<< 前頁   [目次]   次頁 >>

コラム3:民間団体の取組


民間団体の取組<1>

民間団体による支援活動は、犯罪被害者等の様々なニーズに対し、きめ細やかで迅速な対応を可能にするものであり、関係機関・団体との連携による途切れない支援を行う上で不可欠です。現在、我が国では、犯罪被害者支援の分野において、多種多様な民間団体が活動をしています。

ここでは、医療機関等と連携して性犯罪被害者の支援に取り組んでいる「性暴力救援センター・大阪(SACHICO)」を紹介します。

1 概要

SACHICOは、大阪府松原市に所在する阪南中央病院に勤務する女性産婦人科医師が、患者の中に性犯罪被害者がいたことなどから性犯罪被害者支援について関心を持ち、同病院や女性団体等に協力を要請して、平成22年4月に同病院内に開設したワンストップ支援センターです。

SACHICOとは、Sexual Assault Crisis Healing Intervention Center Osaka(性暴力危機治療的介入センター大阪)の頭文字をとったもので、性犯罪被害に対する直後からの総合的な支援を目指しています。性犯罪被害者(おおむね被害に遭って7日以内の人を中心に)を対象として、24時間ホットライン(072―330―0799)による相談対応、来所者に対する相談対応、外傷の治療、性感染症等の検査、緊急避妊薬の処方、法医学的な証拠の採取・保存、弁護士・カウンセラー等の紹介などを行っています。「同意のない・対等でない、強要された性的行為はすべて性暴力」という視点で、強姦や強制わいせつ、性的DV 被害や子どもへの性的虐待などに広く対応しています。

2 活動状況

SACHICOの一室に24時間ホットラインを置き、支援員が常駐して相談対応に当たっています。また、一般の外来とは区別して診療を行うことができるよう、専用の待合室、面談室、診察室があり、24時間、産婦人科医師(原則として女性医師)が対応することができます。

被害者の了解があれば、警察への通報を行っており、その場合は、警察官がSACHICOに来て、被害者に事情聴取をします。また、警察が診察や支援が必要な被害者をSACHICO に連れてくることもあります。

法律相談を希望する被害者の方のため、協力弁護士23名が相談対応のための待機シフトを組んでおり、スムーズに法律相談につなげることができます。

SACHICOには、開設から平成23年1月までの10か月で、電話相談1,164件(うち無言が196件)が寄せられ、被害のため新しく来所した人は計107人でした。

このようなSACHICOの取組は、相談や届出をためらいがちな性犯罪被害者への効果的な支援策として、注目を集めています。

阪南中央病院
阪南中央病院
SACHICO 出入口付近の様子
SACHICO 出入口付近の様子
被害者専用待合室
被害者専用待合室
電話相談を受ける支援員
電話相談を受ける支援員(支援員は研修を受けたボランティア)

民間団体の取組<2>

ここでは、一時保護所を退所したDV 被害者への支援に、長崎県と連携して取り組んでいる「NPO 法人DV 防止ながさき」の記事を紹介します(※)

※内閣府男女共同参画局「共同参画」平成22年11月号より引用

自立支援をいっそう進めるために~DV 防止ながさきの活動と官民連携事業について~-民間ならではの柔軟さを生かして、地域で生きていくための支援を模索中-

DV 防止ながさきは、平成14年の団体設立以来、電話相談や面接相談、啓発講座、若い世代への予防教育、そして当事者の方たちの居場所づくりなどといった活動を、いわばボランティア活動の範囲で続けてきていましたが、当団体でシェルターを所有しているわけではありません。行政との連携にも特にルールはなく、相談窓口の紹介や、一時保護の必要があれば、県の配偶者暴力相談支援センターを紹介してつなぐという程度でした。退所者の方が、たまたまDV 防止ながさきへ個人的に依頼されることがあれば、支援をするという関わりが多かったと思います。

しかし、多くの被害者の方が共通して言われる「一時保護所を出て最初の一週間がもうとても不安で…」という言葉がいつも気になっており、なんとか地域での生活のスタートの時点から有効な支援ができれば、その後の生活がかなりスムーズになるのではないかという思いが強くありました。

平成22年2月から、長崎県の委託事業として地域での生活の支援ができるようになった今は、ご本人が希望さえすれば、その意志に基づいて支援ができるし、何よりも行政の支援の延長線上に民間の支援が位置づけられることにより、切れ目のない支援の実現が可能で、利用者の安心感も各段に高まったと思います。

具体的な支援の流れは、支援を希望する被害者の方と担当者(支援者)が話し合いをしてどのような支援を希望しているのかを確認し、地域で生活を始めると同時にニーズに応じた内容の活動をスタートさせるという仕組みとなっています。

被害者の方々は、暴力という大変過酷な経験に加えて、いきなり経済上の問題、子育ての不安、調停や離婚に向けての不安、見知らぬ土地での孤立感など、予想もしなかった問題に次々と直面し、それを解決しながら生活していかねばなりません。それぞれの状況は千差万別ですが、問題が起きたときに、とりあえずいつでも相談できる支援者の存在があるだけでも、本人の心身の安定につながることを痛感しています。

これまで多くの方々の支援申込みを受けてきていますが、本当に様々な方がいらっしゃるので、支援メニューは私たちが当初想定したよりも、どんどん幅が広くなっていて支援者も忙しく走り回ることが増えています。

支援活動の一部を紹介すると、

・離婚や調停などに向けての個別の対応の相談、同行

・当事者同士が安心して話せる集いの場を作り、孤立しないような環境を作ること

・生活保護、年金、介護保険など役所の窓口に必要に応じて同行、場合によっては役所での交渉に助言

・入退院の手伝い、通院補助

・夫や元夫の行為への恐怖、不安に対するサポート

・就労情報提供、ハローワークへの同行、キャリアカウンセリング

などが主な活動となっています。

このような支援には民間団体ならではの柔軟な対応が必要で、行政と民間の役割分担と連携によって、より被害者の方々に有効な支援ができるのではないかと思っています。

民間団体の取組<3>

民間被害者支援団体による東日本大震災への対応

平成23年3月11日に発生した東日本大震災では、多くの方が家族、家、仕事等を失いました。

被災地では、行政機関だけではなく、民間団体の方々なども被災者への支援などを行っています。

ここでは、「(社)みやぎ被害者支援センター」が行っている被災者支援活動を紹介します。(社)みやぎ被害者支援センターは、宮城県公安委員会から指定を受けた犯罪被害者等早期援助団体で、犯罪被害者等に対する援助の必要性に関する広報啓発活動や犯罪被害等に関する相談・カウンセリング等を行っている団体です。

東日本大震災発生後、被害者支援活動に関する経験を活かし、被災した遺族の心のケアにつながる遺族支援活動を行っています。

具体的には、同センターでは、東日本大震災発生直後から、県災害対策本部、県警察及び行政機関との連携を密にし1日3名体制で、遺体引渡しの際の遺族への付添い、遺体安置場所、控室等における声掛けや遺族の話の傾聴などを行っています。

例えば、亡くなった家族の遺影用写真がないとの遺族の相談に応じて、通学していた大学に連絡して写真の提供を受けられるように手配をしたりすることもあります。

また、受付で順番待ち、手続待ち等をしている遺族等と一緒に列に並び、家族の亡くなった状況やその人となりについて遺族等が話すのをじっくり聴いて、言葉を添えるなど、遺族の心情に配意したサポートを行っています。

センター支援員による打合わせ状況
センター支援員による打合わせ状況

<< 前頁   [目次]   次頁 >>