3.第4次犯罪被害者等基本計画(令和3年3月30日閣議決定)
V 重点課題に係る具体的施策
第1 損害回復・経済的支援等への取組
1 損害賠償の請求についての援助等(基本法第12条関係)
(1) 日本司法支援センターによる支援
【施策番号1】
ア 日本司法支援センターが運用する民事法律扶助制度の活用により、弁護士費用及び損害賠償請求費用の負担軽減を図る。【法務省】
【施策番号2】
イ 日本司法支援センターにおいて、犯罪被害者等支援の窓口となる犯罪被害者等への情報提供を担当する職員に対し、犯罪被害者等の心情等への理解を深め、その心情等を適切に聴取できるよう研修を実施する。また、引き続き、弁護士会等と連携し、犯罪被害者等支援の経験や理解のある弁護士の確保に努めるとともに、犯罪被害者等の個別の状況に応じた必要なサービスが提供できるよう、弁護士の紹介体制の整備に努める。【法務省】
(2) 損害賠償請求制度等に関する情報提供の充実
【施策番号3】
警察庁及び法務省において連携し、損害賠償請求制度その他の犯罪被害者等の保護・支援のための制度の概要を紹介した冊子・パンフレット等について内容の一層の充実を図るとともに、当該制度を周知する。【警察庁、法務省】(再掲:第4-1(220))
(3) 刑事和解等の制度の周知徹底
【施策番号4】
法務省において、刑事和解、公判記録の閲覧・謄写、不起訴記録の弾力的開示等の制度について周知徹底を図る。【法務省】
(4) 保険金支払の適正化等
【施策番号5】
ア 一般財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構における調停、国土交通省による保険会社に対する立入検査、国土交通大臣による適正な支払を行うことの指示等により、自賠責保険金の支払の適正化を図る。【国土交通省】
【施策番号6】
イ 金融庁において、犯罪被害者等に直接保険金等が支払われる場合も含め、契約に基づく保険金等の支払が適切に行われるよう、「保険会社向けの総合的な監督指針」(平成17年8月12日策定)等に基づき、各保険会社における保険金等支払管理態勢について検証し、保険会社側に問題があると認められる業務・運営については、適切に対応する。【金融庁】
【施策番号7】
ウ 公益財団法人日弁連交通事故相談センターにおける弁護士による自賠責保険に係る自動車事故の損害賠償の支払に関する無料の法律相談・示談のあっせん等により、適切な損害賠償が受けられるよう支援を行う。【国土交通省】
【施策番号8】
エ 国土交通省において、ひき逃げや無保険車等の事故による犯罪被害者等に対しては、政府保障事業において、加害者に代わって直接その損害を塡補することにより、適切な支援を行う。【国土交通省】
(5) 受刑者の作業報奨金を損害賠償に充当することが可能である旨の周知
【施策番号9】
法務省において、受刑者に対し、受刑中の者が作業報奨金を犯罪被害者等に対する損害賠償に充当することが法令上可能である旨を引き続き周知する。【法務省】
(6) 暴力団犯罪による被害の回復の支援
【施策番号10】
警察において、都道府県暴力追放運動推進センターや弁護士会の民事介入暴力対策委員会等と連携し、暴力団犯罪による被害の回復を支援する。【警察庁】
(7) 加害者の損害賠償責任の実現に向けた調査等の実施
【施策番号11】
ア 警察庁において、関係府省庁等と連携し、犯罪被害者等が損害賠償を受けることができない状況について実態把握のための調査を実施し、その結果に応じて必要な検討を行う。【警察庁】
【施策番号12】
イ 法務省において、令和元年5月に成立した民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律(令和元年法律第2号)の附帯決議を踏まえ、関係府省庁等と連携し、公的機関による犯罪被害者等の損害賠償請求権の履行の確保に関する諸外国における先進的な法制度や運用状況に関する調査研究を実施し、その結果に応じて必要な検討を行う。【法務省】
2 給付金の支給に係る制度の充実等(基本法第13条関係)
(1) 犯罪被害給付制度の運用改善
