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V 重点課題に係る具体的施策

第1 損害回復・経済的支援等への取組

〔犯罪被害者団体・犯罪被害者支援団体からの要望〕

犯罪被害者団体・犯罪被害者支援団体からは

① 犯罪被害給付制度の更なる拡充

② 損害賠償請求に伴うカウンセラー等に要する経費の公費負担

③ 地方公共団体における犯罪被害者等への給付・貸付制度の導入促進

④ 犯罪被害者等給付金を生活保護の収入認定から除外すること

等に関する要望が寄せられている。

〔今後講じていく施策〕

1 損害賠償の請求についての援助等(基本法第12条関係)

(1) 日本司法支援センターによる支援

ア 日本司法支援センターによる民事法律扶助制度の活用によって、弁護士費用及び損害賠償請求費用の負担軽減を図る。【法務省】

イ 日本司法支援センターにおいて、犯罪被害者等のために、その支援に精通した弁護士の紹介を行うとともに、犯罪被害者支援のための研修について、弁護士会や犯罪被害者支援団体等と連携するなどして、犯罪被害者等の支援に携わる弁護士によるサービスの質の向上を目指す。【法務省】(再掲:第4,1.(32)ア

(2) 日本司法支援センターによる支援の検討及び施策の実施

法務省及び日本司法支援センターにおいて、犯罪被害者等が提起する損害賠償請求訴訟等の準備及び追行の過程で、代理人である弁護士等がカウンセラー等を犯罪被害者等との打合せに同席させることに対して、同センターが支援を行うことについて検討を行い、2年以内を目途に結論を出し、必要な施策を実施する。【法務省】

(3) 損害賠償請求制度に関する情報提供の充実

損害賠償請求制度の概要その他犯罪被害者等の保護・支援のための制度について紹介した冊子・パンフレット等について、警察庁及び法務省において連携し、一層の内容の充実を図るとともに、十分に周知させる。【警察庁】【法務省】(再掲:第4,1.(27)

(4) 刑事和解等の制度の周知

法務省において、刑事和解、公判記録の閲覧・謄写、不起訴記録の弾力的開示等現行制度を周知徹底させる。【法務省】

(5) 保険金支払の適正化等

ア 財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構における調停、国土交通省による保険会社に対する立入検査、国土交通大臣による適正な支払を行うことの指示等により、自賠責保険金の支払の適正化を図る。【国土交通省】

イ 金融庁において、被害者に直接保険金等が支払われる場合も含め、契約に基づく保険金等の支払が適切に行われるように、「保険会社向けの総合的な監督指針」(平成17年8月12日策定)等に基づき、各保険会社における保険金等支払管理態勢について検証し、保険会社側に問題があると認められる業務・運営については、適切な対応を行う。【金融庁】

ウ 財団法人日弁連交通事故相談センターにおける弁護士による自賠責保険に係る自動車事故の損害賠償の支払に関する無料の法律相談・示談斡旋等により、適切な損害賠償が受けられるよう支援を行う。【国土交通省】

エ 国土交通省において、ひき逃げや無保険車等の事故による被害者に対しては、政府保障事業において、本来の加害者に代わって、直接その損害を填補することにより、適切な支援を行う。【国土交通省】

(6) 受刑者の作業報奨金を損害賠償に充当することを可能とする制度の十分な運用

法務省において、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(平成17年法律第50号)における受刑中の者が作業報奨金を犯罪被害者等に対する損害賠償に充当することを可能とする制度が十分に運用されるよう努める。【法務省】

(7) 暴力団犯罪による被害の回復の支援

暴力団犯罪の被害者については、警察において、都道府県暴力追放運動推進センターや各弁護士会の民事介入暴力対策委員会等とも連携しつつ、暴力団犯罪による被害の回復を支援する。【警察庁】

2 給付金の支給に係る制度の充実等(基本法第13条関係)

(1) 現行の犯罪被害給付制度の運用改善

警察において犯罪被害給付制度の周知徹底を図るほか、警察庁において、犯罪被害者等給付金の迅速な裁定が行われるよう都道府県警察を指導するとともに、早期の犯罪被害者等給付金の支給に努める。【警察庁】

(2) 犯罪被害給付制度の拡充及び新たな補償制度の創設に関する検討

犯罪被害給付制度の拡充及び犯罪被害者等に対する新たな補償制度の創設については、平成20年度に拡充した犯罪被害給付制度の運用状況等を踏まえて検討を行うため、推進会議の下に、有識者並びに内閣府、警察庁、法務省、厚生労働省及び国土交通省からなる検討のための会を設置し、必要な調査及び検討を行い、3年以内を目途に結論を出し、必要な施策を実施する。【内閣府】【警察庁】【法務省】【厚生労働省】【国土交通省】

(3) カウンセリング等心理療法の費用の公費負担についての検討

犯罪被害者等に対する臨床心理士等によるカウンセリング等心理療法の費用の公費負担については、推進会議の下に、有識者並びに内閣府、警察庁、法務省、文部科学省及び厚生労働省からなる検討のための会を設置し、必要な調査及び検討を行い、2年以内を目途に結論を出し、必要な施策を実施する。【内閣府】【警察庁】【法務省】【厚生労働省】【文部科学省】

(4) 地方公共団体による見舞金制度等の導入促進

内閣府において、地方公共団体に対し、犯罪被害者等に対する見舞金等の支給制度や生活資金等の貸付制度の導入について要請するとともに、これらの制度を導入している地方公共団体を犯罪被害者白書に掲載する。【内閣府】

