警察庁 National Police Agency

警察庁ホーム  >  犯罪被害者等施策  >  公表資料の紹介:犯罪被害者白書  >  平成26年版 犯罪被害者白書  >  コラム10 地方公共団体の取組<1>(秋田県)

目次]  [戻る]  [次へ

コラム10 地方公共団体の取組<1>(秋田県)県内全自治体における犯罪被害者等支援に関する条例の制定

秋田県は,犯罪が日本一少なく,比較的安全で安心して暮らせる県ですが,誰もが犯罪被害者になる可能性があります。平成25年4月1日,秋田県では,県内すべての自治体において犯罪被害者等支援に関する条例が施行されました。


1 県における取組:基本計画の策定

秋田県では,県警察と県との協議により,平成17年5月,犯罪被害者等基本法第5条の趣旨を踏まえ,本県における犯罪被害者等のための施策を明確化するとともに,各施策の推進を通じ安全で安心して暮らせる社会を実現するため,犯罪被害者等支援に関する基本計画を策定することを決定しました。秋田県被害者支援連絡協議会に「秋田県犯罪被害者等支援基本計画(仮称)に関する研究部会」を設置して検討を重ね,全国に先駆け,平成18年2月に「秋田県犯罪被害者等支援基本計画」を策定しました。この基本計画を同年4月1日に施行し,被害者支援の本格的な取組を開始しました。


2 市町村における取組:総合的対応窓口の設置と条例の制定

県警察及び県では,被害者支援施策の確実な推進には,犯罪被害者等に最も身近な行政機関である市町村の理解と協力が不可欠であるとの認識から,平成17年7月から,各市町村長,担当課長等への訪問説明等を行いました。その結果,平成18年4月1日には,全国で最も早く県内全自治体に総合的対応窓口が設置されたほか,8市町村において犯罪被害者支援条例が施行されました。その後,市町村条例は順次制定され,平成23年4月1日,全国で初めて県内の全市町村で条例が施行されました。


3 県における取組:県の条例制定

(1) 制定の契機

このように市町村において取組が進む中,県では,犯罪被害者等基本法や秋田県犯罪被害者等支援基本計画に基づいて,被害に遭われた方々に対する支援を推進してきましたが,第二次基本計画策定に当たって県が実施した犯罪被害者等へのアンケート調査結果や,基本計画検討委員会等において,社会全体で被害者等を支える社会を形成するためには,行政機関はもとより,県民や事業者なども含めた県民が総ぐるみとなって支援に取り組む必要があること,犯罪被害者支援に取り組む県の姿勢・方針を明確にすることが被害者やひいては,県民の安心に繋がるとの意見が多数あるなど,犯罪被害者支援に特化した県条例の制定を求める気運の高まりがありました。そのようなことから,平成23年3月策定の「第二次秋田県犯罪被害者等支援基本計画」に県条例制定を目指すことを明記して策定に向けた取組を推進し,「秋田県犯罪被害者等支援条例」を平成25年4月1日に施行しました。


(2) 条例の内容

「秋田県犯罪被害者等支援条例」は,それまでの取組をさらに充実させ,県民全体で犯罪被害者等を支える地域社会づくりを目指すもので,犯罪被害者等支援の目的や理念,県民等の責務,県が行う基本的施策を定めています。

特徴的な内容としては,犯罪被害者等の範囲に「婚約者」を含めたことや,「犯罪被害を考える日」の制定,「犯罪被害者等支援推進会議」の設置などが挙げられます。「犯罪被害を考える日」は,6月30日と規定し,全県的に広報啓発活動を展開して県民理解の増進を図り,犯罪被害者等を支える地域社会の形成を促進することとしています。ちなみにこの日は,平成17年6月30日に第1回目の「秋田県犯罪被害者等支援基本計画(仮称)に関する研究部会」が開催された日であり,本県における犯罪被害者支援の起点となった日と捉え選定したものです。


4 平成25年度の取組

県条例が施行になった平成25年度は,県と警察,民間支援団体が連携し,次の事業を行いました。


(1) 条例施行による新規事業

条例や「犯罪被害を考える日」の周知,被害者の現状や支援の必要性の理解浸透を図るため,6月下旬に「犯罪被害者支援フォーラム」及び「犯罪被害を考える日・生命のメッセージ展」を開催するとともに,その間,県庁,警察本部,警察署,市役所等において「ミニ・生命のメッセージ展」を開催するなど,積極的に広報啓発活動を展開しました。

また,犯罪被害者支援施策の充実を図るため,11月には「犯罪被害者等支援推進会議」を開催したほか,第二次基本計画の平成24年度実施状況を公表しました。

犯罪被害者支援フォーラム
犯罪被害を考える日・生命のメッセージ展

(2) これまでの継続事業

市町村等職員の人材育成を図るため実施している「総合的対応窓口担当者研修会」を2回開催したほか,県民理解の増進を図るため,11月に犯罪被害者週間「県民のつどい」を開催しました。

また,県警察においては,若い世代への理解を促進する取組として,県内の中・高等学校のほか本県独自に小学校において「命の大切さ学習教室」を実施するとともに,大学において,犯罪被害者等による講演会を開催し,将来を担う子どもたち約2,600人に対して犯罪被害者等に対する配慮と協力への意識を涵養し,犯罪を犯してはならないという規範意識の向上を図りました。

さらに,県内の大学生20人を「犯罪被害者支援大学生ボランティア」として,「犯罪被害者支援フォーラム」,「犯罪被害者週間県民のつどい」の運営,(公社)秋田被害者支援センターとの街頭キャンペーン等に参画させるとともに,同ボランティアを対象に被害者遺族との意見交換等を含む研修会も開催し,被害者等の実情や支援の必要性等への理解・浸透を図りました。

市町村等総合対応窓口担当者研修会
犯罪被害者週間「県民のつどい」
「命の大切さ学習教室」
大学生ボランティア

5 今後の展開

秋田県では,すべての自治体において条例が施行され,地域社会において犯罪被害者等を支援する体制づくりが少しずつ進んできていますが,実際に犯罪被害に遭われた方に真に実質的な援助が及ぶことが何より重要です。

そのような意味では,各市町村条例において見舞金の支給を規定しているところは8市町にとどまっており,今後,更なる理解と協力を求めていく必要があるほか,性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターについても設置に向けた検討を開始し,これまで実施してきた各施策の一層の充実と着実な推進を図るとともに,時代の要請に応じた新たな課題にも積極的かつ適切に対応していく必要があります。

引き続き,県・県警察・市町村や関係機関との連携を強化しながら,被害者等の置かれた立場が県民に理解され,県民全体で犯罪被害者等を支える地域社会づくりを推進し,「安全で安心して暮らせる社会」の実現を目指していきます。

目次]  [戻る]  [次へ

警察庁 National Police Agency〒100-8974 東京都千代田区霞が関2丁目1番2号
電話番号 03-3581-0141(代表)