第2章 精神的・身体的被害の回復・防止への取組

目次]  [戻る]  [次へ

2 安全の確保(基本法第15条関係)

(1) 判決確定、保護処分決定後の加害者に関する情報の犯罪被害者等への提供の適正な運用

【施策番号72】

検察庁においては、事件の処理結果、公判期日、裁判結果等のほか、希望があるときは不起訴裁定の主文、不起訴裁定の理由の骨子等を犯罪被害者等に通知する、全国統一の被害者等通知制度を実施している。

平成19年12月から、同制度を拡充し、犯罪被害者等の希望に応じて、判決確定後の加害者に関する処遇状況等の情報について、検察庁、刑事施設、地方更生保護委員会及び保護観察所が連携して通知を行っている。具体的には、加害者の受刑中の処遇状況に関する事項、仮釈放審理に関する事項、保護観察中の処遇状況に関する事項等を通知している。また、26年4月から、加害者の受刑中の刑事施設における懲罰及び褒賞の状況を通知することとした。

同じく、19年12月から、犯罪被害者等の希望に応じて、保護処分決定後の加害者に関する処遇状況等の情報について、少年鑑別所、少年院、地方更生保護委員会及び保護観察所が連携して通知を行っている。具体的には、少年院送致処分又は保護観察処分を受けた加害少年について、少年院における処遇状況に関する事項、仮退院審理に関する事項、保護観察中の処遇状況に関する事項等を通知している。また、26年4月から、加害者の少年院在院中における賞、懲戒及び問題行動指導の状況を通知することとした。

保護観察所においては、保護観察中の処遇状況に関する事項の一つとして、従前は保護観察の終了予定年月のみを通知していたが、同月から、これを年月日まで通知するほか、特別遵守事項に基づき実施する特定の犯罪傾向を改善するための専門的処遇プログラムの実施状況を通知することとした。

また、保護観察の開始に関する事項を通知する際、心情等伝達制度を含む更生保護における犯罪被害者等施策に関するリーフレット等を添付するなどして、通知制度を利用している犯罪被害者等に心情等伝達制度の周知を図り、問合せに応じて説明を行っている。

被害者等通知制度の令和元年中の実施状況については、通知希望者数は、7万6,590人であり、実際に通知を行った延べ数は13万2,443人であった。

法務省における被害者等通知制度の実施状況
年次 通知希望者数 通知者数
平成25年 75,516 129,036
平成26年 79,660 135,545
平成27年 77,874 133,863
平成28年 74,399 131,452
平成29年 73,503 128,630
平成30年 76,143 130,998
令和元年 76,590 132,443
提供:法務省

(2) 加害者に関する情報提供の適正な運用

【施策番号73】

警察においては、「再被害防止要綱」(平成31年3月27日付け警察庁刑事局長等通達別添)に基づき、同じ加害者により再び危害を加えられるおそれのある犯罪被害者等を再被害防止対象者に指定し、再被害防止のための関連情報の収集、関連情報の教示・連絡体制の確立と要望の把握、自主警戒指導、警察による警戒措置、加害者への警告等の再被害防止措置を実施している。

これらの再被害防止措置の実施に当たっては、関係機関が緊密に連携しており、法務省においては、犯罪被害者等が加害者との接触回避等の措置を講じることにより再被害を避けることができるよう、13年10月から出所情報通知制度を運用している。具体的には、警察から再被害防止措置上必要とする受刑者の釈放等に関する情報の通報要請があった場合、通報を行うのが相当であると認められるときは、受刑者の釈放等に関する情報(自由刑の執行終了による釈放予定と予定年月日・帰住予定地、仮釈放による釈放予定と予定年月日・指定帰住地等)を通報している。

また、犯罪被害者等が希望する場合、検察官が相当と認めるときは、犯罪被害者等に対し、受刑者の釈放前に釈放予定に関する通知を行っている。

出所情報通知制度については、引き続き、各会議等において制度について周知を図り、実務担当者からも犯罪被害者等に対して案内をしている。

犯罪被害者等に対する出所情報通知状況
年次 通知希望者数 通知者数
平成25年 423 398
平成26年 414 338
平成27年 450 388
平成28年 426 418
平成29年 438 394
平成30年 523 416
令和元年 459 417
提供:法務省