(5) 生活保護制度における犯罪被害者等給付金の収入認定除外についての検討

厚生労働省において、犯罪被害者等給付金のうち、犯罪被害者等である生活保護受給者にとって収入として認定しない自立更生のための用途と考えられるものについて、地方公共団体の意見を踏まえ、必要な措置について検討し、1年以内を目途に結論を出す。【厚生労働省】

(6) 性犯罪被害者の医療費の負担軽減

警察庁において、性犯罪被害者の緊急避妊、人工妊娠中絶、初診料、診断書料、性感染症等の検査費用等の公費負担に要する経費を都道府県警察に対し補助するほか、緊急避妊等の公費負担の運用ができる限り全国的に同水準で行われ、性犯罪被害者の負担軽減に効果的なものになるよう、また、性犯罪被害に伴う精神疾患についても犯罪被害給付制度の対象となることの周知も含めて各種支援施策の効果的な広報に努めるよう、都道府県警察を指導する。【警察庁】

(7) 司法解剖後の遺体搬送費等に対する措置

犯罪被害給付制度とは別に、各都道府県警察において、司法解剖後の遺体搬送費及び遺体修復費を措置する制度を積極的に推進する。【警察庁】

(8) 医療保険の円滑な利用の確保

厚生労働省において、犯罪による被害を受けた被保険者が保険診療を求めた場合については、現行制度上加害者の署名が入った損害賠償誓約書等の有無にかかわらず保険給付が行われることになっている旨、保険者に周知する。また、医療機関に対して、犯罪による被害を受けた者であっても医療保険を利用することが可能であることや、誓約書等の提出がなくても保険者は保険給付を行う義務がある旨保険者あてに通知していることについて、地方厚生局を通じて周知する。【厚生労働省】

3 居住の安定(基本法第16条関係)

(1) 公営住宅への優先入居等

ア 国土交通省において、引き続き犯罪被害者等に対する公営住宅への優先入居等を実情に即し、更に推進する。【国土交通省】

イ 独立行政法人都市再生機構の機構賃貸住宅における犯罪被害者等の入居優遇措置については、公営住宅における犯罪被害者等の受入状況などを注視した上で、その必要性を含めて検討を行い、2年以内を目途に結論を出す。

なお、犯罪被害者等の住宅を確保するため、公営住宅の管理主体から、機構賃貸住宅の借上げ要請があった場合は、柔軟に対応する。【国土交通省】

ウ 国土交通省において、公営住宅への入居に関する犯罪被害者等への情報提供を警察庁及び法務省と十分連携して行う。【国土交通省】

(2) 被害直後及び中期的な居住場所の確保

ア 厚生労働省において、児童相談所及び婦人相談所による一時保護や婦人保護施設及び民間シェルター等への一時保護委託の実施について適正な運用に努める。【厚生労働省】(再掲:第2,2.(4)ア

イ 厚生労働省において、「子ども・子育てビジョン」(平成22年1月29日閣議決定)により、平成26年度までに、個別対応できる児童相談所一時保護所の環境改善を実施する。【厚生労働省】(再掲:第2,2.(4)イ

ウ 厚生労働省において、一時保護から地域における自立した生活へとつながるよう、婦人保護施設及び母子生活支援施設の機能強化を図ることなどにより、入所者に対する日常生活支援の充実に努める。【厚生労働省】

エ 警察庁において、自宅が犯罪行為の現場になり、自宅が破壊されるなど、居住が困難で、自ら居住する場所が確保できない場合などに利用できる緊急避難場所の確保に要する経費を都道府県警察に補助するほか、同制度が犯罪被害者等の負担軽減に効果的なものとなるよう、都道府県警察を指導する。【警察庁】

オ 犯罪被害者等に身近な公的機関である地方公共団体において、居住場所の確保や被害直後からの生活支援策に対する取組がなされるよう、内閣府において、地方公共団体に対して啓発・情報提供を行う。【内閣府】

4 雇用の安定(基本法第17条関係)

(1) 事業主等の理解の増進

厚生労働省において、犯罪被害者等に対する十分な理解に基づき、以下の施策を実施する。

ア 母子家庭の母等に対するトライアル雇用事業の適正な運用に努める。【厚生労働省】

イ 公共職業安定所における事業主に対する配置や労働条件等雇用管理全般に関するきめ細かな相談援助の適正な運用に努める。【厚生労働省】

ウ 公共職業安定所における求職者に対するきめ細かな就職支援の適正な実施に努める。【厚生労働省】

エ 公共職業安定所職員に対する研修において、犯罪被害者等への理解に資するテーマを取り上げる。【厚生労働省】

(2) 個別労働紛争解決制度の活用等

ア 厚生労働省において、犯罪被害者等に係る個別労働関係紛争の解決に当たって、個別労働紛争解決制度について周知を徹底させるとともに、その適正な運用に努める。【厚生労働省】

イ 厚生労働省において、犯罪被害者等が事業主との間で生じた労働問題に関し、情報の提供、相談等を行う公的相談窓口として、労働問題に関するあらゆる分野の相談に専門の相談員がワンストップで対応する総合労働相談コーナーについて周知徹底させるとともに、その積極的な活用を図る。【厚生労働省】

(3) 被害回復のための休暇制度の周知・啓発

被害回復のための休暇制度についていまだ十分な認知がなされていない状況にあることから、厚生労働省において、アンケートによる実態把握を行うとともに、リーフレット等により、経済団体や労働団体を始め事業主や被雇用者等に対して、犯罪被害者等の置かれている状況などについて周知・啓発を図る。【厚生労働省】

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