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第4章 支援等のための体制整備への取組

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2 調査研究の推進等(基本法第21条関係)

トピックス 平成29年度 若年層における性的な暴力に係る相談・支援の在り方に関する調査

1.調査の概要

近年、アダルトビデオ出演強要問題や、いわゆる「JKビジネス」と呼ばれる営業により若年層が性犯罪・性暴力(以下「性暴力」という。)被害に遭う問題等が発生しており、若年層に対する性暴力に係る問題は深刻な状況にある。また、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(以下「SNS」という。)等、インターネット上の新たなコミュニケーションツールの広がりに伴い、これを利用した性暴力は一層多様化しており、そうした新たな形態の暴力に対して迅速かつ的確な対応が求められるところである。

そこで内閣府では、若年層における性暴力の被害状況を把握し、効果的な支援の在り方を検討するため、若年層における性暴力に関する相談・支援を行っている民間団体を対象に事例調査及びヒアリング調査を実施した。(詳細については、内閣府男女共同参画局ウェブサイト(http://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/chousa/pdf/jakunen_chousa_report.pdf)参照)。

2.被害の実態

本調査における事例のうち、被虐待の被害「あり」は全体の6割に上り、そのうちの約半数が「性的虐待」を含む虐待の被害に遭っていることが明らかになった。また、家出経験「あり」が全体の2割を超えており、ヒアリング調査では、虐待により家に戻ることができない状況で、「部屋を使ってよい」「寮付の仕事がある」と言われて行ってみると、性風俗の仕事に従事させられたといったケースも指摘されている。

これまで、女性に対する暴力の実態把握に関する調査については、暴力の類型別に実施されることが多かったが、今回、若年層という一定の年齢層に注目して調査したところ、同じ者から長期間断続的に性暴力を受けたり、年齢の上昇とともに広がる行動範囲やインターネットの利用により、学校や職場における顔見知りの者や、インターネット上でやりとりしただけの見知らぬ者等、様々な者から性的な対象とみなされ被害を受けるといった、若年層における性暴力被害の実態が浮き彫りになった。

3.支援につながることの難しさ

一方で、これらの若年層の性暴力被害者が適切な支援につながっているとは言い難い。本調査の対象となった支援団体に相談する前の相談歴を見ると、相談歴「あり」と確認された事例が138件、そのうち、最も多かった相談先は「警察」であるものの、その事例はわずか37件にとどまっている(図20-2,なお、図中のnは空欄又は「不明」の回答を除いた、分類別の該当事例数である。以下同様)。

また、被害時から相談に至るまでの期間に関しては、「1年以上」の事例が最も多く、被害からより早い段階で支援につながることができていないことも推察される(図23-1)。特に被害時の年齢が低年齢であるほど相談までに年数を要していた。

一般に、性暴力被害は、警察に被害届を出すことはおろか、相談することすらためらわれることも多い。ヒアリングでは、それら一般の傾向に加え、若年層であれば、「親に心配させたくない」といった不安から、親や学校に知られることを恐れて相談できないことが指摘された。また、幼児期から性的虐待や性暴力を繰り返し受けている被害者は、「抵抗しても無駄」「逃げることなんてできない」という無力感に陥ったり、特に、加害者が実父で、「愛しているから」という言葉を常にかけられ性行為等を強要されている場合、その行為を拒否できるものだと認識することができずに長期にわたり被害を受け続けたりすることも起こり得る。たとえ被害から逃げたいと思っても、「相談したことで、家族がバラバラになるのでは」という不安から相談できない場合もあることが指摘された。

図20-2 相談先と相談内容(複数回答可:n=136)
図20-2 相談先と相談内容(複数回答可:n=136)
図23-1 被害時の年齢と相談までの期間(n=138)
図23-1 被害時の年齢と相談までの期間(n=138)

4.相談・支援体制における今後の課題

したがって、「性暴力とは何か」といった啓発を含め、適切な相談窓口の広報や相談の流れ、相談後の支援方法等、若年層の不安を取り除くような積極的な情報の発信が引き続き重要となる。その際、情報発信の媒体として、若年層にとって身近なコミュニケーションツールであるSNS等の活用も検討する必要があるだろう。実際、支援団体を知ったきっかけは「インターネット」が最も多くなっている(図19)。

また、今後は、若年層の性暴力被害者が早期に適切な相談機関につながることができるよう、メールやSNSを活用した相談対応の在り方についても検討が進められることが望ましいと考えられる。

図19 支援団体を知ったきっかけ(n=116)
図19 支援団体を知ったきっかけ(n=116)

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