第2章 第4次犯罪被害者等基本計画の概要

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2 重点課題に係る具体的施策

第4次基本計画においては、前記1の課題に対処するため、計279(再掲を含む。)の具体的施策を掲げている。

これらの具体的施策には、第4次基本計画下における新たな課題に対処するため取り組むべき施策のほか、第3次基本計画から引き続き取り組んでいく必要がある施策も盛り込まれている。

以下、第4次基本計画に盛り込まれている主な施策を引用し、紹介する。

なお、【 】内は担当府省庁を、( )内は第4次基本計画における施策番号を、それぞれ表している。

(1) 損害回復・経済的支援等への取組

加害者の損害賠償責任の実現に向けた調査等の実施

○ 警察庁において、関係府省庁等と連携し、犯罪被害者等が損害賠償を受けることができない状況について実態把握のための調査を実施し、その結果に応じて必要な検討を行う。【警察庁】(11)

○ 法務省において、令和元年5月に成立した民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律(令和元年法律第2号)の附帯決議を踏まえ、関係府省庁等と連携し、公的機関による犯罪被害者等の損害賠償請求権の履行の確保に関する諸外国における先進的な法制度や運用状況に関する調査研究を実施し、その結果に応じて必要な検討を行う。【法務省】(12)

(2) 精神的・身体的被害の回復・防止への取組

ア 被害少年等のための治療等の専門家の養成、体制整備及び施設の増強に資する施策の実施

厚生労働省において、虐待を受けた子供の児童養護施設等への入所が増加していることを受け、平成23年度には児童養護施設等に心理療法担当職員及び個別対応職員の配置を義務化しており、引き続き適切な援助体制を確保する。具体的には、児童虐待が発生した場合の子供の安全を確保するための初期対応が迅速・確実に行われるよう、「児童虐待防止対策体制総合強化プラン」(平成30年12月18日児童虐待防止対策に関する関係府省庁連絡会議決定)や令和元年6月に成立した児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律(令和元年法律第46号)による改正後の児童福祉法(昭和22年法律第164号)等に基づき、児童福祉司(指導及び教育を行う児童福祉司スーパーバイザーを含む。)、児童心理司、保健師、弁護士、医師等の配置を支援する。【厚生労働省】(48)

イ 被害少年等に対する学校における教育相談体制の充実等

文部科学省において、被害少年等を含む児童生徒の相談等に適切に対応できるよう、現在の配置状況も踏まえ、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置時間の充実等、学校における専門スタッフとしてふさわしい配置条件の実現を目指すとともに、勤務体制や環境等の工夫等、学校においてスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーを機能させるための取組や、犯罪等の被害に関する研修等を通じた資質の向上を図ることにより、学校における教育相談体制の充実を図る。【文部科学省】(53)

ウ ワンストップ支援センターの体制強化

内閣府において、関係省庁と連携し、ワンストップ支援センターについて、24時間365日対応化や拠点となる病院の整備促進、コーディネーターの配置・常勤化等の地域連携体制の確立、専門性を高めるなどの人材の育成や運営体制確保、支援員の適切な処遇等、運営の安定化及び質の向上を図る。また、全国共通短縮番号「♯8891(はやくワンストップ)」を周知するとともに、夜間・休日においても相談を受け付けるコールセンターの設置及び地域での緊急事案への対応体制の整備、各都道府県の実情に応じた被害者支援センターの増設等、相談につながりやすい体制整備を図る。さらに、全国共通短縮番号について、運用の在り方を検討する。【内閣府】(59)(再掲:(172))

エ 犯罪被害者等に関する専門的な知識・技能を有する専門職の養成等

警察庁、文部科学省及び厚生労働省が連携し、一般社団法人日本公認心理師協会及び一般社団法人公認心理師の会に働き掛け、犯罪被害者等に関する専門的な知識・技能を有する公認心理師の養成及び研修の実施を促進する。【警察庁、文部科学省、厚生労働省】(66)

オ 職員等に対する研修の充実等

○ 警察において、性犯罪被害者の心情に配慮した捜査及び支援を推進するため、性犯罪の捜査及び支援に従事する警察官等を対象に、専門的知見を有する講師を招いて講義を行うなど、男性や性的マイノリティが被害を受けた場合の対応を含め、警察学校等における研修を実施する。【警察庁】(110)

○ 警察において、障害者の特性を踏まえた捜査及び支援を推進するため、捜査及び支援に従事する警察官等を対象に、専門的知見を有する講師を招いて講義を行うなど、警察学校等における研修を実施する。【警察庁】(111)

(3) 刑事手続への関与拡充への取組

ア 加害者処遇における犯罪被害者等への配慮の充実

○ 法務省において、矯正施設の被収容者を対象に実施している「被害者の視点を取り入れた教育」について、犯罪被害者等や犯罪被害者支援団体の意向等に配慮し、犯罪被害者等の心情等への理解を深めさせ、謝罪や被害弁償等の具体的な行動を促すための指導を含めた改善指導・矯正教育等の一層の充実に努めるとともに、指導効果の検証について、その在り方も含め検討を行う。また、家庭裁判所、検察庁等から矯正施設に送付される資料の中に犯罪被害者等の心情等が記載されている場合には、同資料を被収容者に対する指導に有効活用するよう努める。【法務省】(154)(再掲:(101))

