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第3章 刑事手続への関与拡充への取組

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1 刑事に関する手続への参加の機会を拡充するための制度の整備等(基本法第18条関係)

トピックス 犯罪被害者等支援のための弁護士会と地域関係機関との連携

神奈川県警察(以下「県警察」という。)と神奈川県弁護士会(以下「県弁護士会」という。)の犯罪被害者支援委員会とは、早くから協力して犯罪被害者等支援に当たっていたが、より緊密な連携を図るきっかけになったのは、平成21年4月、神奈川県犯罪被害者等支援条例(以下「県条例」という。)が制定されたことである。県条例に基づき、県内の被害者支援の拠点となるかながわ犯罪被害者サポートステーション(以下「サポートステーション」という。)が開設され、神奈川県(以下「県」という。)・県警察・NPO法人神奈川被害者支援センターが一体となって、犯罪被害者等に総合的な支援を提供している。また、県条例には弁護士等による相談体制の充実等が規定されているところ、22年7月、県と県弁護士会との間において、犯罪被害者等に対する法律相談の実施に関する協定が締結されている。

具体的には、犯罪被害者等がサポートステーションを通じて法律相談を希望すると、サポートステーションから県弁護士会に対して法律相談希望のあった旨が通知される。通知を受けた県弁護士会は、犯罪被害者等支援に精通した弁護士を斡旋(あっせん)し、法律相談を実施する。犯罪被害者等は、サポートステーションを通じて法律相談の日時・場所の調整を行うため、自らが弁護士へ直接電話して日程調整をする必要がない。また、法律相談は、サポートステーションや担当弁護士の事務所、警察署等で実施されるが、通常の場合、県警察被害者支援室やNPO法人神奈川被害者支援センターの担当者が同行するため、犯罪被害者等が一人きりで相談場所に行く必要はない。さらに、実際の法律相談の際も、担当する弁護士は事前に事件概要を把握しているため、犯罪被害者等が再度、弁護士に対して被害内容を説明せずに済む。これに加えて、相談料は2回分まで県から弁護士に支払われるため、犯罪被害者等が直接負担することはない。

県では、県条例制定以前から犯罪被害者等を対象とした法律相談は行われていたが、被害者参加制度、損害賠償命令制度の創設もあり、県条例制定前と比較すると、現在の相談件数は約10倍と、飛躍的に増加している。

また、県弁護士会は、検察庁との連携も図っており、30年3月、県弁護士会と横浜地方検察庁(以下「横浜地検」という。)との間で、犯罪被害者等に対する連携支援の実施の申合せを行った。これ以前は、検察官が、犯罪被害者等から相談を受けるなどし、何らかの支援が必要だと判断した場合、検察官自ら県警察と協議するなどしていたが、この申合せにより、県弁護士会と横浜地検との連携体制も構築されることとなった。そして、サポートステーションの法律相談と同様に、犯罪被害者等が横浜地検の検察官を通じて法律相談を希望すると、横浜地検総務部刑事政策総合支援室犯罪被害者担当から県弁護士会の犯罪被害者支援センターにその旨が通知され、同センターが相談担当弁護士を斡旋(あっせん)するなどして、犯罪被害者等の負担軽減を図っている。

なお、初回の相談料は無料としている。

このほか、県弁護士会では、県警察や横浜地検に赴き、弁護士による犯罪被害者等支援について講義を行い、定期的に連携状況を確認する協議を行うなどして、各機関が行う犯罪被害者等支援について相互理解を深めている。近年、県内では、社会の注目を集める重大かつ凶悪な事件が連続して発生しているが、県弁護士会と各機関の密な連携により、事件発生後、早期に法律相談を実施し、支援に当たることができている。

犯罪被害者等の支援に当たって重要なことは、「支援をつなぐこと」である。これは、各機関が個別に支援を提供するだけではなく、犯罪被害者等に必要な支援があると判断したとき、他の機関の適切な支援につなげることである。

例えば、法律相談の必要があると判断した場合、法律相談ができる場所の情報を提供することも、支援の一つの方法ではある。しかし、この場合、犯罪被害者等が自ら電話をかけ、自分が被害にあったことを告げ、相談日時・場所を調整して相談に行く必要がある。相談の際には被害の内容を具体的に話さなければならない。相談料がどれくらいかかるのかの不安もある。犯罪被害者等が実際に法律相談を受けたいと思い、相談場所の紹介を受けたとしても、実際に相談に至るまでには多くの負担がともない、場合によっては法律相談を受けることを諦めてしまう犯罪被害者等もいるかもしれない。

このような犯罪被害者等の負担を軽減し、適切に法律相談を受けられるようにするためにも、弁護士会と各機関は、積極的に交流し、相互理解を図って支援をつないでいかなければならない。

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