(3) 警察における再被害防止措置の推進

【施策番号74】

ア 警察では、13歳未満の子供を被害者とした強制わいせつ等の暴力的性犯罪で服役して出所した者について、法務省から情報提供を受け、各都道府県警察において、その出所者の所在確認を実施しているほか、必要に応じて当該出所者の同意を得て面談を行うなど、再犯防止に向けた措置を講じている。

【施策番号75】

イ 【施策番号73】参照

(4) 警察における保護対策の推進

【施策番号76】

警察においては、暴力団による犯罪の被害者や暴力団との関係を遮断しようとする事業者等に対する危害行為を防止し、その安全確保の徹底を図るため、組織の総合力を発揮した保護対策を実施している。

「保護対策実施要綱」(平成31年3月28日付け警察庁次長通達別添)に基づき指定した身辺警戒員に対する教育・訓練を実施し、また、防犯カメラ等必要な装備資機材を整備するとともに、保護対象者が警備業者の機械警備を利用する際には、その費用の一部を補助することとしている。

(5) 保釈に関しての犯罪被害者等に対する安全への配慮の充実

【施策番号77】

法務省・検察庁においては、加害者の保釈に関し、検察官が、犯罪被害者等から事情を聴くなどによりその安全確保を考慮して裁判所に意見を提出するとともに、保釈申請に対する結果について犯罪被害者等に連絡するなど、適切な対応に努めているほか、会議や研修等の様々な機会を通じ、検察官等に犯罪被害者等に対する安全配慮についての周知に努めている。

(6) 再被害防止に向けた関係機関の連携の充実

【施策番号78】

ア 警察においては、配偶者等からの暴力事案等に対して配偶者暴力相談支援センター等の関係機関・団体と連携した被害者支援を講じるなど、犯罪被害者等の立場に立った適切な対応を図っている。

令和元年度には、人身取引(性的サービスや労働の強要等)事犯の被害者に対し、警察等への被害申告を多言語で呼び掛けるリーフレット30万部を作成し、関係府省庁、関係国の在京大使館・在外公館、NGO等の犯罪被害者等の目に触れやすい場所に広く配布したほか、ウェブサイト(https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/hoan/jinshintorihiki/index.html)上でも同リーフレットを周知し、警察等への通報を呼び掛けている。また、元年7月、人身取引に関係する国の在京大使館、国際機関、NGO等を集めてコンタクトポイント連絡会議を開催し、人身取引被害者の発見・保護等に関する意見交換を行うなどした。さらに、人身取引事犯等の被害者となっている女性等の早期保護を図るため、警察庁の委託を受けた民間団体が、市民から匿名で事件情報の通報を受け、これを警察に提供して、捜査等に役立てる匿名通報事業を平成19年10月から実施している。

なお、「令和元年における人身取引事犯の検挙状況等について」の広報資料をウェブサイト(https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/hoan/jinshin.pdf)上に掲載している。

児童虐待の被害者については、街頭補導、少年相談等の様々な活動の機会を通じ、その早期発見と児童相談所への確実な通告に努めている。また、各都道府県警察においては、国民に児童虐待事案の通告・通報を促しているほか、平成22年2月から匿名通報事業の対象に児童虐待事案を追加し、実施している。さらに、都道府県知事・児童相談所長による児童の安全確認や一時保護、立入調査を円滑化するための援助を実施するとともに、要保護児童対策地域協議会等へ積極的に参加するなど、学校、児童相談所等の関係機関との情報交換や連携強化に努めている。

匿名通報ダイヤル
匿名通報ダイヤル

配偶者からの暴力の被害者、人身取引の被害者等の保護に関しては、婦人相談所が児童相談所、警察等の関係機関と連携することが不可欠であることから、厚生労働省においては、その充実を図っている。特に、配偶者からの暴力被害者の保護と支援については、関係機関相互の共通認識・総合調整が必要不可欠であることから、婦人相談所においては、警察や福祉事務所等の関係機関との連携を図るため、連絡会議や事例検討会議を開催するとともに、事例集や関係機関の役割等を掲載したパンフレットを作成し、関係機関に配布している。

また、児童相談所においては、触法少年・ぐ犯少年の通告、棄児・迷子・虐待を受けた子供等の要保護児童の通告等について、警察と連携を図っている。児童虐待については、30年7月に児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議において決定した「児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策」(以下「緊急総合対策」という。)に基づき、児童相談所と警察の間で共有する情報を明確化し、両者の情報共有の強化に取り組むなど、児童虐待への対応における関係機関間の連携を強化している。

