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犯罪被害者等の権利利益の保護が図られる社会の実現のためには、犯罪被害者等にとって身近な公的機関である地方公共団体の取組が重要となる。本特集では、地方公共団体に求められる役割を明らかにし、地方公共団体における取組の現状などを紹介する。


第1節 地方公共団体に求められる役割

犯罪被害者等に対する支援は、平成16年12月に成立した犯罪被害者等基本法(以下「基本法」という。)制定以前は、各都道府県警察を中心に進められてきた。しかしながら犯罪被害者等の置かれた状況は様々であり、必要とする支援も刑事手続に関するものだけでなく、経済支援や医療・福祉、住宅、雇用など生活全般にわたっており、これら多岐にわたる支援を被害直後から中長期にわたって途切れなく行うには、警察における取組のみでは限界がある。そこで地方公共団体においても、国と同様、犯罪被害者等施策の総合的な推進が求められることとなった。

基本法では、地方公共団体に対し、国との適切な役割分担を踏まえ、地域の状況に応じた施策を自ら策定・実施する責務を課しておりその内容は、国と同様、相談・情報提供、給付金の支給、保健医療・福祉サービスの提供、雇用・住宅の確保など多岐にわたるものとしている。

▼基本法の概要
基本法の概要の図
▼地方公共団体の役割(基本法に定めるもの)
地方公共団体の役割(基本法に定めるもの)の図

そして、基本法第8条は、政府において、総合的かつ長期的に講ずべき犯罪被害者等のための施策の大綱など(犯罪被害者等基本計画。以下「基本計画」という。)を定めることとし、これに基づき平成17年12月27日、基本計画が閣議決定された。

▼基本計画の概要
基本計画の概要の図

この基本計画策定に当たっては、犯罪被害者等から、「被害者にとっては、刑事手続に関するものだけではなく、転居、金銭問題、雇用等に関する問題も含めて相談できる又は相談先を教示している、総合的な窓口が警察以外にも必要」「生活や医療、住居の問題に困ったときに、それぞれの担当課が異なり、説明することが苦痛なので、相談窓口を一本化してほしい。」といった要望がなされたことから、基本計画では、内閣府において、首長部局に対し、施策を総合的に推進するための「施策担当窓口部局」の確定及び犯罪被害者等からの相談や問い合わせに対応する「総合的な対応窓口」の設置を要請することとされた。

▼犯罪被害者等基本計画における地方公共団体等の役割に関係する事項
犯罪被害者等基本計画における地方公共団体等の役割に関係する事項の図

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