【施策番号13】
警察庁において、仮給付制度の効果的な運用その他の犯罪被害給付制度の運用改善、同制度の関係職員への周知徹底、犯罪被害者等への教示等について都道府県警察を指導するとともに、犯罪被害者等給付金の早期支給に努める。【警察庁】
(2) 性犯罪被害者の医療費の負担軽減
【施策番号14】
警察庁において、都道府県警察に対し、緊急避妊、人工妊娠中絶及び性感染症等の検査に要する費用、初診料、診断書料等の性犯罪被害者の医療費の公費負担に要する経費を補助する。また、緊急避妊等の公費負担制度ができる限り全国的に同水準で運用され、性犯罪被害者の負担軽減に効果的なものとなるようにするとともに、性犯罪の被害に伴う精神疾患についても犯罪被害給付制度の対象となることの周知も含め、各種支援施策の効果的な広報に努めるよう、都道府県警察を指導する。【警察庁】
(3) カウンセリング等心理療法の費用の負担軽減等
【施策番号15】
警察庁において、公認心理師、臨床心理士等の資格を有する部内カウンセラーの確実かつ十分な配置に努めるよう、都道府県警察を指導する。また、警察庁において、カウンセリング費用の公費負担制度ができる限り全国的に同水準で運用されるよう、都道府県警察を指導するとともに、警察において、同制度の周知に努める。【警察庁】
(4) 司法解剖後の遺体搬送費等に対する措置
【施策番号16】
都道府県警察において、司法解剖後の遺体搬送費及び遺体修復費の公費負担制度の積極的な活用を図る。【警察庁】
(5) 地方公共団体による見舞金制度等の導入促進等
【施策番号17】
警察庁において、地方公共団体に対し、犯罪被害者等に対する見舞金等の支給制度や生活資金等の貸付制度の導入を要請する。また、犯罪被害者白書や警察庁ウェブサイト等を通じて、これらの制度を導入している地方公共団体について、国民に情報提供を行う。【警察庁】
(6) 預保納付金の活用
【施策番号18】
振り込め詐欺等の被害金を原資としている預保納付金については、振り込め詐欺被害の減少に伴い減少が見込まれるところではあるが、そうした状況の中でも、引き続き、犯罪被害者等の子供への奨学金事業及び犯罪被害者等支援団体への助成事業を実施する。【金融庁、財務省、警察庁】(再掲:第4-3(244))
(7) 海外での犯罪被害者等に対する経済的支援
【施策番号19】
警察庁において、国外犯罪被害弔慰金等支給制度の適切な運用が図られるよう、都道府県警察を指導するとともに、警察及び外務省において、同制度の周知に努める。【警察庁、外務省】
3 居住の安定(基本法第16条関係)
(1) 公営住宅への優先入居等
【施策番号20】
ア 国土交通省において、地域の実情等を踏まえた地方公共団体による公営住宅への優先入居や目的外使用の取扱いの推進を図る。【国土交通省】
【施策番号21】
イ 国土交通省において、公営住宅への入居に関し、都道府県営住宅における広域的な対応や市区町村営住宅を管理する市区町村を含む地方公共団体間の緊密な連携を地方公共団体に対して要請していることについて、会議等の場を活用して周知する。【国土交通省】
【施策番号22】
ウ 公営住宅の管理主体から、独立行政法人都市再生機構の賃貸住宅の借上げ要請があった場合は、柔軟に対応する。【国土交通省】
【施策番号23】
エ 国土交通省において、犯罪被害者等の円滑な入居の促進を図るため、居住支援協議会及び居住支援法人の制度を周知するとともに、居住支援協議会及び居住支援法人による犯罪被害者等への住居のマッチング・入居支援等の取組を支援する。【国土交通省】
【施策番号24】
オ 国土交通省において、関係機関と連携し、公営住宅への入居に関する犯罪被害者等への情報提供を行う。【国土交通省】
(2) 被害直後及び中期的な居住場所の確保
【施策番号25】
ア 厚生労働省において、児童相談所及び婦人相談所による一時保護や婦人保護施設及び民間シェルター等への一時保護委託の適正な運用に努める。【厚生労働省】(再掲:第2-2(90))
【施策番号26】
