3 居住の安定(基本法第16条関係)
(1) 公営住宅への優先入居等
【施策番号20】
ア 国土交通省においては、地方公共団体に対し、平成16年から17年までにかけて、配偶者からの暴力事案の被害者をはじめとする犯罪被害者等を対象とした公営住宅への優先入居や目的外使用等について配慮を依頼する通知を、23年度には公営住宅への優先入居等の手続の簡素化に関する通知を、それぞれ発出した。また、29年度には、28年12月に成立したストーカー行為等の規制等に関する法律の一部を改正する法律の施行を踏まえ、改めて通知を発出した。
【施策番号21】
イ 国土交通省においては、公営住宅への入居に関し、都道府県営住宅における広域的な対応や市区町村営住宅を管理する市区町村を含む地方公共団体相互間における緊密な連携を各地方公共団体に要請していることについて、会議等の場で改めて各地方公共団体に周知した。
【施策番号22】
ウ 独立行政法人都市再生機構においては、自ら居住する場所を確保できない犯罪被害者等を支援するため、公営住宅の管理主体から独立行政法人都市再生機構の賃貸住宅の借上げ等について要請があった場合には、柔軟に対応することとしている。
【施策番号23】
エ 国土交通省においては、犯罪被害者等の民間賃貸住宅への円滑な入居を促進するため、地方公共団体、関係事業者、居住支援団体等が組織する居住支援協議会及び29年4月に成立し、同年10月に施行された住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律の一部を改正する法律に基づく居住支援法人による相談対応、情報提供等に対する支援を行っている。
【施策番号24】
オ 国土交通省においては、法務省作成の犯罪被害者等向けパンフレット「犯罪被害者の方々へ」により、犯罪被害者等に対し、公営住宅への優先入居等に関する施策を周知している。
(2) 被害直後及び中期的な居住場所の確保
【施策番号25】
ア 厚生労働省においては、児童相談所・婦人相談所の一時保護所や、婦人相談所が一時保護委託先として契約している母子生活支援施設、民間シェルター等において一時保護を行っており、犯罪被害女性等の個々の状況に応じて保護期間を延長するなど、柔軟に対応している。また、犯罪被害女性等を加害者等から保護するため、都道府県域を超えた広域的な一時保護・施設入所手続を行うなど、制度の適切な運用に努めている。令和元年度には、それまで定員を超えた場合にのみ一時保護委託を可能としていた対象者についても、保護を必要とする犯罪被害女性等の意向や状態及び状況等を踏まえた一時保護委託を可能とすることとし、適正かつ効果的な一時保護を図っている。
平成30年度の配偶者等からの暴力事案や人身取引(性的サービスや労働の強要等)事犯の被害女性等を含めた一時保護人数は7,588人(要保護女性本人4,052人、同伴家族3,536人)であった。
年度 | 要保護女性本人の一時保護人数 | 同伴家族の一時保護人数 | 合計 |
---|---|---|---|
平成24年度 | 6,189 | 5,376 | 11,565 |
平成25年度 | 6,125 | 5,498 | 11,623 |
平成26年度 | 5,808 | 5,274 | 11,082 |
平成27年度 | 5,117 | 4,577 | 9,694 |
平成28年度 | 4,624 | 4,018 | 8,642 |
平成29年度 | 4,172 | 3,793 | 7,965 |
平成30年度 | 4,052 | 3,536 | 7,588 |
提供:厚生労働省 |
また、児童福祉法に基づき、児童相談所長等が必要と認める場合には、虐待を受けた子供等の一時保護を行うことができるところ、児童虐待事案への対応においては、子供の安全確保等が必要な場合であれば、保護者や子供の同意がなくとも一時保護をちゅうちょなく行うべき旨を「一時保護ガイドラインについて」(30年7月6日厚生労働省子ども家庭局長通知)等に明記し、子供の安全が迅速に確保され、その適切な保護が図られるよう周知している。
【施策番号26】
