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2 ワンストップ支援センター設置促進のための手引作成

(1) 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター開設・運営の手引

内閣府では、第2次基本計画を受けて、性犯罪被害者支援現場の一線で活躍されている医療関係者、支援者・当事者、弁護士などの有識者及び関係省庁の協力を得て、それぞれの地域で活用できる資源や実情に応じたワンストップ支援センターの設置促進を図るため、「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター開設・運営の手引~地域における性犯罪・性暴力被害者支援の一層の充実のために~」(以下「手引」という。)を作成し、配布することとした(内閣府ホームページ:http://www8.cao.go.jp/hanzai/kohyo/shien_tebiki/shien_tebiki.html)。

○ 手引の目的

手引は、ワンストップ支援センターの設置・運営主体となり得る地方公共団体や民間団体等に、複数のモデルを示し、開設・運営に役立つ情報やノウハウ等を提供することにより設置を促進することを目的としている。

また、協力の主体となり得る関係機関・団体等(地方公共団体、病院、民間団体、警察、弁護士、カウンセリング機関等)の間で、ワンストップ支援センターに係る共通の理解と認識を持ち、相互の連携協力の密度を上げることにより設置を促進することも目的としている。

ただし、現在、性犯罪・性暴力被害者の支援・診療等に当たっている支援者・医療従事者等には、引き続き、それぞれの地域における役割を担って貰う必要がある。

○ 手引の作成過程

手引の作成に当たっては、警察庁による性犯罪被害者対応拠点モデル事業の検証結果を参考とするとともに、手引の内容を被害者の視点に立ったものとするため、内閣府において、性犯罪被害者に対する聞き取り調査等、前述のような各種調査を実施し、検討を重ねた。

※ 作成に当たり、有識者及び関係省庁職員からなる非公開の手引作成委員会を設けて検討を行った。(性犯罪・性暴力被害に関わる内容を検討するものであったため、その性質に鑑み非公開とした。)

○ 手引の名称

手引の名称については、ある程度ワンストップ支援センターの支援対象範囲を明確にしつつ、警察で犯罪として扱われたもの以外は支援対象外であるなどと狭く受け取られることのないよう、「性犯罪・性暴力被害者」の言葉を用い、「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター開設・運営の手引」とした。

○ 手引において提示するワンストップ支援センター

ここでいうワンストップ支援センターとは、性犯罪・性暴力被害者に対して、被害直後からの総合的な支援(産婦人科医療、相談・カウンセリング等の心理的支援、捜査関連の支援、法律的支援等)を可能な限り1か所で提供(当該支援を行う関係機関・団体等に確実につなぐことを含む。)する支援施設のことである。このように総合的支援を可能な限り1か所で提供することにより、被害者の心身の負担軽減、健康回復、警察への届出促進、被害の潜在化防止を図ることを目的としている。

(2) ワンストップ支援センターの主な支援対象

言うまでもなく、性犯罪・性暴力被害者は、被害直後だけでなく、被害後相当期間が経過しても、なお、様々な困難や苦しみに直面する。しかしながら、被害直後に適切な支援を受けることができれば、それは、その後の回復に寄与するものと考えられる。

ワンストップ支援センターの主な支援対象については、被害後1~2週間程度のいわゆる急性期の強姦・強制わいせつ(未遂・致傷を含む)の被害者としている。警察への被害届の有無や性犯罪として扱われたかどうかに関わらず、被害が上記に該当すると思われる配偶者暴力や児童虐待の被害者も支援対象となる。また、被害者の年齢に関係なく、可能な限り子どもも主な支援対象とするのが適当であるとしている。

もとより、上記以外の被害者への支援を行わないというものではなく、こういった被害者には、相談に応じたり、必要な支援を提供できる関係機関・団体等に関する情報提供などの支援を行うこととなる。

(3) ワンストップ支援センターに求められる核となる機能

ワンストップ支援センターには様々な支援の提供が求められるが、その中でも、核となる機能としては、①相談・支援のコーディネートと②産婦人科医療がある。

相談及び支援のコーディネートは、電話・来所による相談に応じること、被害者の状態・状況・ニーズを把握し、必要な支援を行っている関係機関・団体等に確実につないで支援をコーディネートすることによる支援である。

産婦人科医療は、主に急性期の性犯罪・性暴力被害者に必要な産婦人科医療における救急医療、継続的な医療及び証拠採取等を提供することによる支援である。

(4) 3つの形態(モデル)~「病院拠点型」、「相談センター拠点型」、「相談センターを中心とした連携型」~

性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターについては、法令等で定義づけているもの又は実務的に定まった定義は見当たらない。内閣府では、それぞれの地域で活用できる資源・実情に応じたワンストップ支援センターの設置を促進し、性犯罪・性暴力被害者の一層の支援の充実を図るという観点から、複数のワンストップ支援センターの形態(モデル)を示すこととした。

被害者にワンストップで支援を行うためには、②の産婦人科医療を提供できる病院内に①の相談・支援のコーディネートの機能を担う相談センターを置く「病院拠点型」や、②の産婦人科医療を提供できる病院から近い場所に①の相談・支援のコーディネートの機能を担う相談センターを置き、この相談センターを拠点とする「相談センター拠点型」が望ましいといえることから、この2つの形態(モデル)を本手引で示している。

しかしながら、地域によっては、「病院拠点型」や「相談センター拠点型」における病院や相談センターを確保することが困難であることも考えられる。一方、地方公共団体や民間団体の中には、地域における性犯罪・性暴力被害者への支援を充実させるため、活用できる資源を使ってネットワークを構築し、被害者の立場に立った、できるだけ「ワンストップ」的な支援を提供できるような仕組みを作るべく、検討を進めているところがある。このような熱意と意欲のある動きがあることに照らすと、被害者への支援を「ワンストップ」で提供するという点では課題もあるものの、「相談センターを中心とした連携型」という形態(モデル)を考えることもできる。そこで、この形態(モデル)もワンストップ支援センターとして示している。ただし、名ばかりのワンストップ支援センターに陥ることのないよう、相談センターと協力病院が、相互にその役割や体制について十分に認識し、連携を図っていく必要があることも指摘している。

警察、精神科医・臨床心理士・カウンセラー、弁護士、児童相談所等は、ワンストップ支援センターが連携する必要のある関係機関・団体等として位置づけられ、ワンストップ支援センターにおいて、そのニーズに応じ、被害者を確実にこれらにつないでいくこととなる。

病院拠点型
相談センター拠点型
相談センターを中心とした連携型

(5) ワンストップ支援センターの開設・運営のための情報等

手引では、産婦人科を有する病院の確保の必要性、その課題や関係機関・団体等とのネットワーク構築の重要性、人員・体制、業務に必要な各種書類等の整備、研修の実施、支援者等のメンタルケアなど、ワンストップ支援センターの開設・運営に必要・参考となる情報を提示している。

また、手引では、現在、性犯罪・性暴力被害者の支援・診療等に当たっている支援者・医療従事者等に対し、引き続き、各地域において、それぞれの役割を担うとともに、ワンストップ支援センターの活動への協力を要請している。

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