【施策番号79】

イ 警察庁及び文部科学省においては、警察と学校等関係機関の通報連絡体制や要保護児童対策地域協議会の活用、加害少年やその保護者に対する指導等の一層の充実を図り、再被害の防止に努めている。

警察においては、非行や犯罪被害等、個々の少年の抱える問題状況に応じた的確な対応を行うため、学校、警察、児童相談所等の担当者から成る少年サポートチームを編成し、それぞれの専門分野に応じた役割分担の下、少年への指導・助言を行っている。少年サポートチームの効果的な運用等を図るため、令和元年度においても、都道府県警察、関係機関・団体の実務担当者を集めた協議会を開催した。

文部科学省においては、各教育委員会に対し、学校と警察が連携し、児童生徒の問題行動に対応できるよう、生徒指導担当者を対象とした会議の場や通知等で連携体制の整備を促している。

また、「要保護児童対策地域協議会設置・運営指針」(平成17年2月25日付け厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知)を踏まえ、虐待を受けている子供をはじめとする支援対象児童等の適切な保護を図るための関係機関との連携について教育委員会等に周知している。

少年サポートチーム
少年サポートチーム

(7) 犯罪被害者等に関する情報の保護

【施策番号80】

ア 法務省・検察庁においては、裁判所の決定があった場合、被害者の氏名及び住所その他の被害者が特定されることとなる事項を公開の法廷で明らかにしない制度、検察官が、証拠開示の際に、弁護人に対し、被害者の氏名等を被告人に知らせてはならない旨の条件を付するなどする措置をとることができる制度等について、円滑な運用に取り組んでいるほか、会議や研修等の機会を通じて検察官等への周知に努めている。

更生保護官署においても、保管する犯罪被害者等の個人情報を適切に管理するよう会議や研修等の機会を通じて周知徹底を図っている。

【施策番号81】

イ 検察庁においては、ストーカー事案に関し、事案に応じた適切な処理を行うとともに、捜査・公判の各段階において、犯罪被害者等に関する情報の保護に配慮した適切な対応に努めている。また、法務省・検察庁においては、会議等の機会を通じて、これらの検察官等への周知に努めている。

【施策番号82】

ウ 法テラスにおいては、常勤弁護士を含む職員に対し、情報セキュリティに関する研修を行うなどして犯罪被害者等の個人情報の取扱いに十分留意するよう指導を行っている。

【施策番号83】

エ 総務省においては、平成16年に、関係省令等を改正し、配偶者等からの暴力及びストーカー行為等の被害者(以下この項目において「DV被害者等」という。)の住民票の写しの交付等を制限する支援措置を講じている。その後、18年に、住民基本台帳法を改正し、犯罪被害者等の保護の観点も含め住民基本台帳の閲覧制度等の抜本的な見直しを行い、何人でも閲覧を請求できるという従前の制度を廃止し、個人情報保護に十分留意した制度として再構築した。20年には、同様の観点から同法を改正し、住民票の写し等の交付制度の見直しを行った。24年には、関係通知を改正し、支援措置の対象について、配偶者等からの暴力及びストーカー行為等に加え、児童虐待及びその他これらに準ずる行為を明示的に追加した。これらに基づく支援措置は、各市区町村において講じられている。また、30年には、加害者の代理人からの住民票の写しの交付の申出等があった場合、加害者と同視して対応すること、また、裁判所に提出する必要があるとの理由により被害者に係る住民票の写しの交付の申出等があった場合、裁判所からの調査嘱託に対応する方法によること等について、それぞれ通知を発出した。

また、選挙人名簿の抄本の閲覧制度については、住民票の写しの交付等に関する関係省令等の改正を踏まえ、17年に、配偶者等からの暴力及びストーカー行為等の加害者から、支援対象者が記載されている選挙人名簿の抄本の閲覧申出があった場合は拒否すること等を通知した。18年には、公職選挙法を改正し、閲覧事項を不当な目的に利用されるおそれがあるなど市町村選挙管理委員会が閲覧を拒むに足りる相当な理由があると認めるときは閲覧を拒否できることとするなど、個人情報保護に配慮した制度へと見直しを行い、その厳格な取扱いについて、21年、27年に周知徹底を図った。さらに、29年には、加害者以外の第三者から、選挙人名簿の抄本の閲覧申出があった場合であっても、申出に係る選挙人が支援対象者である場合には、その閲覧を拒むに足りる相当な理由があると認めるときとして閲覧を拒否することができること等を通知し、閲覧制度に係るより一層の厳格な取扱いについて周知徹底を図っている。

