我が国における犯罪被害者等施策の経緯等 -年次報告書の第1回の作成に当たって-

第2章 犯罪被害者等の置かれている状況とニーズ(注2)


第1節  犯罪被害者等の置かれている状況

 犯罪被害者等に係る諸問題は、国民全体が考えていくべきものであるが、犯罪被害者等が受ける被害の実相についての理解は十分ではない。犯罪被害者等は社会の例外的な存在であって、自分たちとは関係がないという誤った認識や、犯罪被害者等は、特別に公的に守られ、尊重され、加害者からの弁償に加えて十分な支援が受けられることで容易に被害から回復できているという誤解もある。こうした認識の誤りもあり、犯罪被害者等に対する支援についての社会の関心は高いとはいえない。

 しかしながら、犯罪被害者等は、国民の誰もが犯罪被害者等となり得る現実の中で、思いがけず犯罪被害者等となったものであり、我々の隣人であり、我々自身でもある。犯罪被害者等は、生命を奪われ、家族を失い、傷害を負わされ、財産を奪われるといった、いわば目に見える被害に加え、それらに劣らぬ重大な精神的被害を負うとともに、再被害の不安にさいなまれる。犯罪等によってゆがめられた正義と秩序を回復するための捜査・公判等の過程で、犯罪被害者等は負担を負い、時には配慮に欠けた対応による新たな精神的被害(二次的被害)を受けたり、名誉感情を傷つけられながら、自らの正義の回復に期待してこれに耐えていく。しかし、望む限りの情報が得られるわけではなく、かけがえのないものを奪った犯罪等の真実を必ずしも知ることができず、望むような関与もできず、疎外感・無力感に苦しむことが少なくない。さらには、周囲の好奇の目、誤解に基づく中傷、無理解な対応や過剰な報道等により、その名誉や生活の平穏が害されたり、孤立感に苦しむことも少なくなく、支援を行う各機関の担当者からさえ心無い言動を受けることもある。このように、犯罪被害者等の多くは、これまでその権利が尊重されてきたとは言い難いばかりか、十分な支援を受けられず、社会において孤立することを余儀なくされ、さらには、犯罪等による直接的被害にとどまらず、その後も副次的な被害に苦しめられることが少なくなかった。

(注2)犯罪被害者等基本計画を参考としている。



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