1 相談及び情報の提供等(基本法第11条関係)
コラム5 総合的対応窓口担当職員の手記
「丁寧な応対で相談しやすい窓口へ」
四日市市役所 市民協働安全課
三重県四日市市では、令和元年10月4日に犯罪被害者等支援条例を制定、施行しました。準備に当たっては、既に多くの自治体が犯罪被害者等への支援施策を進めていたことから、先行する自治体の取組を参考にしつつ、本市の実情に合わせた、よりきめ細かな支援を目指して作業を進めました。
特に、本市が条例を制定する約半年前、平成31年4月1日に三重県が犯罪被害者等支援条例を施行しており、本市において事件等が発生した場合、協調して各種支援を行う場面も想定されることから、被害者等にとって利用しやすい制度となるよう、県条例と市条例の連携について、三重県の担当課の方々と緊密に連絡・調整を行ってきました。さらに、本市の庁内における体制構築のため、関係各課を集めた連携検討会議を開催し、相談受付のワンストップ化、二次被害の防止について協議を重ねてきました。
こうした準備を経て、実際に条例が施行されると、すぐに三重県と連携する場面が訪れました。市内で御夫婦が怪我をされる強盗致傷事件が発生したためです。
本市への初回相談は、条例施行前に県内全警察署へ案内チラシの配布を依頼していたことから、捜査を担当した警察署の方を通じて、被害者家族へ市条例による支援の案内をしていただき、その家族が来庁されることとなりました。
2回目以降の相談は、被害者本人に代わって来庁する家族に対し、事前に市役所で必要な手続をお尋ねしたうえで、市条例に基づく支援以外にも対応できるよう、担当課の職員を手配し、みえ犯罪被害者総合支援センター相談員同席の下で行いました。
具体的には、被害者家族が待機する面談室に、介護施設への入所に係る相談のため高齢福祉課、介護認定に係る手続のため介護保険課、住民票取得のため市民課の職員が順番に入室し、必要な手続を効率よく行うことができました。また、みえ犯罪被害者総合支援センターの相談員を通じて、県条例に基づく見舞金の申請手続も同時に行い、被害者家族が来庁していただく回数をなるべく少なくするよう心掛けました。
この件の被害者家族は、事件で大変心を痛めておられたうえに、やむを得ないこととは言え、警察や検察との面談から郵便物の手配まで、あらゆる場面で説明と手続を求められ、精神的にも肉体的にも疲労のピークを迎えておられました。そうした様子を理解し応対したことで、「思ったより早く手続が終わって安心した」と言っていただきました。
こうして三重県警察本部及び警察署の担当者、三重県、みえ犯罪被害者総合支援センターの御協力により、滞りなく手続を行うことができました。特に三重県については、担当者同士で情報共有を図る中で、多くのフォローやアドバイスをしていただき、その結果、被害者家族から信頼を得ることができたと考えています。
本市の条例にかかる支援施策は始まったばかりですが、関係機関との連携の大切さを準備段階で想定していた以上に痛感しました。一方、市役所内部の体制強化も不可欠です。担当課だけでは、真に心のこもった支援はできません。犯罪被害者等が置かれた立場を理解し、丁寧な応対でその心情に寄り添うことができる職員を増やし、相談しやすい窓口づくりを行っていくことが重要であると考えています。
「被害者支援に携わって」
某市役所総合的対応窓口担当者
平成30年秋、市内の国道において飲酒運転により数名の尊い命が犠牲となる悲惨な交通死亡事故が発生し、被害者の死亡により高校3年生と高校1年生の兄弟が交通遺児となった。
警察の被害者支援担当者から、交通遺児となった兄弟は現在市営住宅に入居中であり、引き続き住宅への継続入居を希望しているが、行政からの支援はできないものかとの連絡があった。
連絡を受けた私は、市営住宅担当者と残された兄弟・御親族との三者による、市営住宅の継続入居についての意思確認を行うこととした。
面談の中で、御親族から高校3年生の兄は、県外への就職が内定しているが、卒業するまでの間は、弟と一緒に被害者との思い出があるこの住宅から通学したい。弟も兄と同じ思いが強く、できることなら、このまま住宅で生活できるように対応していただけないものかと要望があった。また、御親族の一人は、他市の高齢者住宅に入居しており、もう一人の御親族も、自分の家庭もあるため兄弟を引き取ることは困難であるが、共に兄弟の支援は全力で行うので、どうか住宅に継続入居させていただきたいと懇願していた。市営住宅担当者からは、本来、市営住宅は入居承継できないことになっている。しかし、諸事情等を考慮し継続入居ができるように対応したいが、担当者の判断だけで直ちに承認することはできないため、課内で入居承継について検討し、再度面談したいとの説明があった。
面談当初、兄弟と御親族は、住宅から退去することになるかもしれないと不安気な面持ちであったが、継続入居に向け一歩前進したためか、少しではあるが表情が和らいだように見えた。
この交通死亡事故は、マスコミ各社が連日連夜大々的に報道していた。その報道を見たAさん(首都圏在住)から、御遺族に対して支援を行いたい旨の連絡があった。心温まる厚意であるが、御遺族等の連絡先は伝えることはできず、私から御遺族へAさんの連絡先等を伝えることとして、御遺族からの連絡を待っていただくよう対応した。
私は、御遺族・御親族は様々な手続等で多忙であったため、再度出向いて頂くのは大変心苦しかったが、面談に向けた日程調整を行った。
面談では、住宅担当職員から以前検討事項としていた住宅への入居について、御親族と今後就職する兄の支援を条件として、弟が高校を卒業する令和3年3月末まで住宅からの退去を猶予することとなったため、引き続き住宅で生活できることを伝えた。また、金銭面では、兄弟の養育者には児童扶養手当が支給されること、御遺族には交通遺児育英金の奨学金等の制度が利用できること、生活困窮となったときは、生活保護制度を活用できること等の説明を行った。また、報道を見たAさんから、御遺族に対して支援を行いたいと申し出があったことを伝え、支援を受けたいと思うのであれば直接Aさんへ連絡し、支援内容等についての確認をすること、困りごと等があったときは遠慮せず相談してほしい旨伝え、面談を終えた。
御遺族・御親族の方は、住宅の退去猶予により居住先の不安、金銭面での不安等が解消され、本当に助かりました、ありがとうございましたと頭を下げていた。
交通事故は被害者のみならず、加害者やその家族の人生も一瞬にして変えてしまいます。「自分だけは大丈夫」という考えが、一瞬の気の緩みを生み出し、一生を台無しにしてしまうことを、私たちは常に意識し、このような悲惨な交通事故がなくなることを切に願っております。