法務省においては、戸籍事務について、24年から、戸籍法第48条第2項に基づき、DV被害者等の住所、電話番号等の連絡先の記載がある届書等の閲覧請求又は当該書類に記載した事項についての証明書の交付請求がなされた場合であって、DV被害者等から市区町村長に対して、DV被害者等の住所等が覚知されないよう配慮を求める旨の申入れがなされ、かつ、住民基本台帳事務における支援措置が講じられているときには、同事務における支援期間を満了するまでの期間、DV被害者等の住所等を覚知されないように適宜の方法でマスキングをする処置を施した上で、閲覧又は交付請求に応じることとしている。その後、26年からは、DV被害者等の保護の観点から、申入れを行ったDV被害者等から再度申入れをする意思がないことを確認できない間は、住民基本台帳事務における支援期間が満了していないものとみなして、マスキングをする処置を施した上で閲覧又は交付請求に応じる取扱いを継続している。

また、不動産登記事務について、25年から、不動産の所有権等の登記名義人が、登記義務者として当該権利の移転等の登記を申請するに当たり、登記記録上の住所から転居している場合に、当該登記義務者がDV被害者等として、住民票の写しの交付等を制限する支援措置を受けている者であるときには、当該支援対象者からの申出により、当該登記の前提である登記名義人の住所の変更の登記を要しない取扱いとしている。その後、27年からは、支援対象者が、新たに登記名義人となる場合についても、支援対象者からの申出により、その現在の住所を登記することを要しない取扱いとしている。さらに、登記所に保管されている登記申請書及びその附属書類については、利害関係人による閲覧が認められているところ、同年から、これらの書類のうち、支援対象者の現住所が記載されている部分については、支援対象者からの申出により、閲覧を制限する取扱いをしている。

加えて、供託事務について、25年から、DV被害者等から被害の相談に関する公的証明書をもって供託官に対して申出があった場合には、被害者が供託物払渡請求書に記載する住所について、都道府県までの概括的な記載にとどめることを認める取扱いとするほか、供託物払渡請求がなされた後に上記申出がなされた場合において、利害関係人から払渡請求書の閲覧の請求がなされたときは、DV被害者等の住所等が覚知されないようにマスキングをする処置を施した上で閲覧に供する取扱いを行っている。また、その厳格な取扱いについて、毎年、会議等の機会を通じて周知徹底を図っている。

国土交通省においては、登録事項等証明書を交付する事務を行っている運輸支局等に対して「登録事項等証明書の交付請求に係る配偶者からの暴力、ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者の保護のための取扱いについて」(26年7月11日付け国土交通省自動車局自動車情報課長通達)により、軽自動車検査協会に対して「検査記録事項等証明書交付請求に係る配偶者からの暴力、ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者の保護のための取扱いについて」(27年1月26日付け国土交通省自動車局整備課長通達)により、それぞれ犯罪被害者等に関する情報の保護に係る手続の厳格な運用を示達するとともに、犯罪被害者等に係る情報の管理の徹底を図っている。

また、27年9月から、犯罪被害者等の保護のための取扱いの実施が求められている登録自動車に係る登録事項等証明書の出力に関して、自動車登録検査業務電子情報処理システム(MOTAS)において出力制限をかけることができるようにしており、更なる情報管理の徹底を図っている。

さらに、国土交通省においては、登録官研修等において、当該取扱い及び個人情報保護の重要性について研修を行っている。その際、被害相談窓口において当該取扱いのことを広く被害者等へ周知してもらうためにも、当該相談窓口を所管する相談機関等との連絡を日頃より密にするよう伝えている。

【施策番号84】

オ 警察庁においては、犯罪被害者等の実名発表・匿名発表について、引き続き適切な発表がなされるよう、都道府県警察の広報担当者を集めた会議等を通じて、都道府県警察を指導している。

