警察庁 National Police Agency

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第5章 国民の理解の増進と配慮・協力の確保への取組

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1 国民の理解の増進(基本法第20条関係)

(1) 学校における生命のかけがえのなさ等に関する教育の推進

【施策番号250】

文部科学省においては、平成30年度から小学校で、令和元年度から中学校で、それぞれ「特別の教科 道徳」が全面実施されたことを踏まえ、児童生徒が生命の尊さや大切さについて自らの考えを深められるような指導の充実を図っている。

また、警察庁が公開している犯罪被害者等に関する啓発教材について、文部科学省ウェブサイト(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/jinken/sankosiryo/1322248.htm)において紹介している。

さらに、生命及び自然を尊重する精神等を養うことを念頭に、児童生徒の健全育成を目的とした、小・中学校、高等学校等における2泊3日以上の宿泊体験活動を支援している。

(2) 学校における犯罪被害者等の人権問題を含めた人権教育の推進

【施策番号251】

文部科学省においては、「人権教育・啓発に関する基本計画」(平成14年3月15日閣議決定。平成23年4月1日一部変更)を踏まえ、学校・家庭・地域社会が一体となった総合的な取組や、学校における指導方法の改善について実践的な研究を行う人権教育研究推進事業を実施している。

また、都道府県教育委員会等の人権教育担当者を集めた人権教育担当指導主事連絡協議会を開催するとともに、独立行政法人教職員支援機構において人権教育指導者養成研修を実施している。

社会教育については、中核的な役割を担う社会教育主事の養成講習や、現職の社会教育主事等を対象とした研修等において、人権問題等の現代的課題を取り上げ、指導者の育成及び資質の向上を図っている。

(3) 学校における犯罪被害者等に関する学習の充実

【施策番号252】

文部科学省においては、平成18年5月に「児童生徒の規範意識を育むための教師用指導資料(非行防止教室を中心とした取組)」を作成して学校・教育委員会等に配布するとともに、警察と連携し、同資料を活用して非行防止教室の開催を推進するなど、犯罪被害者等に関する学習の充実を図っている。

(4) 子供への暴力抑止のための参加型学習への取組

【施策番号253】

文部科学省においては、「児童生徒の規範意識を育むための教師用指導資料(非行防止教室を中心とした取組)」を活用した非行防止教室の開催をはじめ、子供への暴力抑止のための参加型学習の取組を推進している。

(5) 性犯罪・性暴力対策に関する教育の推進

【施策番号254】

トピックス「子供を性犯罪・性暴力の加害者・被害者・傍観者にさせないための「生命(いのち)の安全教育」について」参照

(6) 家庭における生命の教育への支援の推進

【施策番号255】

文部科学省においては、各地域で実施している生命の尊さや大切さを実感させる意義等を学ぶための保護者向けプログラムを含め、家庭教育に関する情報を、文部科学省ウェブサイト「子供たちの未来をはぐくむ家庭教育」(https://katei.mext.go.jp/index.html)を通じて提供するなど、地域における家庭教育支援の取組を推進している。

(7) 犯罪被害者等による講演会の実施

【施策番号256】

警察においては、教育委員会等の関係機関と連携し、中学生・高校生等を対象とした犯罪被害者等による講演会「命の大切さを学ぶ教室」を平成20年度から開催し、犯罪被害者等への配慮・協力への意識のかん養に努めており、令和3年度は全国で計812回開催した。

また、同教室の効果の向上を図るとともに、犯罪被害者等への理解と共感を深めるため、平成23年度から作文コンクールを開催し、生命を大切にする意識や規範意識の醸成に努めている(警察庁ウェブサイト「「大切な命を守る」全国中学・高校生作文コンクール」:https://www.npa.go.jp/higaisya/sakubun/index.html)(トピックス「犯罪被害者週間」参照)。

さらに、あらゆる機会を利用して、広く国民の参加を募り犯罪被害者等による講演会を開催したり、大学生を対象とした犯罪被害者等支援に関する講義を行ったりし、社会全体で犯罪被害者等を支え、被害者も加害者も出さない街づくりに向けた気運の醸成を図っている。

