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第2節 第2次犯罪被害者等基本計画の概要


コラム1:基本計画策定・推進専門委員等会議における第2次犯罪被害者等基本計画についての検討を終えて

○山上皓委員(認定特定非営利活動法人全国被害者支援ネットワーク理事長)
山上皓委員

議長の任は、私には少し重過ぎる任務ではありましたが、各委員の御協力があり、また、行政の方々も、前向きに取り組んでいただき、着実に成果は上がっているものと思っています。しかし、犯罪被害者等施策は着実に進んでいるのですが、それがどこまでかというと、まだ真に「個人としての尊厳にふさわしい処遇」を保障しているようなレベルではなくて、被害者の方たち、あるいは被害者支援に直接関わっている者たちから見ると、まだまだそこにその支援の温かい手が届いているという感じを持ちづらい状況があるというふうに思います。そこを常に点検して、被害者の視点、あるいは支援者の視点から見て、実効性のある施策としていく努力が求められていると思います。そして、そういうところをこの会議がチェックをする、そうした役割も果たしたのではないだろうかと思っております。

今後の重要な課題が2つ(犯罪被害給付制度の拡充及び新たな補償制度の創設、カウンセリング費用等心理療法の費用の公費負担)残されて、これから検討課題とされていきますけれども、いつも行政の側には大変高い壁があって、民間団体とか、あるいは被害者個人への国による財政的支援ということがなかなかスムーズにいきません。けれど、私は犯罪被害者に対する施策は犯罪者対策と同程度に、放置すれば国の基本を揺るがすようなものであるはずだと思っています。決まりを破って同じ社会の構成員を傷つけたときに、加害者を罰し、あるいは更生させられると同時に、被害者は当然社会が守らなければいけない、そのところを力点の置き方がまだ相当バランスを欠いていると感じます。そういう姿勢で、今後ともしっかりと被害者支援に前向きに取り組んでいただければと思います。


○大久保恵美子委員((社)被害者支援都民センター理事)
大久保恵美子委員

被害当事者といいますのは精神的に苦しく、地域でも孤立してしまうために、なかなか社会に発言することが難しい状況にあります。私は、被害者支援の現場にいるということで、その被害者が置かれる過酷な現状を関係者の皆様に少しはお伝えすることができまして、それが新たな制度の創設や充実等に少しでも役立ったのであれば、大変うれしく思います。

とはいいましても、犯罪被害者の目から見ますと、まだまだ検討課題、あるいは問題が山積していると思います。ただ、今後はこの2次計画を受けまして、被害者への新たな補償制度の創設ですとか、カウンセリング費用の公費負担、あるいは生活保護制度における犯罪被害者等給付金の収入認定除外におけること、また、刑事裁判の被害者参加制度利用者の旅費等の公費負担ですとか、国選弁護人制度における資力要件の緩和に関すること、あるいは仮釈放審理における意見陳述等に資する情報提供の拡大等々、その他たくさんのことが検討されることになっておりますので、今後はその経緯を強い関心を持って見守っていきたいと思っております。

そして、被害者が被害に遭っても、もう一度国や社会を信じて生きてみようと思えるように回復できる制度の創設とその充実を図っていただき、基本法の理念を生かしつつ、被害者が地域に住み続けることができるような社会づくりに力を尽くしていただきたいと願っております。


○久保潔委員(元読売新聞東京本社論説副委員長)
久保潔委員

第1次基本計画は膨大な課題を掲げたわけですが、概ね着実に前進していると感じております。同時に、今回の第2次基本計画の議論を通じて、やはり未解決といいますか、まだ積み残しの課題も相当あり、それが昨今の厳しい社会・経済環境の中でますます深刻化しているのではないか、ということを改めて感じました。

こうした未解決の課題を少しでも前進させるためには、行政的な支援を手厚くするというのは第一、当然のことですけれども、あわせて国民の理解を更に一層深めていく努力が必要ではないかと思います。行政だけで、すべての問題に対応するには限界があり、どうしても犯罪被害者等に最も身近な地域社会の理解と支援が欠かせません。

そういう観点から、この5年間を振り返りますと、国民の理解を背景に、地域の住民とか自治体とか、被害者の日常に接する人たちや機関を巻き込みながら、地域の連携と支援体制を構築していく、そういうダイナミックな努力がやや足りなかったのではないかという感じがしております。こういった分野が今後の課題ではないでしょうか。


