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4.3つの「検討会」の最終取りまとめの要旨

基本計画の中の一部の施策に関しては、更なる検討を要することから、別途、有識者と関係府省幹部職員から構成された検討会を設置して、そこで議論が重ねられることとなった。

その結果、平成18年4月に「経済的支援に関する検討会」、「支援のための連携に関する検討会」、「民間団体に対する援助に関する検討会」の3つの検討会が設置された。

各検討会においては、平成19年5月までに中間報告を取りまとめ、それについて意見募集が行われた。その結果を踏まえて、同年9月までに各検討会において最終取りまとめ案が作成され、同年11月6日付で、いずれの検討会の案も推進会議で決定された。


3つの検討会の最終とりまとめの要旨は以下のとおり。

〈経済的支援に関する検討会〉

○ 犯罪被害者等に対する給付の抜本的な拡充など

・ 犯罪被害者等給付金の最高額を自賠責並の金額に近づけ、最低額についても引き上げる方向

深刻な状況に置かれた犯罪被害者等に重点を置いて支援を行う観点から、重度後遺障害者を対象とする障害給付金について、重点的な引き上げを行うべきである。

また、被扶養家族である遺族に対する遺族給付金についても、その経済的打撃が大きいことから、引き上げを図るべきである。

これらの引き上げの水準については、自動車損害賠償保障法における政府保障事業において、ひき逃げ・無保険車による交通事犯被害者に対する給付が、自動車損害賠償責任保険とほぼ同水準の給付で行われていることを参考とし、その最高額について、自動車損害賠償責任保険並の金額に近づけるよう努め、最低額についても引き上げを図るべきである。

・ 特に平均収入が低い若年層の重度後遺障害者や扶養の負担の多い遺族に配慮

重度後遺障害者に対する障害給付金については、平均収入が低い若年層ほど障害の影響が長期にわたることから、特に配慮が必要である。

また、被扶養家族である遺族に対する遺族給付金についても、特に扶養家族の数など負担の大きさにも十分な配慮を加えるべきである。

・ 重傷病給付金対象者に対する休業給付の検討

休業を余儀なくされた重傷病給付金の対象者に対する休業給付を検討すべきである。

・ 財源は一般財源

罰金の特定財源化、有罪判決を受けた者からの徴収制度の創設は困難であり、社会の連帯共助の精神にのっとり、一般財源からの給付を行うことを原則とすべきである。

・ やむを得ない事情で申請期間内に申請できなかった場合に特例的な申請を認める制度の検討

現行の犯罪被害給付制度の申請期間について、やむを得ない事情で申請ができなかった場合に特例的に申請を認めることができるよう、制度の見直しを検討すべきである。

○ 民間浄財の基金による支援

公的給付の拡充や既存の社会保障・福祉制度では救済が困難な場合であって、何らかの救済の手を差し伸べないと基本法の趣旨を全うできないような犯罪被害者等に対し、民間浄財からなる基金において、給付を行うような仕組みを構築すべきである。

○ 深刻な精神的被害を受けた犯罪被害者等に対するカウンセリングについての配慮など

PTSDなどの精神的被害に有効とされる療法の診療報酬上の評価について、必要に応じて措置を講ずるべきである。また、民間被害者支援団体などにおけるカウンセリング・相談の充実のため、都道府県における予算措置がなされるよう、国において、啓発・情報提供などの取組を行うべきである。

○ テロ被害について政府による迅速な対応

国家、社会に対するテロ行為により無差別大量の死傷者が生じ、特別な対応が必要な場合には、国は、迅速に、特別措置法の制定や基金の設置などにより、事案に即した適切な救済を図る措置を明確に示すべきである。

○ 刑事裁判への参加制度導入に伴う公費による弁護士選任について

「犯罪被害者等が刑事裁判に参加する制度」などを導入する法律の成立に伴う公費による弁護士選任について、できるだけ早期の制度導入に向けた検討を行う。

〈支援のための連携に関する検討会〉

○ 関係機関・団体の連携ネットワークの強化

・ 「犯罪被害者支援ハンドブック(仮称)」の作成、備付け

支援のために必要な関係機関・団体を網羅した総合的な支援ネットワークである被害者支援連絡協議会や被害者支援地域ネットワークなどの既存の連携ネットワークにおいて、関係機関・団体相互の役割分担や連携方法などについての認識や支援・連携のために必要な知識を共有し、関係機関・団体全般の連携密度の底上げを図るため、基礎的自治体レベル・都道府県レベルの連携ネットワークにおいて、「犯罪被害者支援ハンドブック(仮称)」を作成し、備付け、その活用を図る必要がある。

