第3章 刑事手続への関与拡充への取組

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1 刑事に関する手続への参加の機会を拡充するための制度の整備等(基本法第18条関係)

コラム4 幼い子供を狙う犯罪に厳罰を

公益社団法人ぎふ犯罪被害者支援センター

犯罪被害者御家族

7月19日、保育園から娘を連れて帰ってきた母が、「ちょっと!問題やお。」そう言って帰宅中の車の中で、私の娘から聞いた話を話し始めました。途中から娘が自ら話し出したので、私は一通り最後まで聞きました。当時5歳の娘が、ここまで具体的に話す内容に衝撃を覚え、信じずにはいられませんでした。その後、すぐに園長先生に相談しようと思い、慌てて保育園に駆け込みました。

この日の夕方、ダンス教室に向かう車の中で、いつもはおしゃべりでうるさいくらいの娘が、ボーっと黙っていて、もう着くという頃に、「私って悪い?」「私怒られない?」と、不安そうに聞いてきました。

子供ながらに何となく大変なことになっていると感じているのかと思い、私は「あなたは悪くないよ!ちゃんとお話ししてくれたからお利口だよ!」と言いました。帰りの車の中でも、娘は、確認するかのように同じことを聞いてきました。自分がおかしいんだとか自分が悪かったんだなど、間違った認識は絶対にして欲しくなくて、私は娘に、しっかり話せたことを過剰な程褒め、あなたは悪くないんだよ、ということを真剣に伝えました。

その後、今まで暗い場所でも夜でも平気で、怖がったことはなかった娘が、とても怯えるようになってしまいました。事件以降、娘は夜になると、家の中に加害者である先生が入って来ないか、外出からの帰りや家に入る際にもキョロキョロと周りを見回し、「先生いない?」と怖がり、私にしがみ付きながら家に入るようになりました。ずっと優しい先生、好きな先生として約3年半慕ってきた先生が、悪いことをした、悪い人だったという認識は出来ていたようで、娘からしたら怖い存在になっているようでした。

事件から数週間経ってからも、「ママ、保育園で1人で廊下を歩くとか、トイレ行く時怖い」「カーテンのふくらんでいる所に誰かいるって思って怖い」などと色々な場面ですごく怖がるようになってしまいました。また、「保育園でお家に帰りたいなって思っちゃった」「保育園行きたくないなーって思っちゃう」と言うこともありました。

確かに、以前はなかったのに、「今日はお休みがいいな」とか「まだ寝ていたい」と言うことが度々ありました。未満児からずっと通って来た、娘にとって大好きな場所。熱があっても休みたくないと言う程、保育園が大好きで、のびのびと楽しく過ごせる場所だったのに、こんな風に怖いと思うようになったのは、加害者のせいだと思うと、怒りが込み上げてきます。

事件の翌日は、園で初めての夏祭り。年長で、最初で最後だし行きたがるだろうとしか思っていませんでした。でも、「先生がいるなら行きたくない」と言って、頑なに行こうとしませんでした。前から楽しみにしていた夏祭りにも出られず、かわいそうで仕方がありませんでした。ここまで行きたくないと拒む姿は、親としても本当にショックでした。残り短い園生活、これからどうなってしまうのだろうと、とても悩みました。

事件から今日まで、私たち家族は、警察・検察での調書作成、保育園、弁護士さんとの話し合い等、生活の中で今回の件が大きな割合を占めました。生活のバランスも崩れ、ストレスも溜まり、普段は仲の良い家族が、ケンカになることもありました。精神的にも肉体的にも、そして仕事へもろくに行けないことから、金銭的にも本当に苦痛を与えられました。

今後、娘が成長する過程でこの記憶がどう影響してしまうのだろうと思うと、将来に渡り不安で心配です。今は何をされたかよく分からないことでも、大人になるにつれて理解できた時に娘がどう思うのか、男性恐怖症になってしまわないか、性について理解でき、普通に通過できるはずの時期に、娘は気持ち悪い、汚い、悪いことという風に受け止めてしまわないかなどと考えると、加害者に対して絶対に許せない、この先も許すことは絶対にない、という気持ちで一杯になります。