○小西聖子委員(武蔵野大学人間関係学部教授)
小西聖子委員

本計画の検討では、性犯罪の被害者に対する支援対応が、男女共同参画に関する施策と犯罪被害者に関する施策のはざまに取り残されることがないようにすること、犯罪被害者からのニーズの高い「カウンセリング」の無料化の制度を実現することの二つに、私は最も関心を持ってきました。さまざまな困難もありましたが、関係者のご努力により、新たな検討の会を作るという一歩が踏み出せたことは意義あることだと思います。犯罪被害者等支援は司法の分野においては大きな前進を見ましたが、経済的支援、精神的支援においてはまだ多くの課題を積み残しています。これらの領域を進めていくには、社会全体のこの問題に対する理解の深まり、具体的な実践の拡大が必要でしょう。一歩でも前に進めていきたいと思います。


○瀬川晃委員(同志社大学法学部教授)
瀬川晃委員

私は、パブリックコメントをずっと拝見していまして、いろいろなことを考えさせられ、大変参考になりました。被害者支援の問題に関心を持っている方の問題意識は非常に高く鋭い指摘があって非常に学ばせていただきました。一方では、国民全体の理解・関心という点では、まだまだであるような気がいたします。それゆえ、今後、この第2次基本計画について、推進していく上ではいろいろな障害が予想されるのではないでしょうか。

もう一つは、いろいろな施策をやる上では、財源をどこに求めるのかという議論を常にしておかないと、アイデアがまとまっても、何もできないということになりますので、今後も予算、財源は大きな課題だと思います。

また、第2次基本計画を見ましても、言葉の壁というのを非常に感じました。それは重要なテーマについて、結局これから「適切な対応をする」あるいは「十分な対応をする」という趣旨の言葉で終わっているところがあるからです。実際の問題解決はこれから今後の検討によるところが大きいと思われます。これからは、より難しい課題が残っていますので、実質的な議論をどうするかということは非常に重要ではないかと思っています。


○中島聡美委員((独)国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所成人精神保健研究部犯罪被害者等支援研究室長)
中島聡美委員

私は、初回の基本計画の策定のときから関わっておりますが、その当時と比べますと、今回のパブリックコメントに多くの意見がよせられたことなどに示されるように、犯罪被害者支援に対する国民の関心も高くなっていると思います。また、各学会や支援団体からもそれぞれの経験を踏まえた御意見等を出していただいたことから、新たな計画案が、性暴力被害者への支援など第1次計画では十分に取り組めなかった問題やより被害者の現状に即した形で推進されたことは本当によかったと感じております。

しかし、被害者の心のケアの問題は、専門家の養成やカウンセリング費用の充実等、まだ不十分なことが多く、精神科医という立場から研究や支援を進めていけたらと思っております。


○松坂英明委員(弁護士)
松坂英明委員

この専門委員等会議の議論の結果、まだ、確かに道半ばではありますが、犯罪被害者等の施策の基本計画が充実したものにより近づいたものと評価したいと思います。

今後、ますます日本国の品格を高めるためには、犯罪被害者の施策の充実は大変重要でありますので、なお、この基本計画が充実した施策として推進されることを祈念いたしております。


○松村恒夫委員(全国犯罪被害者の会(あすの会)代表幹事代行)
松村恒夫委員

犯罪被害者等施策というものがいろいろあることは頭では分かっていたのですが、具体的にこんなにいっぱいあるのかということを改めて確認させられました。

その中でも、特に、この会議の中で取り上げていただくことをご了承いただいた経済補償の問題については、犯罪被害者の本当に困っている人が救済される制度に是非していただきたいと思います。そのためには国民の理解は必要なのですが、本当に犯罪被害者週間という1週間の期間でいいのかどうか、月間ぐらいにしていただかないと間に合わないのではないかという気もします。国民から理解していただかないと財源もでてきませんので、広く国民の理解を求めて、今後なお一層努力する必要があると思います。

いずれにしましても、今後の第2次基本計画において、まだまだ積み残した問題は多いのですが、一つ一つ解決していくことが肝心だと思います。


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