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3 保護、捜査、公判等の過程における配慮等(基本法第19条関係)

《基本計画において〔今後講じていく施策〕とされたもの》

(1) 職員等に対する研修の充実等

警察において、警察官の採用時や昇任時に、各階級の役割又は職に応じた犯罪被害者支援に関する必要な知識について教育しているほか、専門的知識を必要とする職務に従事する実務担当者に対して、犯罪被害者支援や被害者カウンセリング技術など、個別の犯罪被害者支援に関する教育、研修の機会を設けている。

また、都道府県警察において、犯罪被害者・遺族等による講演会の実施や犯罪被害者支援担当者による体験記の配布のほか、警察本部犯罪被害者支援担当課が各警察署に対して巡回指導などを行い、民間支援団体との連携要領や性犯罪被害者への支援要領をはじめ犯罪被害者等への適切な対応を確実にするための教育の充実を図るなど、職員の対応の改善を進めている。

法務省において、矯正施設・更生保護官署における研修の充実を図っている(P71(23)「矯正施設職員及び更生保護官署職員に対する研修等の充実」参照)。

法務省・検察庁において、各種研修や会議を通じるなどして、検察官が犯罪被害者等の心情などに理解を深めるとともに、市民感覚を失ったり独善に陥ることのないよう努めている。また、検察官に市民感覚を学ばせるため、犯罪被害者支援団体などの公益的活動を行う民間団体や民間企業に一定期間派遣する研修や、被害者支援員に対し、犯罪被害者等に関する諸問題についての講義などの研修を実施するなどして、職員の対応の向上に努めている。

また、検察官などの研修において、児童や女性の犯罪被害者等と接する上での留意点などを熟知した専門家を講師とする講義を実施し、児童や女性の犯罪被害者等への配慮に関する研修の充実に努めている。副検事を含む検察官などに対する研修では、交通事件の留意点などを熟知した専門家などによる講義を行うとともに、交通事件の被害者・被害者遺族の立場などへの理解を深めるための機会を設けるなど、交通事件をテーマとした講義科目を設け、交通事件に関する講義の充実を図っている。

厚生労働省において、看護教育の充実、民生委員に対する指導、公的シェルターにおける対応に関する研修などを行っている。

看護教育においては、今般、「看護教育の内容と方法に関する検討会」において、保健師及び助産師の基礎教育の内容の見直しを行い、卒業時の到達目標として性犯罪等の予防と被害相談者への対応と支援についての項目を設定し、強化を図ったところである。

また、犯罪被害者等への適切な対応を図るため、民生委員が相談援助活動を行う上で必要不可欠となる守秘義務の遵守等の知識と技術を修得するための研修を実施する都道府県などに対する支援を行っている。さらに、民生委員の全国組織である「全国民生委員児童委員連合会」では、民生委員に対する各種研修会で資料を配布するなど、広報と理解促進を行っている。

配偶者からの暴力被害者や人身取引の被害者等を保護する公的シェルターである、各都道府県に設置された婦人相談所において、適切な対応を確実にするための職員に関する研修を、毎年、厚生労働省の主催において行うとともに、各都道府県において実施する専門研修や啓発にかかる費用を補助している。

犯罪被害者等の治療、保護などを行う施設の職員などの研修の充実を図る方向での検討を実施している。

「PTSD 対策専門研修会」において、平成22年度より医師、コ・メディカルなどを対象に講義だけでなく、模擬患者等を用いた実際の対応法の提示等を適宜組み合わせた実践的内容とし、研修の充実を図っている。

平成17年度から、厚生労働科学研究で「犯罪被害者の精神健康の状況とその回復に関する研究」を3年計画で行っており、これらの研究を踏まえて研修内容の改善などを今後検討していく。

また、厚生労働省では、児童相談所職員などへの研修の支援を行っており、都道府県において、婦人相談所、婦人保護施設、母子生活支援施設、福祉事務所、民間団体などで配偶者からの暴力被害者などの支援を行う職員を対象に、専門研修を実施している。

(一部再掲:P6「検察官に対する児童又は女性の犯罪被害者等への配慮に関する研修の充実」「婦人保護施設職員等への研修取組促進」参照

(2) 女性警察官の配置等

P6「女性警察官の配置等」参照

(3) ビデオリンク等の措置の適切な運用

法務省において、犯罪被害者等の意見をより適切に裁判に反映させるための犯罪被害者等の意見陳述の制度や、証人の証言時の負担・不安を軽減するためのビデオリンクなどの制度の運用について、適切な対応が行われるよう、会議や研修などの様々な機会を通じて、検察の現場への周知徹底を図るとともに、施策の実施状況の把握に努めている。また、犯罪被害者等向けパンフレットにもこれらの制度の情報を掲載している。

平成23年1月から同年12月までの間に、証人尋問の際に付添いの措置が採られた証人の延べ数は136件、証人尋問の際に遮へいの措置が採られた証人の延べ数は1,317件、ビデオリンク方式による証人尋問が行われた証人の延べ数は242件であった*9