講演会「命の大切さを学ぶ教室」
講演会「命の大切さを学ぶ教室」

(8) 生命・身体・自由等の尊重を自覚させる法教育の普及・啓発

【施策番号257】

法務省においては、法律専門家ではない一般の人々が、法や司法制度、これらの基礎になっている価値(個人の尊重、自由、平等等)を理解し、法的なものの考え方を身に付けるための教育(法教育)を推進しており、以下をはじめ様々な取組を行っている。

法教育の普及・啓発に向けた取組としては、学校における学習指導要領を踏まえた法教育の実践の在り方や、教育関係者と法曹関係者による連携・協働の在り方等について、多角的な観点から検討を行うため、法教育推進協議会を開催している。

また、法教育の具体的内容及びその実践方法をより分かりやすくするため、発達段階に応じた法教育教材を作成し、全国の小・中学校、高等学校、教育委員会等に配布するとともに、同教材の利用促進を図るため、同教材を活用したモデル授業例を法務省ウェブサイトで公開したり、教員向け法教育セミナーを企画・実施したりするなどしている。

さらに、学校等に法教育に関する情報を提供することによって法教育の積極的な実践を後押しするため、法教育に関するリーフレットを作成し、全国の教育委員会等に配布するとともに、学校や各種団体からの要請に応じて法務省の職員を講師として派遣し、教員、児童生徒及び一般の人々に対して法的なものの考え方等を説明する法教育の授業を実施している。

これらに加えて、令和3年度は、4年4月からの成年年齢の引下げを見据え、新成人を含む若年者の消費者被害の予防に資するよう、契約や私法の基本的な考え方を学ぶことができる高校生向け法教育リーフレットを全国の高等学校、教育委員会等に配布したほか、リーフレットの内容に関する専門家の解説動画を法務省ウェブサイト(https://www.moj.go.jp/housei/shihouseido/houkyouiku_seinennenrei.html)で公開するなどした。

(9) 犯罪被害者週間に合わせた集中的な広報啓発活動の実施

【施策番号258】

トピックス「犯罪被害者週間」参照

(10) 犯罪被害者等支援に関わりの深い者に対する積極的な広報啓発活動の実施

【施策番号259】

警察庁においては、犯罪被害者週間の実施に当たり、都道府県の臨床心理士会、社会福祉士会、教育委員会、法テラス等に啓発イベントの開催案内等を送付し、各機関・団体に属する者の参加を呼び掛けるなどして、社会全体で犯罪被害者等を支える気運の醸成を図っている。

(11) 国民に対する効果的な広報啓発活動の実施

【施策番号260】

警察庁においては、犯罪被害者等支援について考える機会を国民に提供し、その理解の増進を図るため、犯罪被害者等支援に関する標語を募集している。令和3年度は、5,224件の応募の中から、福岡県の岡垣町立内浦小学校4年生西頭杏奈さんの作品「とどけようやさしいこころ おもいやり」を最優秀賞に選出した。同標語については、犯罪被害者週間の広報啓発ポスターに用いるなど、犯罪被害者等支援を国民に広く浸透させるためのツールとして活用している(トピックス「犯罪被害者週間」参照)。

令和3年度犯罪被害者等支援に関する標語
令和3年度犯罪被害者等支援に関する標語

(12) 被害が潜在化しやすい犯罪被害者等に対する相談体制の充実及び理解の促進

【施策番号261】

【施策番号227】参照

(13) 犯罪被害者等支援のための情報提供

【施策番号262】

内閣府においては、配偶者等からの暴力事案の被害者に対する支援に役立つ法令、制度及び関係機関に関する情報等を収集し、外国語版も含め、内閣府ウェブサイト(https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/index.html)を通じて提供している。

また、若年層の女性に対する性暴力である、いわゆるアダルトビデオ出演被害やJKビジネス問題等については、被害事例、相談窓口等に関する情報を、内閣府ウェブサイト(https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/jakunengekkan/index.html)を通じて提供している。

