切っていたことが判明したが,Cは逃亡中である。 A,Bらは,密航者から徴収する密航代金は,一人当たり約300万円で,これは,中国に在住する密航者の家族,親類らから中国の密航組織が取り立てると供述した(千葉)。 |
事例2
指定暴力団員乙は,知人から「知り合いの蛇頭が,暴力団の上の人を紹介して欲しいと言っている」と言われたため,これを指定暴力団幹部甲に持ちかけた。甲は,乙らの仲介で,蛇頭を自称する中国人A,B,Cらと会い,報酬を得て,偽装結婚等の犯罪を手伝うようになった。 その後,甲は,Aらから「実は,中国人約100人を密航させる話がある。日本近海まで別の船で運ぶが,洋上で日本の船に積み変えて接岸したい。船の手配,密航者を運ぶトラック等の準備,密航者を匿う家屋の準備をして欲しい」と頼まれ,知り合いの元指定暴力団員丙,配下指定暴力団員丁らと共謀し,これらの手配をして密航の受入れをした。 関係者は,密航代金は,中国人密航者1人につき250万円から300万円であると供述している。日本側暴力団員らに対しては,合計約3,000万円が支払われている。このうち,船舶の手配をした漁師に約400万円が支払われ,残金約2,600万円を甲と丙で約1,300万円ずつ分配し,それぞれの配下に30万円から100万円の報酬が支払われた。 |
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