企画分析会議構成員コラム 1

全国犯罪被害者の会 (あすの会) 松村恒夫

 昨年に引き続いての調査であったが、何れの類型に於いても精神的、身体的、経済的状況においても依然問題や悩みを抱えている被害者等が多い事が窺えた。特に精神的に癒されていない被害者自身が多いことが明らかになった。一般に事件経過年数とともに回復してゆくと思われている被害者の主観的な回復度合いであるが、昨年度に比べて半分程度に回復した人の割合が増える一方、全く回復していない人の割合がほとんど変化していない事から被害者の多様性を考えさせられる。

 被害者参加・損害賠償命令制度は、昨年末から始まり、まだ回答には反映されていないが、最初に被害者が関わりを持つ警察・検察の努力により、被害者に活用され、被害回復に役立つ事が期待される。今後充実させていく事が望ましい施策として「民事損害賠償請求への援助」があげられているが、損害賠償命令制度を利用できなかった犯罪被害者が多かった事及び、損害賠償金額が判決で示されても「画餅」に過ぎない現状を改善して欲しいことを示しているのではないかと思われる。

 パネル調査において、今後実現・充実させていく事が望ましい施策として、「犯罪被害者等に対する給付制度の充実」を望んでいる殺人・傷害等被害者が50%で最大の要望施策であるのに、交通事故被害者のそれが15%であることが示された。この傾向は昨年度と変わっていない。つまり、交通事故被害者に対する補償はほぼ満足レベルであるのに対し、殺人・傷害被害者に対する従前の犯給法による補償は不充分なレベルであったことを示している。が、昨年7月より、犯給法が支援法と改訂され、殺人・傷害被害者等にも交通事故被害者とほぼ同額の補償額が支払われる事になったので、今後は改善されてゆく事が期待できる。しかし、その改正支援法が、過去の被害者に遡及されることはない。よって、パネル調査対象者が過去の被害者であることを考えると、当該継続調査期間中では、「犯罪被害者に対する給付制度の充実は望ましい」施策として継続的に表れるであろう。従って、犯罪被害者等に対する支援法の遡及を認めるか、議論された事がある「民間等による基金」によって犯罪被害者等を救済する施策が、過去の犯罪被害者等を救済する経済的支援策として議論される必要があるのではないかと思う。

 

戻る > 目次  次へ > 2.パネル調査結果