(8) 一時保護場所の環境改善等

【施策番号85】

ア 【施策番号25】参照

【施策番号86】

イ 【施策番号26】参照

(9) 児童虐待の防止、早期発見・早期対応のための体制整備等

【施策番号87】

ア 警察においては、児童虐待防止対策に従事する職員、少年補導職員等に対し、早期に児童虐待を発見するための観点や、関係機関との連携の在り方、カウンセリング技術等について指導・教育を行うなど、児童虐待防止に関する専門的な知識・技能の向上に努めている。

警察庁では、緊急総合対策において、虐待による外傷、ネグレクト、性的虐待があると考えられるなど、児童の身体に対する危険性が高い事案に係る情報について、児童相談所と警察との間で共有することが明確化されたことを受け、そのような情報提供を受けた場合に迅速・的確に対応すること、更には児童相談所からの援助要請へ確実に対応すること等について、都道府県警察に指示等を行い、児童虐待の早期発見・早期対応に努めている。

【施策番号88】

イ 文部科学省においては、緊急総合対策を踏まえ、<1>各学校における児童虐待の早期発見に向けた取組及び通告、<2>関係機関との連携強化のための情報共有、<3>児童虐待防止に係る研修の実施等の積極的な対応等について各都道府県教育委員会等に通知した。

また、千葉県野田市における小学4年生死亡事案を受け、平成31年2月には、文部科学副大臣を主査とする省内タスクフォースを設置し、再発防止策を検討するとともに、同月に取りまとめられた、「「児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策」の更なる徹底・強化について」を踏まえ、児童虐待事案に係る情報の管理及び関係機関間の連携に関する新たなルールを各都道府県教育委員会等に通知した。加えて、令和元年5月には、学校・教育委員会等が児童虐待の対応に当たって留意すべき事項をまとめた「学校・教育委員会等向け虐待対応の手引き」を作成し、公表した。

このほか、児童生徒の相談を受けることができるよう、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの活用等、教育相談体制の整備を支援している。

【施策番号89】

ウ 文部科学省においては、児童虐待の防止に資する取組として、地域において、保護者が安心して家庭教育を行うことができるよう、地域の多様な人材を活用した家庭教育支援チーム等による保護者に対する学習機会や情報の提供、相談対応等、地域の実情に応じた家庭教育支援の取組に加え、訪問型家庭教育支援を含めた支援活動の強化を図るための取組を推進している。

また、地域において児童虐待の早期対応ができるよう、同年8月には、地域における家庭教育支援関係者や放課後子供教室などの地域学校協働活動関係者等に対して、児童虐待への対応に関して留意すべき事項をまとめた「児童虐待への対応のポイント~見守り・気づき・つなぐために~」を作成し、周知を図った。

さらに、同年11月の児童虐待防止推進月間を機に、子供たちの育ちに関わる全国の家庭・学校・地域の方々に対して、児童虐待の根絶に向けた大臣メッセージを発表した。

家庭教育支援チームによる家庭訪問の様子
家庭教育支援チームによる家庭訪問の様子

【施策番号90】

エ 児童虐待防止対策の強化を図るため、平成31年3月に、「児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律案」が第198回通常国会に提出され、令和元年6月に可決・成立となった(トピックス「児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律について」参照。)。

また、緊急総合対策に基づき、子供の安全確認ができない場合の立入調査の実施等全ての子供を守るためのルールの徹底等に取り組んでいる。さらに、緊急総合対策を受け、平成30年12月に「児童虐待防止対策体制総合強化プラン」を策定し、令和元年度からの4年間で、児童相談所の児童福祉司を平成29年度の約3,240人から2,020人程度増員するとともに、子ども家庭総合支援拠点を全市町村に設置することとするなど、児童相談所及び市町村の体制と専門性の強化を図っている。

このほか、児童虐待を受けたと思われる子供を見付けた時等に、ためらわず児童相談所に通告・相談ができるように、児童相談所虐待対応ダイヤル「189(いちはやく)」を運用している。児童相談所につながるまでの時間短縮を進めるため、28年4月に、音声ガイダンスの短縮や、30年2月に、携帯電話等からの着信についてコールセンター方式を導入するなどの改善を進めてきたが、令和元年12月から「児童相談所全国共通ダイヤル」を「児童相談所虐待対応ダイヤル」と名称変更し、相談については「児童相談所相談専用ダイヤル」を開設した。「児童相談所虐待対応ダイヤル」については、通話料の無料化を行い、利便性の向上を図った。