(4) 警察における犯罪被害者等のための施設の改善

警察において、犯罪被害者等が安心して事情聴取に応じられるようにするため、その心情に配意し、応接セットを備えたり、照明や内装を改善した部屋を利用できるようにするなどして、全国の全ての警察署に「被害者用事情聴取室」を整備している。

また、犯罪被害者等は、警察署や交番などに立ち入ること自体に抵抗を感じる場合があることから、機動的に犯罪被害者等の指定する場所に赴くことができ、犯罪被害者等のプライバシー保護などに配意しながら必要な事情聴取や実況見分などを行えるよう、移動式被害者用事情聴取室ともいえる「被害者支援用車両」を導入して、犯罪被害者等からの相談や届出の受理、事情聴取などに活用している。さらに、県施設、ホテル、大学などの警察施設以外の相談会場の借上げも行っている(警察施設外の相談会場借上げ(国庫補助金):23年度7百万円、24年度7百万円)。

被害者支援用車両内の様子
被害者支援用車両内の様子
犯罪被害者等専用の事情聴取室
犯罪被害者等専用の事情聴取室
提供:警察庁

(5) 検察庁における犯罪被害者等のための待合室の設置

法務省において、被疑者などの事件関係者と顔を合わせたくないという犯罪被害者等の心情への配慮と精神的負担の軽減のため、平成22年度に新営された検察庁4庁舎に被害者専用待合室を設置した。平成23年度中に建て替えが完了する見込みの検察庁4庁舎についても、被害者専用待合室を設置することとしており、それ以外の検察庁については、スペースの有無、設置場所などを勘案しつつ、今後も被害者専用待合室の設置について検討していく。

また、犯罪被害者等のための待合室には、犯罪被害者等の心情に配慮するとともに、精神的負担の軽減を図るための備品を順次整備している。

《基本計画には盛り込まれていないが、基本法・基本計画を踏まえ、実施しているもの》

(6) 交通事故捜査過程における被害者の負担軽減

警察において、軽傷交通事故に係る捜査書類の簡略化として、簡約特例書式を導入しているが、これを的確に運用して供述調書の作成時間などの短縮を図っている。

また、事情聴取などに係る拘束時間の軽減を図るため、交通事故自動記録装置*10、ドライブレコーダーや防犯ビデオ映像などの活用による科学的な捜査を実施している。

さらに、捜査過程における交通事故被害者等の二次的被害の防止・軽減を図るために、各都道府県警察本部の交通事故捜査担当課に設置した被害者連絡調整官が、各警察署で実施する被害者連絡について指導を行ったり、自ら被害者連絡を実施するなどして組織的な対応を図るとともに、交通事故捜査員に対して交通事故被害者等の心情に配意した適切な対応がなされるよう教育を強化している。

(7) 性犯罪捜査指導官等の設置

P6「性犯罪捜査指導官等の設置」参照

(8) 性犯罪捜査証拠採取セット・性犯罪被害者捜査用ダミー人形の整備

P7「性犯罪捜査証拠採取セット・性犯罪被害者捜査用ダミー人形の整備」参照

(9) 産婦人科医会とのネットワーク構築

P8「産婦人科医会とのネットワーク構築」参照

(10) 診断書料、検案書料、初診料の支給

警察において、身体犯被害者の刑事手続における負担の軽減のため、犯罪被害に係る診断書料、死体検案書料、初診料の費用を公費により負担している(身体犯被害者の刑事手続における負担の軽減に要する経費(国庫補助金):平成23年度36百万円、24年度38百万円)。

(11) 犯罪被害者支援活動用携帯電話の整備

警察において、事件発生直後から大きな精神的被害を受けている犯罪被害者等と支援を担当する警察職員とが円滑かつ緊急に連絡することができるよう、犯罪被害者支援活動用の携帯電話を活用している。

(12) 被害類型別教養ビデオの活用

警察庁において、犯罪被害者等の心情に十分に配意した警察活動の一層の徹底を図るため、職員教育用ビデオを制作して各都道府県警察に配布し、職員の被害者支援の教育に役立てている。

(13) 公判手続の優先傍聴

「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律」に基づき、犯罪被害者等が刑事事件の公判手続を優先的に傍聴できる制度が実施されており、同制度の適切な運用に努めている。

(14) 民事訴訟におけるビデオリンク等の措置の導入

平成19年6月20日に成立した「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律」により、「民事訴訟法」が一部改正され、民事訴訟において、犯罪被害者等を証人などとして尋問する場合に、付添い、遮へい、ビデオリンクの各措置をとることが認められた(平成20年4月1日施行)。

平成23年1月から12月までの民事訴訟における付添回数は23回、遮へい回数は145回、ビデオリンク回数は27回である*11

(15) 海上保安官に対する人権に関する研修の実施

海上保安庁において、基本的人権を尊重した適正な職務執行ができるようにするため、海上保安学校などにおいて、犯罪被害者等の人権に関する教育を行っている。

(16) 女性被害者への配慮

P7「女性被害者への配慮」参照


(*9) 最高裁判所事務総局の資料による。
(*10) 交通事故の衝突音、スリップ音等を感知し、事故の直前、瞬間、直後の状況を録画する装置
(*11) 最高裁判所事務総局の資料による。
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