第1部 犯罪被害者等のための施策と進捗状況

第2章 犯罪被害者等のための具体的施策



第2節 精神的・身体的被害の回復・防止への取組

1 保健医療サービス及び福祉サービスの提供(基本法第14条関係)

○ 人身取引被害者について、従来の婦人相談所による一時保護に加え、平成17年度から、厚生労働省の定める基準を満たす婦人保護施設及び民間シェルター等への一時保護委託の費用とともに、医療にかかる費用について予算措置。

○ 児童福祉施設及び婦人保護施設入所措置について、「子ども・子育て応援プラン」における小規模ケアに係る目標を踏まえ、平成17年度には、従来の児童養護施設に加え、乳児院等で小規模なグループによるケアを実施。さらに、平成18年度には、心理療法担当職員の常勤配置等支援体制の充実、子どもを含む家族全体に対する心理療法の推進、配偶者からの暴力被害者等が入所する婦人保護施設における夜間警備体制の強化と心理療法担当職員の配置等を実施中。

○ 平成18年度より、「PTSD対策に係る専門家の養成研修会」において、より高度な診断評価・治療の技法を修得させるため、医師・保健師等を対象としたアドバンスコースを設置。

○ 平成18年度より、障害者自立支援法(平成17年法律第123号)に基づく都道府県地域生活支援事業として、高次脳機能障害者に対する専門的な相談支援体制の構築を行うとともに、高次脳機能障害者への支援に当たる人材の育成を図る「高次脳機能障害支援普及事業」を実施。

○ 平成18年度より、「思春期精神保健対策専門研修会」において、医師を対象としたアドバンスコースを設置。

○ 児童相談所において、所長、次長及び各部門の長のほか、教育・訓練・指導担当児童福祉司(スーパーバイザー)、児童福祉司、相談員、精神科を専門とする医師(嘱託も可)、児童心理司、心理療法担当職員などの職員を配置。児童精神科医の配置状況は平成17年度では51名であったところ、平成18年度においては57名(速報値)。さらに、平成17年から「子どものこころの診療医の養成に関する検討会」を開催し、小児科及び子どもの診療に携わる精神科医に、子どもの心身の健康に関する基本的な知識や技能を修得させるための方策について検討中。

○ 犯罪被害者等への適切な対応に資する医学教育の促進について、「国立大学医学部長、歯学部長及び病院長会議」等において犯罪被害者等基本計画の内容を説明するとともに、各大学におけるカリキュラム改革の取組を要請。

○ 犯罪被害者等に関する専門的知識・技能を有する臨床心理士の養成等について、現在、文部科学省と財団法人日本臨床心理士資格認定協会において事業の具体的内容を検討中。

○ 法科大学院における教育による犯罪被害者等への理解の向上の促進のため、平成18年2、3月に、中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会及び全法科大学院が加盟する法科大学院協会総会において、犯罪被害者等基本計画の趣旨及び法科大学院に関連する内容等について説明・周知。

○ 大学の教職課程におけるカウンセリングに関する教育について、平成18年8月、犯罪被害者等である児童生徒に対する心のケアに関する内容を含めるなど各大学においてその充実を図るよう通知。

○ 被害少年が受ける精神的打撃軽減のための継続的支援について、「通学路等における子どもの犯罪被害を防止するための諸対策の徹底について」(平成17年12月)により、犯罪被害に遭った子どもへの支援等について都道府県警察に指示。また、平成18年5月、少年の健全な育成に障害を及ぼす行為により被害を受けた少年に対する少年指導委員による援助等の事項を内容とする「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律」を施行。

○ 里親委託を一層推進するために、平成18年度には、児童相談所に新たに「里親委託推進員」を配置するとともに、「里親委託推進委員会」を設け、乳児院等の児童福祉施設及び里親との連携を図りつつ、施設から里親への子どもの委託を総合的に推進する里親委託推進事業を創設。

○ 犯罪被害者等に対する医療機関に関する情報の周知及び性暴力被害者のための医療体制の整備について、平成18年通常国会において成立した「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律」において、患者等が医療に関する情報を十分に得られ、適切な医療を選択できるよう支援するために、医療機関の管理者に対し、医療機能に関する一定の情報について報告を義務化することで、都道府県が医療機関に関する情報を集約し、インターネット等で分かりやすく住民に情報を提供し、住民からの相談に応じ助言を行う仕組みを制度化。

○ 医療機関が診療情報の開示も含め個人情報を適切に取り扱うよう、「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」(平成16年12月24日)等の関連ガイドラインとともに、個人情報保護法に基づく開示に当たっては「診療情報の提供等に関する指針」(平成15年9月12日)の内容に配慮しつつ適切に対応することについて、改めて周知を依頼する旨の通知を、平成17年12月、都道府県に発出。

○ 平成17年から厚生労働科学研究で「犯罪被害者の精神健康の状況とその回復に関する研究」を3年計画で行っており、《1》犯罪被害者の精神状態についての実態とニーズの調査、《2》医療場面における犯罪被害者の実態とニーズの調査、《3》精神保健福祉センター等の職員が犯罪被害者にかかわる場合のマニュアル作り等を実施中。これらの研究成果も踏まえ、「PTSD対策に係る専門家の養成研修会」等における犯罪被害者に対応可能な専門家の養成に資するカリキュラム内容等を検討する予定。併せて、「PTSD対策に係る専門家の養成研修会」等のカリキュラムの見直し、精神保健福祉センター等における相談支援方法の見直しなど必要な措置を検討する予定。

○ 平成18年度診療報酬改定において、PTSDの診断のための心理テストであるCAPSについて、新たに保険適用としたほか、20歳未満の者に対して心身医学療法を行った場合の評価を引上げ。

○ 救命救急センター等の救急医療にかかわる医療機関において、犯罪被害者が搬送された場合、救急医療の実施と併せて、精神科の医師による診療等が速やかに行われるよう、精神科との連携の必要性を周知予定。また、救命救急センターの評価項目に、精神科との連携を評価する項目を新たに含め、これにより救急医療と精神科の連携をより強化することを検討。

○ 地域における医療機能の分化、連携を進める医療計画制度の見直しなどを内容とする「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部の改正する法律」の成立を受け、犯罪被害者等を含め、長期療養を必要とする患者が必要な医療や介護サービスを受けられる方策について、必要な施策を検討中。



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