・ 国によるハンドブック・モデル案の作成

国において、支援に携わる者の心構え・留意事項、犯罪被害者等に提供すべき情報、関係機関・団体へ伝達すべき支援に関する情報、関係機関・団体の支援関連業務の内容や連絡先一覧などを盛り込んだ、ハンドブック・モデル案を作成するなど、各連携ネットワークにおけるハンドブック作成に必要な援助を行う。

・ 「犯罪等被害申告票(仮称)」の作成

犯罪被害者等の負担を少しでも軽減し、スムーズな支援に資するため、犯罪被害者等自身が、被害の概要や支援に対する要望などを簡易に記載できる「犯罪等被害申告票(仮称)」を作成する。

○ 民間の団体で支援活動を行う者の養成・研修

・ 全国被害者支援ネットワークによる研修カリキュラムの作成・認定制度の実施

全国の民間の団体で支援活動を行う者の一定のレベル以上の支援の内容・質を確保するため、全国被害者支援ネットワークに対して、加盟団体が統一的に用いることのできるような研修カリキュラムの作成、加盟団体が実施する研修への支援、研修修了者に対して証明書を発行するといった認定制度の導入を要請する。

・ 国による研修カリキュラム・モデル案の作成

国において、支援の現状を踏まえ、研修カリキュラムのモデル案を、先進的な民間支援団体における取組も参考としながら、初級、中級、上級、コーディネーターといったレベル別に作成する。

・ 「コーディネーター」の育成

上記研修カリキュラムを用いた研修などの着実な実施を通じて、すでに支援に携わっている者が、支援全般をマネジメントするコーディネーターとしての能力を身につけることができるよう、育成していくことが重要である。

・ 民間団体において支援活動を行う者の留意事項などを記載したいわゆる「倫理綱領」の作成

民間の支援団体において、支援の実情に応じて、全国被害者支援ネットワークが制定した「犯罪被害者への支援活動を行なう者の倫理綱領」を参考に、支援に携わる者が満たすべき倫理綱領を作成することが望ましい。

〈民間団体への援助に関する検討会〉

1 民間団体への公的な財政的援助を検討する際の基本的考え方

○ 援助の対象となる事務の範囲

民間団体への公的な財政的援助を拡充させる必要性が高い一方、民間団体は関係機関と連携しながら独立した組織として自主的に活動していること、行政改革の流れの中で補助金・委託費などの見直しが行われている状況などにかんがみると、事業費の援助等、事業を適切に推進できるような援助について検討することが適当であると考えられる。

事務の範囲については、犯罪被害者等に直接支援サービスを提供する活動(電話・面接相談、カウンセリング、付添い、自助グループ支援、研修など)を中心に援助を行うことが適当であると考えられる。

○ 援助の対象となる団体の範囲

援助対象となる事業の性格・内容などに応じ、当該事業を適切かつ確実に実施するために必要な一定の体制がとられている必要がある。

2 援助拡充に向けた検討の方向性

○ 犯罪被害者等早期援助団体とその指定を目指す団体への援助の拡充など

・ 都道府県警察費補助金の活用をはじめとした財政的援助の充実

国からの補助金による財政的援助の仕組みはあるものの、地方公共団体において十分な予算措置がなされていないことから、下記「その他の援助経路の可能性・方策」に後述するような取組により、地方公共団体における財政的援助の充実が図られるよう努めるべきである。

・ 犯罪被害者等早期援助団体を目指す団体の援助の拡充

付添いなどのアウトリーチ活動や自助グループ支援に要する経費を中心に、各地域の民間団体の現状などを踏まえ、財政的援助の充実が図られることが望まれる。

・ 全国的な傘団体(全国被害者支援ネットワーク)への援助

国による財政的援助が既に行われているが、傘団体が行う事業の重要性にかんがみ、国において財政的援助の充実に努めるべきである。また、「支援のための連携に関する検討会」における検討結果を踏まえ、研修カリキュラム・モデル案を作成・周知する際に傘団体と連携協力を図るべきである。

○ その他の援助経路の可能性・方策

被害直後から中長期にわたり民間団体が地域の関係機関と連携しながら活動を展開していくためには、地方公共団体全体での取組が重要である。

国において、民間団体の支援活動の意義についての情報提供、啓発などを通じ、地方公共団体の理解を促進するとともに、民間団体への援助の充実について要請を行うべきである。その際、国においてモデル事業を実施することも有効な方策の一つと考えられる。

また、今後の地方公共団体の取組の全国的な進捗状況などを踏まえ、地方財政措置など所要の財政上の措置を講ずることを検討すべきである。

○ 民間資金の活用

民間団体の自主的な活動が活発になるためには、会費や寄付、助成など民間資金の活用も含め様々な主体がその活動を支えることが重要である。こうした動きを加速するため、国においては、関係方面と連携し犯罪被害者等支援を促進する気運をより一層醸成するための国民運動を展開することを検討すべきである。地方公共団体においては、各地域社会における気運醸成のための取組を進めることが望まれる。


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