第2章 精神的・身体的被害の回復・防止への取組

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1 保健医療サービス及び福祉サービスの提供(基本法第14条関係)

コラム2 スクールカウンセラーの手記

スクールカウンセラー活用調査研究事業から始まったスクールカウンセラー(以下、SC)活動は、その後都道府県・指定都市が実施主体となり、SC等活用事業となった。現在も継続して教育現場の相談体制の充実に寄与しており、平成30年度は全国の公立小中学校26,700校に配置するための予算が計上されている。

SCは、児童生徒の心理に関して高度に専門的な知識・経験を有するものとして、公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会の認定に係る臨床心理士等が選考されている。活動の主な目的は、「児童生徒へのカウンセリングや教員・保護者への助言等を行い、児童生徒の心の悩みの深刻化やいじめ・不登校等の問題行動等の未然防止、早期発見・早期対応を図る。(北海道教育委員会)」や「各公立学校における教育相談体制の充実や教員の資質向上を図るため、〈中略〉、教員及び学校に対し児童生徒の問題行動やいじめ、不登校などの諸問題を未然に防止又は解決するための適切な指導及び助言を行う。(青森県教育委員会)」(平成29年度スクールカウンセラー等活用事業実践活動事例集より抜粋)というように、実施主体による違いがあるものの、教員・保護者や児童生徒の心の悩みに対応することである。また、犯罪被害者等を含む児童生徒の相談等に的確に対応できるSCの適正な配置が、第3次犯罪被害者等基本計画の重点課題に係る具体的施策のひとつにあげられ、犯罪被害に遭った児童・生徒・保護者や関連する教職員の支援・連携が、SC活動に含まれている。しかしながら、SCが犯罪被害に遭った児童生徒等に関わる時、その過程で様々な困難さを抱える場合もある。以下は、犯罪被害に遭った児童生徒への対応で、私(以下、A)が体験した事例である。

B校に在籍する女子生徒の性犯罪被害が、養護教諭への相談から判明した。本人の了解を得て担任に被害が伝えられ、複数の同学年女子が被害に遭っていること、同じクラスの男子生徒の加害であることが判明した。男子生徒は、関係機関を通して、矯正施設に入所(転校)となった。早々に被害生徒と保護者の支援会議が、養護教諭とAを含めて、開催された。カウンセリングや学校での留意事項が確認され、担任から被害生徒とその保護者に伝えられた。しかしながら、カウンセリング希望がなかったため、Aは主に担任の支援を担った。担任は被害生徒や保護者へ適切に対応し、時折自身の対応についてAの助言を求めた。一方で、被害を防げなかったことや気付けなかったこと、担任クラスから被害者と加害者を出したことの自責の念と、加害生徒が戻ってきた時の対応への不安を抱えていた。自責の念はカウンセリングにて対処できた。加害生徒復帰の対応には、学校や学年全体での検討が必要であったが、学校内の調整をうまく進められず、Aは担任の不安低減対応に不全感を感じていた。

学校は、主にクラス単位で運営される期間限定の組織で、運営主体はクラス担任である。本事例は被害者と加害者が同じクラスに在籍していたことから、担任が、被害生徒支援と同時に、加害生徒への教育的対応を担うという状況が、対応の困難さを深めていた。

本事例のような犯罪被害以外に、犯罪被害に遭った児童生徒の兄弟姉妹への個別支援や交通違反を含む犯罪等で児童生徒が亡くなった後のクラスメートへの支援、クラス運営に関する担任への支援など、SCが関わる犯罪被害者等支援は幅広く想定されている。一方で、SCが児童生徒と関われるのは卒業までと期間が限られている。途切れのない支援が犯罪被害者等施策のテーマのひとつになっていることから、教育分野でも、その方策構築が望まれる。

スクールカウンセラーA

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