第3節 性犯罪被害者支援のための連携
コラム4 民間団体による性犯罪被害者支援のための連携の取組
1 被害者サポートセンターおかやま(VSCO)の取組
(1) 被害者サポートセンターおかやま(VSCO)
VSCO(Victim Support Center Okayama)は平成15年に発足して12年目を迎えました。23年に犯罪被害者等早期援助団体の指定を受け,25年に公益社団法人被害者サポートセンターおかやま(VSCO)として認定されました。
発足当初から性犯罪被害者の支援に取り組んできましたが,性犯罪は人間としての尊厳を踏みにじり,人権をないがしろにする卑劣な行為にもかかわらず,性差別の長い歴史経過の中で,女性にあたかも非があるかのごとき社会的風潮が生まれ,被害者は声を上げることができない状況にあったことから,VSCOとして,何らかの支援ができないものかと模索していました。
(2) 岡山県産婦人科医会との連携
平成25年1月にVSCOは岡山県産婦人科医会(県内ほとんどの産婦人科医療機関加盟)と協定を締結し,VSCOが目指す支援が可能となる,性犯罪被害者のための緊急支援ネットワークの基盤が出来上がりました。
(3) VSCOが目指す支援―2本の柱―
第1の柱は,被害者の心と体をまず守ることです。
心と体を守るために,岡山県内のどこかの産婦人科にまず受診すること,妊娠を予防し,性感染症から守ることが重要で,そのためにも被害後72時間以内の緊急支援につなぐことが必要です。そのため,VSCOと産婦人科との情報の共有ができるよう連絡票を作成,活用しています。費用は県公費負担制度を活用しますが,警察にはどうしても連絡をしたくないなど,公費負担できない場合には,VSCO独自の「性犯罪被害者のための緊急支援金」支給制度(被害後原則72時間以内の妊娠予防薬投与,感染症検査・治療等の費用支給)を活用しています。
第2の柱は人間不信からの解放と自立です。
この支援は,被害者が被害に向き合い,加害者を罰することによって,気持ちに区切りをつけ,次の人生に向かって自立した生活を取り戻すことです。そのために警察への届出を勧めるとともに,裁判支援等については,VSCOの協力弁護士である被害者支援に精通した弁護士と連携した支援,行政機関と連携した日常生活支援,精神科医と連携した精神的支援を進めています。
(4) 啓発活動
啓発のためのリーフレット(県産婦人科医会と共同作成)やチラシを県下市町村,教育委員会,医療機関,関係機関に配布しているところですが,浸透はまだまだです。
(5) これからのVSCO
VSCOの支援体制は,内閣府の「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター開設・運営の手引」の中の相談センターを中心とした連携型方式に当たりますが,現在では,24時間医療等の中核医療体制の構築に向けて,県警・産婦人科医会・VSCOの連携を強化し,さらに,地域を始め行政や臨床心理士会・教育委員会,特に養護教諭の先生との連携を強めながら,広く啓発していき,地域ネットワークを拡大していく予定です。
2 性暴力救援センター・大阪SACHICOの取組
性暴力救援センター・大阪SACHICO
SACHICOは,同意のない・対等でない・強要された性的行為は全て性暴力であると位置付け,これを人間の尊厳の問題であると同時に,医療の問題としてとらえ,大阪府松原市内にある社会医療法人阪南医療福祉センター阪南中央病院の一角に,待合・面談室,診察室,スタッフルームを設け,平成22年4月から事業を開始しています。
SACHICOでは,支援のコーディネート・相談等はSACHICO支援員が担い,産婦人科医療は,「阪南中央病院の外来診療」として常勤の女性医師6人がシフトを組んで担当しており,両者が共同事業の形で,24時間365日対応のワンストップ支援を行っています。
主な支援内容は,SACHICOの支援員による24時間ホットライン,来所相談,他の支援団体に関する情報提供,阪南中央病院産婦人科女性医師による産婦人科医療・証拠採取,協力弁護士による法的支援,性暴力被害に特化した研修を積んだウィメンズセンター大阪のカウンセラーによるカウンセリング等で,大阪府警察,大阪産婦人科医会,府下及び近畿一円の児童相談所等とも連携して支援に当たっています。
現在のSACHICOの運営は,寄付等によっており,支援員の人員確保や研修の充実を含め,支援活動を継続していくための課題があります。