(14) 若年層に対する広報啓発活動

【施策番号263】

内閣府においては、若年層に対して効果的な予防啓発を行い、暴力の加害者及び被害者になることを防止するため、若年層に対して教育・啓発を行う教職員、予防啓発事業を担当する地方公共団体の職員、予防啓発事業を実施する民間団体の職員等を対象として、若年層の性被害の実態や、若年層への効果的な広報啓発の在り方に関する研修を実施している。令和3年度は、オンライン研修教材を作成し、地方公共団体の職員等に提供するとともに、オンライン研修を実施した。

(15) SNSを含むインターネット上の誹謗中傷等に関する相談体制の充実及び誹謗中傷等を行わないための広報啓発活動の強化

【施策番号264】

【施策番号194】参照

(16) 犯罪被害者等施策の関係する特定の期間における広報啓発活動の実施

【施策番号265】

ア 内閣に置かれている男女共同参画推進本部においては、毎年11月12日から同月25日(国連が定めた「女性に対する暴力撤廃国際日」)までの2週間、「女性に対する暴力をなくす運動」を実施している。内閣府においては、同期間中、地方公共団体、女性団体その他の関係機関・団体と連携・協力し、女性に対する暴力に関する意識啓発等の取組を一層強化している。令和3年度は、女性に対する暴力の根絶を呼びかけるパープル・ライトアップは、迎賓館赤坂離宮をはじめとする全国のタワーやランドマーク等、全国47都道府県342か所で実施された。

  また、若年層に対する性暴力については、毎年4月を「若年層の性暴力被害予防月間」と位置付けており、同年度は、SNS等の若年層に届きやすい広報媒体を活用した啓発活動を効果的に展開した。さらに、ポスターやリーフレットを作成し、国の機関や地方公共団体、全国の大学や図書館に配布したほか、鉄道会社の駅構内においてポスターを掲示するなど広く周知を行った。

【施策番号266】

イ 内閣府においては、春の全国交通安全運動(3年4月6日から同月15日まで)では「子供と高齢者を始めとする歩行者の安全の確保」、「歩行者等の保護を始めとする安全運転意識の向上」等を、秋の全国交通安全運動(同年9月21日から同月30日まで)では「子供と高齢者を始めとする歩行者の安全の確保」、「飲酒運転等の悪質・危険な運転の根絶」等を、それぞれ運動重点として掲げ、交通事故被害者等の心情に配慮しながら、交通事故の悲惨さや生命の尊さを国民に訴えた。

パープルライトアップ
パープルライトアップ
若年層の性暴力被害予防月間の
ポスター
若年層の性暴力被害予防月間のポスター
全国交通安全運動のポスター
全国交通安全運動のポスター

【施策番号267】

ウ 法務省の人権擁護機関においては、犯罪被害者等の人権に対する配慮と保護を図るため、「犯罪被害者とその家族の人権に配慮しよう」を強調事項の一つとして掲げ、人権週間(毎年12月4日から同月10日まで)等の様々な機会を通じ、啓発冊子の配布等の人権啓発活動を実施している。

【施策番号268】

エ 厚生労働省においては、平成16年から、毎年11月を「児童虐待防止推進月間」と位置付け、児童虐待に対する社会的関心の喚起を図っている。同月間中は、関係府省庁、地方公共団体、関係機関・団体等と連携・協力し、集中的な広報啓発活動を実施している。令和3年度は、「189(いちはやく)「だれか」じゃなくて「あなた」から」を同月間の標語として選出し、広報啓発用ポスター・リーフレット等に掲載したほか、「子どもの虐待防止推進全国フォーラムwith ふくおか」の開催等により、児童虐待は社会全体で解決すべき問題であることについて広報啓発活動を実施した。

