警察庁 National Police Agency

警察庁ホーム  >  犯罪被害者等施策  >  公表資料の紹介:犯罪被害者白書  >  令和元年版 犯罪被害者白書  >  トピックス 被害者等支援における関係機関連携と体制構築について~早期支援及び途切れない支援提供のために~

第4章 支援等のための体制整備への取組

目次]  [戻る]  [次へ

1 相談及び情報の提供等(基本法第11条関係)

トピックス 被害者等支援における関係機関連携と体制構築について~早期支援及び途切れない支援提供のために~

~平成30年度都道府県・政令指定都市犯罪被害者等施策主管課室長会議の講演より~

帝京平成大学 現代ライフ学部教授 大塚 淳子 氏

【途切れない支援】

専門機関が犯罪被害者等のニーズに対応してそれぞれ支援を行っているものの、縦割りによるすき間があり、被害者への周知も不足しています。日常生活は事件の後も続いているわけですから、すき間や漏れをつくらないようにするために、専門機関が連携して支援することが大切です。

途切れない支援については、被害直後から関係する機関が緩やかにつながって、さらに被害者が中心にいて、協働しながら必要な支援を共に考えていくことが大事です。被害者が周囲の関係機関とつながることは実はとても大変なことなので、できれば被害者の横に寄り添う伴走者の立場の支援者がいて、一緒に動く形がいいのだろうと思います。

それぞれ専門機関の役割はありますが、被害者の生活の全体を見る視点が支援に求められているのではないでしょうか。

途切れない支援のために

【連携する上での難しさ】

連携する上で困難なことについて、次の3点が挙げられます。1点目は、相互の理解不足です。お互いの団体について、名前や活動の概要は分かっていても詳細を把握していないことがあります。2点目は、認識の温度差です。警察や検察等の考えることと、医療や福祉関係機関が考えることは大分違いますし、重要性・緊急性についての判断基準も異なります。例えば、身の安全という点で緊急度が高いと感じるところと、今夜食事ができない、眠れない、眠る場所がないということを中心に考えるところもあるわけです。3点目は、個人情報の扱いです。犯罪被害者等支援の分野では、他の組織へ情報提供・情報共有するためのハードルが非常に高いと感じます。これは、個人情報保護の問題もありますし、二次被害の問題のために慎重にならざるを得ないところもあります。また、被害者御本人が拒絶する場合もあるかもしれません。

【多機関連携の課題と展望について】

連携とは、共有化された目的を持つ複数の人及び機関が、単独では解決できない課題に対して主体的に協力関係を構築して、目的達成に向けて取り組む相互関係の過程とされます。

精神保健福祉分野で多職種協働や連携の促進に熱心に取り組まれた野中猛氏の資料を参考に申し上げますと、連携といっても、五つの段階があります。Ⅰは部署内に留まっている。Ⅱは外の関係者との接触を始める。Ⅲは定期的な情報交換を行う。Ⅳは調整がなされ役割分担が明確化される。Ⅴはネットワークが構築され協働が図られる、です。皆さんはどの段階に御自身の連携状況が当てはまるでしょうか。Ⅰにとどまっているとしたら、これからステップアップしていきましょう。

連携を円滑にするヒントとして、3つの「ワーク」があります。フットワーク、ネットワーク、そして、チームワークです。目新しいことではありませんが、足で稼ぐ軽いフットワークが必要ですし、顔が見える相談しやすい関係づくりとしてネットワークも必要です。それから、目的を共有して一緒に協働するチームワークが何よりも大切です。どのように連携すれば自分たちの専門性が高まるかということですが、いきなり都道府県全域で行うことは大変ですから、圏域単位から始めることがいいのではないかと思います。

それから、講師を呼んで講演やワークを進めることも良いと思います。定期的に開催し、事例検討を実際に行うことも重要です。親会議等と位置付けられるような体制整備のための協議会等と個別事例の検討の機会を一緒に設けるなど、様々な機関や職種の方が同じテーブルにつくことが大事です。多機関連携は自然発生的にはできませんので、環境基盤を整備する必要があります。環境基盤の整備は、「仕掛け」をすることでもあります。人員や財源、権限等を自治体が持ち、地域全体の力をつけていくための仕掛けであり、それを動かすことだと思っています。

チームワークについては、チームワークの原則を理解しないといけません。自分の機関だけで事足りると思っていますと、チームワークが必要だとは考えませんので、自分のところではできないことがあるのだというお互いの限界を知り、知恵と力を合わせていくことが重要です。

また、事例の検討は大変有効です。ジェノグラムやエコマップ等のように図示化すること、可視化することがとても大事です。こうした作業が、結果としてガイドラインのような成果物につながっていくことが多いです。

最後に、連携を進める際によく起こることですが、他機関がやってくれるだろうと思って引いてしまうと、すき間ができるということがあります。重なってしまって無駄かもしれないと思っても、重なったら絶対にすき間はできませんので、お互いに一歩踏み出すことがとても大事なのではないかと思っています。

※ 本トピックスは、講演を概要として取りまとめたもの。講演の全文及び資料については、警察庁犯罪被害者等施策ウェブサイト(https://www.npa.go.jp/hanzaihigai/sesaku/higai/koe.html)を参照。

目次]  [戻る]  [次へ

警察庁 National Police Agency〒100-8974 東京都千代田区霞が関2丁目1番2号
電話番号 03-3581-0141(代表)