イ 厚生労働省において、「児童虐待防止対策の抜本的強化について」(平成31年3月19日児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議決定)等に基づき、児童相談所の一時保護所において個別対応ができる職員体制の強化や環境整備を推進する。【厚生労働省】(再掲:第2-2(91))
【施策番号27】
ウ 厚生労働省において、婦人相談所における被害女性の安全の確保や心理的ケアが十分に行われるよう、婦人相談所の体制を整備し、夜間・休日を含む緊急時についても、適正かつ効果的な一時保護を実施する。【厚生労働省】
【施策番号28】
エ 厚生労働省において、一時保護から地域における自立した生活へとつながるよう、婦人保護施設及び母子生活支援施設の機能強化等により、入所者に対する生活支援の充実に努める。また、婦人保護施設において、性暴力被害者に対する心理的ケアや自立支援を推進するとともに、婦人保護施設の利用に関する分かりやすいパンフレットの作成等により、婦人保護施設への理解を広め、その利用促進を図る。【厚生労働省】
【施策番号29】
オ 警察庁において、都道府県警察に対し、自宅が犯罪行為の現場となり、破壊されるなど、居住が困難で、かつ、自ら居住する場所を確保できない場合等に犯罪被害者等が利用できる緊急避難場所の確保に要する経費及び自宅が犯罪行為の現場となった場合におけるハウスクリーニングに要する経費を補助するとともに、これらの施策が犯罪被害者等の負担軽減に効果的なものとなるよう、都道府県警察を指導する。【警察庁】
【施策番号30】
カ 警察庁において、犯罪被害者等にとって身近な公的機関である地方公共団体において居住場所の確保や被害直後からの生活支援に関する取組が適切になされるよう、地方公共団体に対する啓発・情報提供を行う。【警察庁】
(3) 性犯罪被害者等に対する自立支援及び定着支援
【施策番号31】
厚生労働省において、地方公共団体やDVシェルターを運営する特定非営利活動法人等が、性犯罪被害者その他の相談者に対し、生活相談や行政機関への同行支援等の自立支援、DVシェルター等を退所した者に対する家庭訪問や社会生活の場(地域活動の場、職場等)への同行、職員による相談対応・助言等、地域生活に定着させるための継続的な支援を一体的に行うために必要な協力を行う。【厚生労働省】
4 雇用の安定(基本法第17条関係)
(1) 事業主等の理解の増進
厚生労働省において、犯罪被害者等に対する十分な理解に基づき、次の施策を実施する。
【施策番号32】
ア 母子家庭の母等及び父子家庭の父に対するトライアル雇用事業の適正な運用に努める。【厚生労働省】
【施策番号33】
イ 公共職業安定所における事業主に対する配置や労働条件等の雇用管理全般に関するきめ細かな相談援助の適正な実施に努める。【厚生労働省】
【施策番号34】
ウ 公共職業安定所における求職者に対するきめ細かな就職支援の適正な実施に努める。【厚生労働省】
(2) 個別労働紛争解決制度の周知徹底等
【施策番号35】
ア 厚生労働省において、犯罪被害者等に係る個別労働紛争の解決に当たって、個別労働紛争解決制度について周知徹底を図るとともに、同制度の適正な運用に努める。【厚生労働省】
【施策番号36】
イ 厚生労働省において、事業主との間で生じた労働問題に関し、犯罪被害者等への情報提供、相談対応等を行う公的相談窓口として、労働問題に関するあらゆる分野の相談に専門の相談員がワンストップで対応する総合労働相談コーナーについて周知徹底を図るとともに、その積極的な活用を図る。【厚生労働省】
(3) 犯罪被害者等の精神的・身体的被害からの回復等のための休暇制度の周知・啓発
【施策番号37】
犯罪被害者等の精神的・身体的被害からの回復等のための休暇制度についていまだ十分な認知がなされていない状況にあることから、厚生労働省において、企業向け・労働者向けのアンケートによる実態把握を行うとともに、リーフレットや厚生労働省のウェブサイト等により、経済団体や労働団体をはじめ事業主や被雇用者等に対し、あらゆる機会を通じて、犯罪被害者等が置かれている状況や被害からの回復等のための休暇制度等について周知・啓発する。【厚生労働省】