第3部 犯罪被害者等施策に関する基礎資料

目次]  [戻る]  [次へ

3.第4次犯罪被害者等基本計画(令和3年3月30日閣議決定)

III 重点課題

第4次基本計画においても、第1次基本計画から第3次基本計画までと同様、犯罪被害者等やその支援に携わる者等からの意見・要望等を踏まえ、大局的な課題として、次の5つの重点課題を掲げることとする。

なお、個々の施策の実施に当たっては、各重点課題に対する当該施策の位置付けを明確に認識し、関係府省庁の施策が横断的かつ総合的に推進・展開されるよう努める必要がある。

〔5つの重点課題〕
<1> 損害回復・経済的支援等への取組

犯罪被害者等は、犯罪等により、生命を奪われ、家族を失い、傷害を負わされ、財産を奪われるといった様々な被害を受けるほか、高額な医療費の負担や収入の途絶等により、経済的に困窮することが少なくない。また、自宅が事件現場となったこと、加害者から逃れる必要があること等の理由から住居を移す必要が生じることや、犯罪等による被害や刑事に関する手続等に伴う負担についての雇用主等の無理解等の理由から、雇用関係の維持に困難を来すことも少なくない。

もとより、犯罪等により生じた損害について、第一義的責任を負うのは加害者であるが、犯罪被害者等からは、加害者の損害賠償責任が果たされず、十分な賠償を受けることができないことに対する不満の声が寄せられている。したがって、犯罪被害者等が直面している経済的な困難を打開するため、加害者の損害賠償責任の実現に向けて必要な検討等を行うとともに、犯罪被害者等支援を目的とした制度以外の制度や民間の取組等の活用推進も含め、犯罪被害者等の損害を回復し、犯罪被害者等を経済的に支援するための取組を行わなければならない。

<2> 精神的・身体的被害の回復・防止への取組

犯罪被害者等の多くは、犯罪等により、その生命・身体に重大な被害を受ける。また、多くの場合、犯罪等により直接生じる精神的・身体的・財産的被害のみならず、自らやその家族が犯罪行為等の対象となったという事実からも精神的被害を受ける。さらに、再被害を受けたことに伴う恐怖・不安又は将来再被害を受けることに対する恐怖・不安を抱く場合や、捜査・公判の過程、医療、福祉等の場で配慮に欠ける対応を受けたことにより、いわゆる二次的被害を受ける場合もある。

したがって、犯罪被害者等が受ける精神的・身体的被害を回復・軽減し、又は未然に防止するための取組を行わなければならない。

特に、性犯罪・性暴力は、個人の尊厳を著しく踏みにじる行為であり、その心身に長期にわたり重大な悪影響を及ぼすことから、ワンストップ支援センターの体制強化等により、支援を一層充実させる必要がある。

また、児童虐待、ストーカー事案及び配偶者等からの暴力事案は、繰り返し行われて被害が深刻化することが少なくなく、生命・身体に重大な危害が及ぶ場合もあることから、被害を防止するための対策を強化するとともに、相談につながりやすく、安全が確保され、適切に支援を受けることができるようにするための取組の一層の充実を図る必要がある。

<3> 刑事手続への関与拡充への取組

事件の正当な解決は、犯罪被害者等の被害の回復に不可欠であり、また、解決に至る過程に犯罪被害者等が関与することは、その精神的被害の回復に資する面もある。したがって、刑事に関する手続や少年保護事件に関する手続が、国家・社会の秩序維持、個人の人権の保障、少年の健全育成等の様々な考量困難な要請に応えるものでなければならないことを前提としつつ、「事件の当事者」である犯罪被害者等が、これらの手続に適切に関与することができるよう、その機会を拡充するための取組を行わなければならない。

また、刑の執行段階等や保護観察における加害者処遇に関し、犯罪被害者等やその支援に携わる者等から、犯罪被害者等に対する一層の情報提供や犯罪被害者等の心情等の加害者処遇への一層の反映を求める声が寄せられていることを踏まえ、加害者処遇における犯罪被害者等の立場や心情等への配慮等を一層充実させる必要がある。

<4> 支援等のための体制整備への取組

被害直後から様々な困難な状況に直面する犯罪被害者等が再び平穏な生活を営むことができるようになるためには、全ての犯罪被害者等が、必要な時に必要な場所で情報の入手や相談を行うことができ、専門的な知識・技能に裏付けられたきめ細かな支援を受けることができるよう、地方公共団体や犯罪被害者等の援助を行う民間の団体等と共に、継ぎ目のない支援体制を構築していく必要がある。

また、犯罪被害者等は、被害直後から、医療・福祉、住宅、雇用等の生活全般にわたる支援を必要としている。さらに、犯罪被害者等が被害から回復するためには時に長い時間を要し、その間、犯罪被害者等のニーズは変化していく。加えて、犯罪被害者等を取り巻く環境の変化等により、必要な支援の内容も変わり得る。したがって、犯罪被害者等を中長期的に支援するため、必要な体制整備への取組が行われなければならない。

その上で、単一の関係機関・団体等の取組による支援には限界があることから、犯罪被害者等に対し継ぎ目のない中長期的な支援を実施するためには、国、地方公共団体及びその他の関係機関並びに犯罪被害者等の援助を行う民間の団体等が相互に連携・協力し、被害直後から様々な関係機関・団体等が協働して、重層的な支援を行うことができる体制を構築していく必要がある。

また、犯罪被害者等がいつでも適切な支援を受けることができるよう、国による犯罪被害者等施策のほか、地方公共団体や犯罪被害者等の援助を行う民間の団体等による取組等についても、適切に周知する必要がある。

<5> 国民の理解の増進と配慮・協力の確保への取組

犯罪被害者等のための施策の効果は、国民の理解・協力がなければ十分に発揮されない。犯罪被害者等は、地域社会において配慮・尊重され、支えられることで初めて平穏な生活を回復することができることから、犯罪被害者等のための施策の実施と国民の理解・協力は車の両輪である。

したがって、インターネットやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の普及にも配意しつつ、様々な機会や媒体を通じ、教育活動、広報啓発活動等を継続的に行うなどして、犯罪被害者等が置かれている状況、犯罪被害者等の名誉又は生活の平穏への配慮の重要性等に関する国民の理解・共感を深め、犯罪被害者等への配慮・尊重と犯罪被害者等のための施策への国民の協力を確保するための取組を推進しなければならない。

目次]  [戻る]  [次へ

警察庁 National Police Agency〒100-8974 東京都千代田区霞が関2丁目1番2号
電話番号 03-3581-0141(代表)