犯罪被害者等が被害から回復し再び平穏な生活を営めるようになるためには、地域の関係機関・団体が連携協力を進めながら総合的な支援体制を築くことが重要であるとともに、地域社会全体の理解や配慮、協力が必要になります。
平成20年度に内閣府において実施したモデル事業では、地方公共団体や地域の関係機関団体と内閣府との連携協力の下、被害者に対する総合的な相談・情報提供や地域における被害者支援の気運の醸成に関する取組などが地方公共団体が提案した企画によって実施されました。
内閣府においては、全国的な被害者支援の充実を図るために、各地方公共団体が実施したモデル事業で得られたノウハウなどを広く普及啓発することとしています。
ここでは、実施されたモデル事業をいくつか紹介していきます。
1 「大学生の社会参加活動促進事業」(北海道)
大学などとの連携により、犯罪被害の実態、生命の大切さ、被害者支援の必要性などの理解を深めていただくため、被害者支援要員や被害者等による講演・講義を実施するとともに、大学生の積極的な被害者支援のための社会参加を促進することを目的として実施しました。
地下鉄サリン事件被害者の会代表世話人である高橋シズヱさんのほか、支援従事者、警察の支援担当者を講師に招き、北海道内の4大学で講演を行い、講演終了後には、民間犯罪被害者支援団体が主催する街頭キャンペーンにおいて、希望する学生が、啓発資材を作成するとともに、街頭キャンペーンに参加しました。
2 「いのちの事業」(茨城県)
高校生を対象に、犯罪の被害に遭われた方のご家族による体験談などを通じて、いのちの大切さや思いやりの心、規範意識を養うとともに、被害者の置かれた状況や被害者への支援に対する理解が広がることを目的として実施しました。
県内2つの高校で、内閣府が作成した青少年向け啓発用DVDを上映し、被害者家族である岩谷利男氏、被害者遺族である山内久子氏にご講演いただきました。また、会場では、行政、民間支援団体の取組を紹介するパネルなどを設置し、パンフレットを配布しました。
3 「地域における被害者支援のためのトップセミナー事業」(熊本県)
犯罪被害者等が、犯罪等により受けた被害から立ち直り、再び地域において平穏に過ごせるようになるためには、国だけでなく地方公共団体においても地域の実情に応じた必要な施策を実施することが重要です。
そこで、地方公共団体においても、犯罪被害者等の置かれた現状や支援の必要性についての意識醸成が図られ、もって犯罪被害者等に対する支援施策が推進されることを目的として、熊本県下の市町村の首長を対象としたトップセミナーを開催し、全国犯罪被害者の会(あすの会)理事の宮園誠也氏にご講演いただきました。
また、犯罪被害者等支援に携わる実務担当者の資質向上を目的とした研修会を開催し、被害者支援都民センターの大久保恵美子氏と国立精神・神経センター精神保健研究所の中島聡美氏にご講演いただきました。
参加者からは「犯罪被害者の声を聞くことで、支援の必要性を実感できた」、「大変分かりやすい講演で、業務の参考とすることができた」などの感想が寄せられました。
4 「民間団体人材育成事業」(北海道)
北海道はその広域性から、地域格差のない被害者支援活動が求められています。地域における被害者相談活動の底上げを図り、もって地域格差のない犯罪被害者支援活動を推進するために、当該被害者相談室の相談員に対してカウンセリング研修を実施し、人材の育成を図りました。
道内の民間被害者相談室が存在する、苫小牧市・函館市・旭川市・釧路市・北見市の5カ所で、豊富な実務経験を持つ支援従事者や、精神保健の専門家を招き講演会を行ったほか、ロールプレイを中心とした研修会を開催しました。