3 居住の安定(基本法第16条関係)
(1) 公営住宅への優先入居等
【施策番号20】
ア 国土交通省においては、地方公共団体に対して、平成16年から17年にかけて、配偶者からの暴力被害者をはじめとする犯罪被害者等を対象とした公営住宅への優先入居や目的外使用等について配慮を依頼する通知を、23年度には公営住宅への優先入居等の手続の簡素化に関する通知を発出した。また、29年度には、ストーカー行為等の規制等に関する法律(以下「ストーカー規制法」という。)の改正を踏まえ、改めて通知を発出した。
【施策番号21】
イ 公営住宅への入居に関して、都道府県営住宅における広域的な対応や市町村も含む地方公共団体相互間における緊密な連携を各地方公共団体に要請していることについて、会議等の場で改めて各地方公共団体に周知した。
【施策番号22】
ウ 住宅の確保に窮する犯罪被害者等を支援するため、公営住宅の管理主体から、独立行政法人都市再生機構の賃貸住宅の借上げ等の要請があった場合には、柔軟に対応することとしている。
【施策番号23】
エ 国土交通省においては、民間賃貸住宅への円滑な入居を促進するため、地方公共団体や関係事業者、居住支援団体等が組織する居住支援協議会、29年に改正・施行された住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律に基づく居住支援法人が行う相談・情報提供等に対する支援を行っている。
【施策番号24】
オ 国土交通省においては、法務省作成の犯罪被害者等向けパンフレット「犯罪被害者の方々へ」により、犯罪被害者等に対して、公営住宅への優先入居等の施策の周知を図っている。
(2) 被害直後及び中期的な居住場所の確保
【施策番号25】
ア 厚生労働省においては、児童相談所・婦人相談所の一時保護所や、婦人相談所が一時保護委託先として契約している母子生活支援施設、民間シェルター等において一時保護を実施しており、犯罪被害女性等の個々の状況に応じて保護期間を延長するなど柔軟に対応している。また、犯罪被害女性等を加害者等の追及から逃れさせるため、都道府県域を超えた広域的な一時保護・施設入所を行うなど、適切な制度運用に努めている。平成28年度からは、一時保護所が満床でなくても一時保護委託が可能となる対象として、ストーカー被害女性や性犯罪・性暴力被害女性を追加することにより、適正かつ効果的な一時保護を図っている。
配偶者からの暴力や人身取引の被害女性等を含めた一時保護人数は、28年度で8,642人(要保護女性本人4,624人、同伴家族4,018人)となっている。
年度 | 要保護女性本人の一時保護人数 | 同伴家族の一時保護人数 | 合計 |
---|---|---|---|
平成22年度 | 6,357 | 5,509 | 11,866 |
平成23年度 | 6,059 | 5,187 | 11,246 |
平成24年度 | 6,189 | 5,376 | 11,565 |
平成25年度 | 6,125 | 5,498 | 11,623 |
平成26年度 | 5,808 | 5,274 | 11,082 |
平成27年度 | 5,117 | 4,577 | 9,694 |
平成28年度 | 4,624 | 4,018 | 8,642 |
提供:厚生労働省 |
また、児童福祉法に基づき、児童相談所長又は都道府県知事等が必要と認める場合には、虐待を受けた子供等の一時保護を行うことができるが、児童虐待対応においては、子供の安全確保等が必要な場合であれば、保護者や子供の同意がなくとも、一時保護をちゅうちょなく行うべき旨を「児童相談所運営指針」に明記し、子供の安全を迅速に確保し適切な保護が図られるよう周知している。
【施策番号26】
イ 厚生労働省においては、「少子化社会対策大網」(27年3月閣議決定)に基づき、虐待を受けた子供と非行児童との混合処遇等を改善するべく、次世代育成支援対策施設整備交付金等を活用し、児童相談所の一時保護所における個別対応のための環境改善を推進している(31年度までに全ての都道府県・政令指定都市・児童相談所設置市で推進予定)。また、福祉行政報告例等により、児童相談所の一時保護所の一時保護日数や一時保護件数等のデータを把握しており、28年度の一時保護所における一時保護延べ日数は72万5,449日、所内一時保護件数は2万4,111件、委託件数は1万6,276件となっている。
年度 | 一時保護所における延べ日数 | 一時保護件数 | 一時保護委託件数 |
---|---|---|---|
平成22年度※ | 562,055 | 20,302 | 9,126 |
平成23年度 | 562,322 | 20,289 | 9,985 |
平成24年度 | 590,627 | 20,777 | 11,268 |
平成25年度 | 618,009 | 21,281 | 12,016 |
平成26年度 | 656,103 | 22,005 | 13,169 |
平成27年度 | 689,873 | 23,276 | 13,674 |
平成28年度 | 725,449 | 24,111 | 16,276 |
※ 平成22年度は、東日本大震災の影響によって、福島県を除いて集計した数値 | |||
提供:厚生労働省 |
【施策番号27】
ウ 厚生労働省においては、婦人相談所の一時保護所で被害女性を保護するに当たり、被害女性及び同伴する家族の安全の確保や心理的ケアのため、夜間警備体制の強化や心理療法担当職員の配置を行っている。
【施策番号28】
エ 厚生労働省においては、24年度から婦人保護施設退所後の自立に向けた支援の一環として、施設の近隣アパート等を利用して生活訓練を行う場合に、建物の賃貸料の一部を公費により負担している。
【施策番号29】
オ 警察庁においては、自宅が犯罪行為の現場となり、破壊されるなど、居住が困難で、かつ、犯罪被害者等が自ら居住する場所を確保できない場合等に、一時的に避難するための宿泊場所に要する経費及び自宅が犯罪行為の現場となった場合におけるハウスクリーニングに要する経費を都道府県警察に補助しており、都道府県警察では、両経費に係る公費負担制度を運用し、犯罪被害者等の精神的・経済的負担の軽減を図っている。
今後も、同制度の効果的運用について、都道府県警察を指導していく。
【施策番号30】
カ 警察庁においては、地方公共団体に対して、犯罪被害者等施策主管課室長会議や地方公共団体職員を対象とする研修会等を通じ、居住場所の確保や被害直後からの生活支援に対する取組がなされるよう要請するとともに、地方公共団体の取組事例について、「犯罪被害者等施策情報メールマガジン」等を通じて情報提供を行っている。
30年4月現在、57都道府県・政令指定都市、302市区町村において、犯罪被害者等が優先的に公営住宅等へ入居できるようにするなどの配慮が行われている。
地方公共団体 (制度あり/全体数) |
抽選によらず入居 | 入居要件の緩和 | 抽選倍率の優遇 | その他 |
---|---|---|---|---|
都道府県(43/47) | 11 | 7 | 30 | 18 |
政令指定都市(14/20) | 5 | 4 | 7 | 8 |
市区町村(302/1,721) | 79 | 65 | 80 | 134 |
※ 地方公共団体によっては複数の制度を運用しているところがある。 ※ 市区町村数には、政令指定都市を含まない。 ※ 区は東京都の23区をいう。 |
(3) 性犯罪被害者等に対する自立支援及び定着支援
【施策番号31】
厚生労働省においては、性犯罪被害者を含む相談者に対する支援として、地方公共団体やDVシェルターを運営する特定非営利活動法人等が、相談者に対して、生活相談や行政機関への同行支援等の自立支援、家庭訪問や職場訪問等の定着支援を一体的に行い、その取組の効果を検証する「DV被害者等自立生活援助モデル事業」を平成26年度から実施している。29年度は1自治体において実施した。