イ 厚生労働省においては、「少子化社会対策大綱」(27年3月閣議決定)に基づき、虐待を受けた子供と非行児童との混合処遇等を改善するため、次世代育成支援対策施設整備交付金等を活用し、児童相談所の一時保護所における個別対応のための環境改善を推進している(令和2年4月現在、約95%の一時保護所において個別対応のための環境改善を実施)。
また、福祉行政報告例等により、児童相談所の一時保護所における一時保護日数や一時保護件数等を把握しており、元年度中の一時保護所における一時保護日数は延べ87万1,715日、所内一時保護件数は2万7,814件、委託件数は2万5,102件となっている。
年度 | 一時保護所における一時保護延べ日数 | 所内一時保護件数 | 一時保護委託件数 |
---|---|---|---|
平成25年度 | 618,009 | 21,281 | 12,016 |
平成26年度 | 656,103 | 22,005 | 13,169 |
平成27年度 | 689,873 | 23,276 | 13,674 |
平成28年度 | 725,449 | 24,111 | 16,276 |
平成29年度 | 731,157 | 24,680 | 17,048 |
平成30年度 | 758,745 | 25,764 | 20,733 |
令和元年度 | 871,715 | 27,814 | 25,102 |
提供:厚生労働省 |
【施策番号27】
ウ 厚生労働省においては、婦人相談所の一時保護所において被害女性を保護するに当たり、被害女性及び同伴家族の安全の確保、心理的ケアの実施、被害女性の障害等個々のケースに応じた支援の充実・強化を図るため、夜間警備体制の強化や心理療法担当職員及び個別対応職員の配置を行っている。
【施策番号28】
エ 厚生労働省においては、平成24年度から、婦人保護施設退所後の自立支援の一環として、同施設の近隣アパート等を利用して生活訓練を実施する場合に、建物の賃貸料の一部を公費により負担している。また、令和2年度予算では、生活資金の自己管理に係る訓練の充実や見守り支援のための生活支援員の配置に対する補助に要する経費を盛り込んだ。
【施策番号29】
オ 警察庁においては、自宅が犯罪行為の現場となり破壊されるなど、居住が困難で、かつ、犯罪被害者等が自ら居住する場所を確保できない場合等に一時的に避難するための宿泊場所に要する経費及び自宅が犯罪行為の現場となった場合におけるハウスクリーニングに要する経費を都道府県警察に補助しており、都道府県警察においては、これらの経費に係る公費負担制度を運用し、犯罪被害者等の精神的・経済的負担の軽減を図っている。
警察庁においては、今後も、同制度の効果的な運用について、都道府県警察を指導していく。
【施策番号30】
カ 警察庁においては、地方公共団体に対し、犯罪被害者等施策主管課室長会議や地方公共団体の職員を対象とする研修を通じ、犯罪被害者等の居住場所の確保や被害直後からの生活支援に関する取組が適切に行われるよう要請するとともに、地方公共団体の取組事例について、「犯罪被害者等施策情報メールマガジン」等を通じて情報提供を行っている。
3年4月現在、65都道府県・政令指定都市、428市区町村において、犯罪被害者等が公営住宅等へ優先的に入居できるようにするなどの配慮が行われている。
地方公共団体 (制度あり/全体数) |
抽選によらず入居 | 入居要件の緩和 | 抽選倍率の優遇 | その他 |
---|---|---|---|---|
都道府県(47/47) | 12 | 6 | 34 | 20 |
政令指定都市(18/20) | 5 | 4 | 9 | 10 |
市区町村(428/1,721) | 98 | 89 | 90 | 242 |
※ 地方公共団体によっては複数の制度を運用しているところがある。 ※ 市区町村には政令指定都市を含まない。 ※ 区は東京都の特別区をいう。 |
(3) 性犯罪被害者等に対する自立支援及び定着支援
【施策番号31】
厚生労働省においては、地方公共団体やDVシェルターを運営する特定非営利活動法人等が、性犯罪被害者を含む相談者に対する生活相談や行政機関への同行支援等の自立支援及び家庭訪問や職場訪問等の定着支援を一体的に行う「DV被害者等自立生活援助事業」について、令和2年度予算において、モデル事業から本格実施に移行させ、自立支援及び定着支援の促進を図った。