企画分析会議構成員コラム 2

NPO法人 大阪被害者支援アドボカシーセンター 楠本節子

 今回、2年目の企画分析会議に民間被害者支援センターの一員として参加させていただくことになりました。今年度の調査では、新たに一般対象者が調査対象に加わっていますが、パネル調査・Web調査の被害者群とは、心の健康状態に関してはかなり差があることがわかりました。また、今年度の調査報告においては、昨年度調査と対比させてあることで、それぞれの置かれている状況や抱えている問題等を、比較しながら検討することができました。

 特に、今年度のWeb調査において、新たに支援や制度の認知度を問う項目が追加されましたが、それらの認知率の低さには驚きを隠せませんでした。せっかく支援・制度が拡充されつつあったとしても、肝心の被害者の元に情報が届いていないということが考えられるからです。多くの被害者にとって最初に出会う機関は警察ですので、警察による「事件直後からの付添い」、「加害者に関する情報提供」等の利用が多いことは当然のことでしょう。しかし今回の調査では、その他の関係機関における支援・制度の利用率が低いことも明らかになりました。中でも、民間支援の利用率が極めて低いことは、残念な結果と言えます。私自身、被害者支援に関わって今年で13年目になりますが、支援でお会いした折に「支援センターにやっとのことで辿りつきました。もっともっと早くに知らされていればこんな遠回りをすることはなかったのに」と、おっしゃる被害者の方が多いのが現状です。残念ながら、まだまだ民間組織での支援が認知されていないことも明らかとなりましたので、今まで以上に広報啓発に力を注いでいく必要があると同時に、各機関が更に有機的な連携や情報提供を行っていく必要性も感じました。

 今後実現・充実させていくことが望ましい施策については、パネル調査、Web調査ともに「PTSD等重度ストレス反応の治療専門家の養成」の充実が多くあがっていましたが、支援の現場においても日々実感しているところです。現在のような個人的なネットワーク頼みの専門家への紹介では、一部の医療機関に過重な負担がかかり、結果として、長期の加療が必要な被害者に幅広い医療機関の紹介ができていない結果を生んでいると言えます。今後のこととして、各都道府県の行政機関を巻き込んでの医療システム作りが待たれるところです。

 平成22年には犯罪被害者等基本計画を見直すとされていますが、今回の継続調査から見えてくる結果に基づいて、被害者の回復にとってより有効な支援策が展開されていくことを願わずにはいられません。

 

戻る > 目次  次へ > 3.Web調査結果