保育園の幼児の時期は、成長にとても大事な時期で、今後の人格形成にも大きな影響を与える時期です。そんな大切な時期に、娘は犯行時に目が覚めてしまったが故に、記憶にしっかりと残ってしまっているのです。消してあげたくても消す事はできません。他にも100件ほど、犯行を繰り返してきたというのも、全て昼寝中の拒否もできない意識の無い状況で、保育中、公務の中での犯行、行為の悪質さ、勤務中の保育園の中での自慰行為、全てにおいて絶対に許せざる行動です。

安全で安心して預けられると思っていた保育園。私たちだけではなく他の保護者の方々も皆そう思っていたでしょう。加害者1人の身勝手な行動は、純粋な可愛い子供達を裏切り、保護者の方々、一緒に働く先生方をも大きく裏切った人間として最低なことです。

加害者の性的欲求を満たすが為に、道具のように扱われた子供達がかわいそうでなりません。私達親が、大切に大切に愛情をもって育てている本当に愛しい我が子を、このように扱った加害者が憎くてたまりません。人の子を何だと思っているのかと怒りが込み上げてきます。

今回、意見陳述をすることが決まり、加害者の供述調書を読みました。このような犯行をするようになった原因、性的趣向が歪んだ原因、園児を好きになった原因、全てにおいて自分の身勝手な行動とはとらえず、人のせいにしている所に、とても悪質性を感じ、腹立たしく思えました。罪の意識がほとんどなかった、ということも、恐ろしいと思いました。

今日これまで、加害者から、そして加害者家族からも一度も謝罪はありません。誠意、謝罪に気持ちは全く感じられず、反省しているようにはとても思えません。反省し、謝罪したいと思っていたのなら、今日までに何かしらできることはあったでしょう。

保育士になる前から自分の性癖に気付いていたにも関わらず、保育士として働き始めたということは、園児に性的な何かをしたいがために保育士になったとしか思えないです。

性犯罪者、特に子供を狙った性犯罪は再犯率が高いということは知っています。だからこそ、こんな人間をこのまま野放しにされては恐ろしくて安心して子育て出来ないし、子供を外で遊ばせることも、小学校の登下校も、全てにおいて不安です。これ以上、大事な子供達の中から被害者を出したくない、執行猶予なしの厳罰を求めます、という皆さまの思いが、沢山の署名として集まりました。たった10日間で3,032名もの署名が集まりました。

裁判官様、どうか、これからも起こりうる犯罪の抑止力になりますよう、私達の思いを汲んで頂きたく思います。加害者には実刑を望みます。

最後になりましたが、私に意見陳述の時間を与えてくださったことに感謝申し上げます。ありがとうございました。

もうすぐ事件から1年が経とうとしています。今でも時々ふと思い出し、振り返ることがあります。当時は本当に辛い時期でしたが、ぎふ犯罪被害者支援センターの方々の支援があったからこそ、最後まで諦めずに裁判まで終えることができたと思います。事件の被害者側は、普通に日常を送っていた人が突然、被害者や被害者家族となります。そんな時、警察や検察への対応、そして裁判までとなった時、自分たちはどうすれば良いのか、どうしていくべきか何もわからずとても心細かったです。でも警察の方から被害者支援センターを紹介され、支援をお願いし、本当に最後まで私達被害者家族に寄り添ってくださいました。お会いした時はいつも細やかなお気遣いをして下さったり、電話では不安なときや辛いときにお話を聞いて下さったりと、本当に心強かったです。相談員の方々には、家族一同本当に感謝しています。温かい御支援、本当にありがとうございました。

公益社団法人全国被害者支援ネットワーク発行

「犯罪被害者の声第13集」より

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