第4節 支援等のための体制整備への取組


COLUMN 6

途切れることのない支援のために
~被害者支援の関係機関・団体の連携~

1 連携調査の実施
(1) 調査の概要

  犯罪被害者等のための施策は、犯罪被害者等が直面するその時々の困難を打開することにだけ注目するのではなく、犯罪被害者等が再び平穏な生活を営むことができるようになることに視点を置いて行うべきものである。そのため、制度や担当機関などが変わっても連続性をもって当該犯罪被害者等に対する支援が行われるよう、また、犯罪被害者等の誰もが、必要な時に必要な場所で適切な支援を受けられるよう、途切れることのない支援を実施していかなければならない。
  内閣府においては、途切れることのない支援の実現を目指し、まずは、犯罪被害者等の支援に携わる様々な関係機関・団体間の連携の現状を把握するとともに、今後の連携の強化・拡充に向け課題を抽出するべく、各都道府県に所在する、公的・民間の犯罪被害者等のための支援に携わる、7,450機関・団体を対象として「犯罪被害者等の支援に携わる関係機関・団体の連携に関する現状把握調査」 *1を実施した。

(*1)平成18年9月から同年10月にかけ、調査票の配布、回収を行った。有効回答数は、3,612件であった。

(2) 主な調査結果
ア.連携の実績
○ 他機関・団体から犯罪被害者等が紹介されたことのある機関・団体については、高いものでも、「警察・海上保安庁からの紹介」、「地方公共団体からの紹介」で、約3割であり、それ以外の紹介されたことのある機関・団体については、約2割以下にすぎない。この傾向は、犯罪被害者等を紹介したことのある機関・団体についても同様であり、支援の際に、関係機関・団体の間で犯罪被害者等の紹介をする事例の少なさがうかがわれる。

▼関係機関・団体からの紹介
関係機関・団体からの紹介
CSVファイル

▼関係機関・団体への紹介
関係機関・団体への紹介
CSVファイル

イ.連携ネットワークの現状、改善策
○ 犯罪被害者等の支援のための関係機関・団体のネットワークや連絡会議などへの参画状況については、参画しているとする関係機関・団体が半数近くある(44.9%)。しかしながら、自由回答をみると、ネットワークに参画していても、他機関の支援内容が把握できておらず、具体的な活動には至っていない、といった意見が挙げられており、ネットワークが形骸化している様子がうかがわれる。

   (自由回答より)
    ・ 会議が年数回あるだけで具体的な活動はない
    ・ 平素の連絡が不十分
    ・ 会議があっても報告会となっていて、連携のあり方などの協議はなされない
    ・ 他機関の具体的役割を把握できていない
    ・ 関係機関の支援内容PRが不十分

○ 途切れることのない支援を行うための連携のあり方については、「機関・団体の役割分担を明確にし相談内容の一覧を作成し周知徹底」が最も高く、次いで「応対や機関・団体の支援内容・連絡先等をまとめたマニュアル作成」が高い。
  「他機関・団体の支援内容を把握できていない」という現状を踏まえると、有機的な連携を図るためには、まずは、関係機関・団体相互の役割や活動内容について共通認識を図ることが重要といえる。

▼今後の連携のあり方
今後の連携のあり方
CSVファイル

   (自由回答より)
    ・ 相互の活動内容の把握が必要
    ・ 各機関・団体が、他機関、一般に活動内容を認知してもらうための広報が必須
    ・ 情報交換のための連絡会を開催するべき
    ・ 役割分担を明確にした案内リストの作成を希望

ウ.情報提供・共有の状況
○ 他機関・団体から犯罪被害者等の紹介を受けるにあたっての重視度については、「提供される情報の内容」、「情報の詳細さ」、「情報の共有状況」といった項目が高い。一方、現状の充足度において、「充足している」としたのは、いずれの項目においても、1割程度にとどまる。

▼充足度
充足度
CSVファイル

▼重視度
重視度
CSVファイル

○ 提供される情報の内容について、具体的な項目を調査すると、現在提供されている情報については、「被害の経緯や詳細」、「被害の原因となった犯罪の種類」、「犯罪被害者等の要望等」に関するものが多い。一方、今後提供を望む情報については、上記提供情報に加え、「紹介元機関・団体の支援内容」、「支援における留意点・所見等」、「対応した機関・団体や支援内容の履歴」が多くなっており、犯罪被害者等の紹介に際しては、情報の内容が最重視されているにもかかわらず、提供される情報と、提供を望む情報について差異があり、充足していないと感じていることが読み取れる。

2 途切れない支援を目指して
  支援のためのスムーズな「橋渡し」が行われるためには、支援に携わる者が、他機関・団体の支援内容や役割を認識していなければならない。しかしながら、関係機関・団体は多岐にわたることなどから、支援の現場における各機関・団体相互の活動内容などの把握は不十分であり、連携調査においても、関係機関・団体の支援内容、連絡先などの一覧が欲しいといった要望が多くあげられた。
  こうした現状を踏まえ、「支援のための連携に関する検討会」の中間取りまとめにおいては、「犯罪被害者支援ハンドブック(仮称)」の作成、備付けが盛り込まれている(コラム2「3つの『検討会』の中間取りまとめ」参照)。同ハンドブックの備付けにより、支援に携わる者が、関係機関・団体相互の活動内容などを把握し、それを活用することが容易になり、犯罪被害者等の多岐にわたるニーズに、制度や組織の谷間に陥らせることなく、応えることが可能となる。

  また、スムーズな支援のためには、関係機関・団体間の情報のやり取りが非常に重要となる。
  そのため、「支援のための連携に関する検討会」中間取りまとめにおいては、関係機関・団体へ伝達すべき犯罪被害者等に関する情報のガイドライン及び様式モデル案の作成が盛り込まれている(コラム2「3つの『検討会』中間取りまとめ」参照)。同ガイドライン及び様式は、関係機関・団体間において、共有すべき情報や伝達方法などを示すものであり、これにより、関係機関・団体間での情報共有が促進され、スムーズな支援が開始されることとなる。また、犯罪被害者等は異なる関係機関・団体に支援を求めるたびに被害の概要等を説明することは避けられないが、少しでもその負担が軽減されることとなる。

  犯罪被害者等の置かれている状況やニーズは、個々の犯罪被害者等によって様々である上、時間の経過によっても変化する。そのため、一つの機関・団体においてその全てに適切に対応することは現実的に困難である。そこで、関係機関・団体が連携しなければならないが、その際には、犯罪被害者等が制度や組織の谷間に陥ることのないよう、適切な「橋渡し」を行わなければならない。
  犯罪被害者等の誰もが、望む場所で、必要なときにいつでも、情報の入手や相談ができ、専門的知識と技能に裏付けられた支援が受けられる継ぎ目のない支援体制を構築していくため、「支援のための連携に関する検討会」においては、現在、最終取りまとめに向けて更なる検討をしている。


<< 前頁   [目次]   次頁 >>