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コラム2 平成25年度都道府県・政令指定都市犯罪被害者等施策主管課室長会議 講演録(抜粋)

公益社団法人被害者支援センターとちぎ事務局長
和氣みち子氏

公益社団法人被害者支援センターとちぎ事務局長 和氣みち子氏

私は,先ほど御紹介がありましたように,今から13年前,最愛の娘を飲酒・居眠り運転をする10トントラックで命を奪われた犯罪被害者です。本日は,私の体験・経験と,現在私は犯罪被害者支援を微力ながら行っておりますので,支援活動内容の御紹介や関係機関の連携の重要性等を中心にお話をさせていただきます。

私の娘は,今から13年前の平成12年7月31日(当時19歳8カ月)まで,青春真っただ中を,夢や希望をたくさん持って生きていました。ある日突然命を奪われ「夢」「希望」も奪われてしまいました。

犯罪被害者となって,「日本の国は犯罪被害者にとって,とっても冷たい国だった,こんなに住みにくい国だったのだろうか。」と,かなりショックを受けたのです。なぜかと言いますと,栃木県には相談する窓口や支援をしてもらえる窓口もありませんでしたので,何をどうしなければいけないのか全く分からずパニック状態でした。

一生懸命,地獄の底から這い上がろうとするのですが,私達,犯罪被害者を苦しめた事は,関係機関窓口からの2次的被害でした。

私は,娘を亡くしてから何が困ったかと言いますと,金銭問題です。遺体の処置費用の請求書,お通夜,お葬式等,こういう多額の費用をどうしようかという問題が出てきます。「栃木県民共済」という交通事故保険に入っていましたので,それを請求しようということで,一度市役所の方に伺ったのですけれども,とにかく混乱していますので,うまく説明ができなかったために,窓口をたらい回しに遭ったのです。

私の場合は,私の知り合いで助役をやられていた方がおりました,その方から市役所に電話を掛けていただき,詳しい説明をその方からしていただいたのです。そのおかげでスムーズに手続が完了し,非常に助かりました。

そのほかに,我が家にはお墓がありませんでした。市営墓地を購入しようかということになって市役所に伺うのですけれども,また説明をすることが辛くて帰ってきたりしました。そして,またその元助役の方にお願いをして,担当窓口に電話を掛けていただきながら前に進めて,ようやく墓地を購入することができました。こんな事例が私だけでもたくさんあるわけです。

そのほかに様々な事件事故の被害者がいらっしゃいます。立場が違うと,使える制度もそれぞれ違うのです。私の経験からも,市役所の窓口が,いかにハードルが高い所かということが分かっていただけるのかなと思います。

当時,栃木県には被害者支援センターがありませんでしたし,どこの窓口を頼って良いのか分からない,アドバイスや情報提供もない状況でしたから手探りで前に進むしかなかったです。

関係機関被害者支援事項

次に御紹介します取組ですが,ある被害者の方にこのワンペーパーをお渡ししたものです(次ページ参照)。最近は犯罪被害者支援が少し充実してきましたので,パンフレット,リーフレットの資料等を関係機関が準備をされて犯罪被害者の方々に渡してくださいますが,残念ながらパンフレットをもらった犯罪被害者が自分に必要な部分を探すだけでも大変な作業になります。心身がボロボロで心が折れている中で,そういう作業は軽減していただきたいのです。そこでこのようなワンペーパーが出来たのです。

栃木県内で平成20年にある事件で中学生が重篤な状態になってしまいました。

この被害者に対して,私たちはどんな支援ができるのだろうかということで,県警支援室長が関係機関の担当者を招集し検討会を開催しました。宇都宮市の中央警察署で,警察,県,宇都宮市,宇都宮税務署,被害者支援センターとちぎ,宇都宮市教育委員会,栃木県中央児童相談所が集まり,この被害者に対して,それぞれの機関ではどのような支援ができるか,一度職場に持ち帰って検討しましょうということになり持ち帰り検討しました。その後,再度検討会を開催したところ,各関係機関では御覧のような支援ができると示されました。

警察では,給付金制度の申請ができますよ,診断書の公費の支給がありますよ,マスコミ対応ができますと示されました。税務署の方は,所得税の確定申告や医療費控除ができます。被害者支援センターでは,直接的支援,無料弁護士相談,無料カウンセリングが受けられますと示しました。皆さん方に見ていただきたい機関は宇都宮市役所です。この犯罪被害者の場合に使える制度です。

これだけ多くの使える制度があるにもかかわらず,私たち当センターでは全くと言って良いほど分かりませんでした。このように使える制度があることは,被害者には全く分からないのです。また,犯罪被害者が使える制度を調べるということは大変な作業ですし,これだけ明確にはなりません。ほとんどの犯罪被害者の方は,使えずに諦めているか,制度があることさえ分からない状態だと思います。

それから,これを渡しただけでは,被害者はどこの窓口に行って良いのか分からないのです。私のようにたらい回しに遭ってとても大変な思いをしてしまう方もいると思います。そこで,担当窓口の方が必要な窓口に一緒に付いて行ってくれたり,つらい話を代弁してくだされば犯罪被害者の負担はかなり軽減します。

これを被害者の方にお渡ししたところ,すぐに宇都宮の市役所に行って話を聞きたいという連絡が入りました。このときには,被害者支援センターとちぎから宇都宮市の担当である生活安心課の担当にお電話を掛けました。「今から犯罪被害者の方が窓口に行きますので,対応をよろしくお願いします,受け入れてください。」ということで連絡をしたところ,担当者が丁寧に対応してくださって,支援をしてくださいました。犯罪被害者の方からは,非常に助かりました,有難うございました,というお礼の言葉をいただきました。このようなことが行政でできる犯罪被害者支援になるのではないでしょうか。なかなか急には難しいと思いますけれども,徐々にでも一歩踏み込んだ支援の協力を期待したいと思います。

私も犯罪被害者となった時に,早いうちにこのようなワンペーパーをいただきたかったと思い,私の被害者としての経験を生かすことができました。是非御参考にしていただきたければ幸いに思います。

是非皆さん方には,ただ事件事故が自分の県にあった。かわいそうに。あの被害者どうなったのだろうかということではなくて,手を差し伸べられるところは手を差し伸べていただきたい。できることから協力いただきたい,そんなふうに私は被害者の立場からもお願いしたいですし,被害者支援者の立場,それから,全国被害者支援ネットワークの立場からもお願いします。繰り返しになりますが,犯罪被害者はその地域で生きていくわけですから,是非その辺を御協力いただければ幸いに思います。

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