人権週間のポスター
人権週間のポスター
児童虐待防止に関するポスター
児童虐待防止に関するポスター

(17) 様々な広報媒体を通じた犯罪被害者等施策に関する広報の実施

【施策番号269】

ア 【施策番号246】参照

【施策番号270】

イ 警察庁においては、民間被害者支援団体等と連携し、報道発表、街頭キャンペーン、討論会、各種会合における講話等を通じ、犯罪被害者等が置かれている状況や警察、関係機関、民間被害者支援団体等による犯罪被害者等支援について広報啓発活動を推進するよう、都道府県警察を指導している。

【施策番号271】

ウ 警察庁においては、パンフレット「警察による犯罪被害者支援」の作成・配布、警察の犯罪被害者等施策の掲載(https://www.npa.go.jp/higaisya/index.html)等により、犯罪被害者等支援に関する国民の理解の増進に努めている。

パンフレット
「警察による犯罪被害者支援」
パンフレット「警察による犯罪被害者支援」

【施策番号272】

エ 警察庁においては、ウェブサイト(https://www.npa.go.jp/policy_area/no_cp/)に政府による子供の性被害防止対策の内容を掲載するなどして、子供の犯罪被害の防止等に向けた情報提供を行っている。

(18) 調査研究結果の公表等を通じた犯罪被害者等が置かれた状況についての国民の理解の増進

【施策番号273】

関係府省庁においては、犯罪被害者等に関する調査研究を実施するとともに、公表が相当と認められる場合には、その結果を、犯罪被害者等が置かれている状況への国民の理解の増進を図るための広報啓発活動に活用するよう努めている。

警察庁においては、調査結果の二次利用に資するよう、調査研究の報告書等を警察庁ウェブサイト「犯罪被害者等施策」(https://www.npa.go.jp/hanzaihigai/report/higaisha.html)に掲載している。

また、警察庁及び法務省においては、令和4年7月、諸外国における犯罪被害者等への損害回復・経済的支援制度に関する調査を行った。同調査結果につき、上記警察庁ウェブサイトに掲載するとともに、引き続き、必要な調査・確認を行う。

(19) 犯罪被害者等に関する情報の保護

【施策番号274】

【施策番号89】参照

(20) 犯罪被害者等の個人情報の保護に配慮した地域における犯罪発生状況等の情報提供の実施

【施策番号275】

警察においては、自主防犯活動の更なる活性化を図るため、地域住民に向けて、警察の保有する犯罪発生情報や防犯情報等を様々な手段・媒体を用いて適時適切に提供している。

これらの情報提供に当たっては、犯罪等の発生に関する具体的な内容を含み得ることから、犯罪被害者等の個人情報の保護に十分配慮している。

(21) 交通事故被害者等の声を反映した国民の理解の増進

【施策番号276】

ア 警察においては、交通事故被害者等の実態や交通事故の悲惨さ等に関する国民の理解の増進を図るため、交通事故被害者等の手記を取りまとめた冊子等の作成・配布や交通安全の集い等における交通事故被害者等による講演を実施している。令和3年中は、交通事故被害者等の手記を取りまとめた冊子等を約123万部配布するとともに、交通事故被害者等による講演会等を319回開催した。

【施策番号277】

イ 都道府県公安委員会においては、運転者等に対する各種講習において、交通事故被害者等の切実な訴えが反映されたビデオ、手記等を活用するとともに、交通事故被害者等の講話を取り入れるなどし、交通事故被害者等の声を反映した講習を実施している。

交通事故被害者等の手記
交通事故被害者等の手記

(22) 交通事故の実態及びその悲惨さについての理解の増進に資するデータの公表

【施策番号278】

警察においては、交通事故の実態やその悲惨さについての国民の理解の増進を図るため、事故類型や年齢層別等の交通事故に関する様々なデータを刊行物や警察庁ウェブサイト(https://www.npa.go.jp/publications/statistics/koutsuu/toukeihyo.html)等で公表し、その実態等を周知している。

(23) 交通事故統計データの充実

【施策番号279】

警察庁においては、交通事故被害者に関する統計として、犯罪被害者白書に交通事故発生状況及び交通事故死者数の推移を掲載するなど、掲載内容の充実を図っている(基礎資料1112参照)。

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