(10) 児童虐待防止のために行う児童の死亡事例等の検証の実施

【施策番号91】

社会保障審議会児童部会の下に設置されている児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会においては、平成16年から、児童虐待による死亡事例等について、分析・検証し、事例から明らかになった問題点・課題に対する具体的な対応策を、提言として毎年取りまとめており、令和元年8月には、「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第15次報告)」を取りまとめた。

第15次報告においては、心中以外の虐待死(50例・52人)中、0歳児死亡が最も多く(53.8%)、うち月齢0か月児が半数を占めること、実母が抱える問題として「予期しない妊娠/計画していない妊娠」、「妊婦健診未受診」が高い割合を占めること等が特徴として挙げられた。

(11) 再被害の防止に資する教育の実施等

【施策番号92】

法務省においては、矯正施設に収容されている加害者のうち必要な者に対し、被害者感情を理解させるためのオリジナル教材等を活用した「被害者の視点を取り入れた教育」を受講することを義務付けている。同教育の一環として、犯罪被害者等や犯罪被害者支援に関係する者等による直接講話を実施するなど、関係者の協力を得つつ、同教育の充実を図っている。

「被害者の視点を取り入れた教育」は、被収容者に対し、自らの犯罪と向き合い、犯した罪の大きさや犯罪被害者等の心情等を認識させ、犯罪被害者等に誠意を持って対応するとともに、再び罪を犯さない決意を固めさせることを目標としており、社会復帰後の犯罪被害者等への対応、再犯の防止等につながることが期待できる。

(12) 再被害の防止に資する適切な加害者処遇

【施策番号93】

ア 法務省においては、性犯罪者、ストーカー事案の加害者等の保護観察対象者に対しては、事案に応じて、違反した場合に仮釈放の取消し等の不良措置がとられることを前提とし、個々の保護観察対象者ごとに定められる特別遵守事項として、当該被害者への接触を禁止するなどの事項を設定している。また、性犯罪者等の特定の犯罪的傾向を有する保護観察対象者に対し、専門的処遇プログラムを受講することを特別遵守事項として設定し、これを守るよう指導監督している。さらに、事案に応じて、慰謝の措置や被害弁償に努めること等の生活行動指針を設定し、これを守る努力をするよう指導監督している。

仮釈放等審理における意見等聴取制度が施行された平成19年12月以降、仮釈放者及び少年院仮退院者については、犯罪被害者等から聴取した意見等を踏まえ、より一層適切に特別遵守事項を設定している。

【施策番号94】

イ 警察においては、恋愛感情等のもつれに起因する暴力的事案に係る仮釈放者及び保護観察付執行猶予者について、保護観察所との緊密かつ継続的な連携によって、当該対象者の特異動向等を双方で迅速に把握し、必要な措置を講じている。

(法務省における取組については、【施策番号93】参照)。

【施策番号95】

ウ 法務省においては、保護観察対象者に対して、再び罪を犯さない決意を固めさせるとともに、犯罪被害者等の意向に配慮しながら誠実に対応することを促すため、しょく罪指導のためのプログラムを策定し、全国の保護観察所において、一定の重大な犯罪をした保護観察対象者に対し、次のとおり個別指導を実施している。

(ア) 自己の犯罪行為を振り返らせ、犯した罪の重さを認識させる。

(イ) 犯罪被害者等の実情(気持ちや置かれた立場、被害の状況等)を理解させる。

(ウ) 犯罪被害者等の立場で物事を考えさせ、また、犯罪被害者等に対して、謝罪、被害弁償等の責任があることを自覚させる。

(エ) 具体的なしょく罪計画を策定させる。

(13) 再被害防止のための安全確保方策の検討

【施策番号96】

警察庁においては、関係府省庁と連携した犯罪被害者等の安全確保方策の検討に資するため、ストーカー事案及び配偶者等からの暴力事案の被害者が同一の加害者から再被害を受けている実態の把握等を目的として、平成29年度に「犯罪被害類型別調査」を実施した。

目次]  [戻る]  [次へ

警察庁 National Police Agency〒100-8974 東京都千代田区霞が関2丁目1番2号
電話番号 03-3581-0141(代表)