○ 法務省において、法制審議会からの諮問第103号に対する答申を踏まえ、刑の執行段階等における犯罪被害者等の心情等の聴取・伝達制度について検討を行い、必要な施策を実施する。実施に当たっては、刑事施設の長等と地方更生保護委員会及び保護観察所の長との連携が図られるよう努める。【法務省】(156)

○ 法務省において、「更生保護の犯罪被害者等施策の在り方を考える検討会」報告書を踏まえ、犯罪被害者等による心情等伝達制度へのアクセスの向上、しょく罪指導プログラムの充実化等について検討を行い、3年以内を目途に結論を出し、必要な施策を実施する。【法務省】(158)

イ 犯罪被害者等の視点に立った保護観察処遇の充実

○ 地方更生保護委員会及び保護観察所の長が保護観察等の措置を執るに当たっては、当該措置の内容に応じ、犯罪被害者等の被害に関する心情、犯罪被害者等が置かれている状況その他の事情を考慮するものとする。【法務省】(159)

○ 犯罪被害者等の被害に関する心情、犯罪被害者等が置かれている状況その他の事情を理解し、その被害を回復すべき責任を自覚するための保護観察対象者に対する指導に関する事実について保護観察官又は保護司に申告し、又は当該事実に関する資料を提示することを、保護観察における遵守事項の類型に加える。【法務省】(160)

○ 仮釈放等の許否の判断に当たって、犯罪被害者等の申出により地方更生保護委員会が聴取を行う意見等の内容に、生活環境の調整及び仮釈放等の期間中の保護観察に関する意見が含まれることを明らかにする。【法務省】(161)

○ 具体的な賠償計画を立て、犯罪被害者等に対して慰謝の措置を講ずることについて生活行動指針として設定し、これに即して行動するよう、保護観察対象者に対し指導を行う運用について検討を行い、当該指導の充実を図る。【法務省】(162)

(4) 支援等のための体制整備への取組

ア 地方公共団体における総合的かつ計画的な犯罪被害者等支援の促進

警察において、地方公共団体における犯罪被害者等の視点に立った総合的かつ計画的な犯罪被害者等支援に資するよう、犯罪被害者等支援を目的とした条例等の犯罪被害者等支援のための実効的な事項を盛り込んだ条例の制定又は計画・指針の策定状況について適切に情報提供を行うとともに、地方公共団体における条例の制定等に向けた検討、条例の施行状況の検証及び評価等に資する協力を行う。【警察庁】(166)

イ 地方公共団体における専門職の活用及び連携・協力の一層の充実・強化

警察庁において、地方公共団体に対し、犯罪被害者等の生活支援を効果的に行うため、犯罪被害者等支援における社会福祉士、精神保健福祉士、公認心理師、臨床心理士等の専門職の活用を働き掛ける。また、犯罪被害者等を早期に専門職の支援につなげるため、地方公共団体における総合的対応窓口と関係機関・団体との連携・協力の一層の充実・強化を要請する。【警察庁】(169)

ウ 被害者支援連絡協議会及び被害者支援地域ネットワークにおける連携の推進

警察において、法務省、文部科学省、厚生労働省及び国土交通省の協力を得て、地方公共団体、地方検察庁、弁護士会、医師会、社会福祉士会、精神保健福祉士協会、公認心理師関連団体、臨床心理士会、犯罪被害者等の援助を行う民間の団体等から成る、警察本部や警察署単位で設置している被害者支援連絡協議会及び被害者支援地域ネットワークについて、メンバー間の連携及び相互の協力を強化し、生活再建、医療、裁判等多岐にわたる分野について、死傷者が多数に及ぶ事案等を想定した実践的なシミュレーション訓練の実施等を通じて、具体的な事案に応じた対応力の向上を図る。【警察庁】(183)

エ SNSを含むインターネット上の誹謗中傷等に関する相談体制の充実及び誹謗中傷等を行わないための広報啓発活動の強化

総務省において、関係府省庁と連携し、SNSを含むインターネット上の誹謗中傷等に関する犯罪被害者等からの相談に適切に対応できるよう体制の充実に努めるとともに、誹謗中傷等を行わないための広報啓発活動を強化する。【総務省】(194)(再掲:(264))

(5) 国民の理解の増進と配慮・協力の確保への取組

ア 性犯罪・性暴力対策に関する教育の推進

文部科学省において、「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」(令和2年6月11日性犯罪・性暴力対策強化のための関係府省会議決定)に基づき、生命の尊さを学び生命を大切にする教育、自分や相手、一人一人を尊重する教育を一層推進するとともに、性犯罪・性暴力の加害者・被害者・傍観者にならないよう、幼児期からの子供の発達段階に配慮した教育の充実を図る。【文部科学省】(254)

イ 国民に対する効果的な広報啓発活動の実施

警察庁において、広く国民各層に犯罪被害者等支援に対する関心を持ってもらうため、シンボルマーク等の普及やウェブサイト・SNS等の活用といった広報の手法や媒体の多様化に努め、効果的な広報を行う。また、犯罪被害者等支援に関する標語を広く募集するなど、国民が犯罪被害者等支援について考える機会を提供し、その理解促進を図る。さらに、犯罪被害者等が置かれている状況や犯罪被害者等支援の重要性等についての理解・関心を深めるため、学校や民間企業等から幅広く協力を得るなどし、一層充実した啓発活動を推進する。【警察庁】(260)

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