第1章 特集「途切れることのない必要な支援」

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第3節 性犯罪被害者支援のための連携

2 被害後間もない時期に必要な支援

(1) 産婦人科医療

性犯罪被害者は,身体に外傷等を受けることもあることから,被害後のできるだけ早い時期に診察と治療を受けることが重要である。また,妊娠・性感染症の検査,緊急避妊薬・性感染症治療薬等の処方も必要である(性感染症等の検査は,複数回にわたって行われるものであることから,継続的な経過観察や治療が必要となる場合もある)。

警察においては,性犯罪被害者に対し,緊急避妊等に要する経費(初診料,診断書料,性感染等の検査費用,人工妊娠中絶費用等を含む。)を公費により負担することにより,性犯罪被害者の精神的・経済的負担の軽減を図っている(【施策番号17】参照)。

(2) 警察における対応等

性犯罪被害者が加害者の検挙を希望して警察へ被害申告をする場合には,捜査の一環として被害者からの事情聴取を行ったり,被害者の身体等から証拠採取をしたりする必要があるので,被害者の心情や尊厳に配慮して,負担軽減を図りつつ適切な対応をすることが必要である。

なお,性犯罪被害者が直ちに警察に被害申告をしない場合でも,将来的に被害申告をする場合に備えて,証拠を採取しておくことが有益な場合もある。警察庁では,性犯罪被害者が警察に届け出ずに医療機関を受診した場合に,その身体等に付着した証拠資料を医師等が採取するための資機材を5都道県の医療機関に試行整備している。

(3) 訓練を受けた相談員等による相談対応

心身ともに重大なダメージを受けている被害後間もない性犯罪被害者は,ときに,自分が必要としている支援について自ら考えることが困難な場合もある。そのような場合には,訓練を受けた相談員等が,被害者の気持ちに寄り添いつつ,支援のコーディネート(犯罪被害者が受けられる支援の選択肢を示し,そのメリット・デメリットを説明した上で,希望する支援につなぐことなど)等を行うことが求められることとなる。特に,被害後間もない時期に必要となる産婦人科医療や加害者の検挙のために証拠採取を行うかどうかなどは,被害直後の被害者が,アドバイスもなしに判断することは困難な場合もあり,訓練を受けた専門の相談員による相談対応が必要な場合がある。

なお,性犯罪被害者は,身体的,精神的に極めて重い負担を強いられることや,羞恥心など様々な理由により警察への被害申告をためらう場合もある。

しかし,被害後間もない時期の性犯罪被害者は,自己の身の安全にも大きな不安を覚えることがあり,警察への被害申告は,性犯罪被害者の安全安心の確保という観点からも有益であるほか,警察による各種犯罪被害者支援制度を受けられることからも,性犯罪被害者の意向を十分に尊重しつつ,被害届出のメリット等について説明することが必要である。

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