4.国民一般がイメージする犯罪被害者像と実態のギャップ

(2)国民一般のイメージと実態のギャップの総括

<犯罪被害者等の心情>

  • 犯罪被害者等の心情について、犯罪被害者等自身と国民一般とではその認識の点で違いがあることがわかった。
    図4-1が示すように、犯罪被害者等と国民一般が同じように認識している項目は、「不安を抱えている」、「落ち込んでいる」で、二つとも高いところで一致している。
  • 国民一般は全体的に犯罪被害者等の心情をやや過剰に捉える傾向がある。たとえば「いま暮らしているところから離れたい」、「将来の夢や希望を持てずにいる」、「孤立感、疎外感にさいなまれている」などは、犯罪被害者等自身はそれ程思っていないが、国民一般は積極的に肯定している。
  • 犯罪被害者等の心情について、罪種別に見たものが図4-9~図4-11である。国民一般は想起した犯罪(暴力犯罪、交通犯罪、性犯罪)であり、犯罪被害者等は自身及び家族が実際に被害にあった犯罪である。国民一般のデータは暴力犯罪の数が多いために、全体を示しているのが暴力犯罪である。一方性犯罪は、国民一般も犯罪被害者等も暴力犯罪より犯罪被害者等の心情を明確に表明する傾向にある(右上に集中)。性犯罪に対して、交通犯罪は、国民一般も犯罪被害者等も全体に表明の程度が低く(全体に下方に位置している)、特に「被害にあったことを恥ずかしいと思う」心情は国民一般も低いが、犯罪被害者等自身についてはかなり低いことがわかる。暴力犯罪や性犯罪と比較して、交通犯罪は、想起する国民一般も、また実際の犯罪被害者等も「恥ずかしいと思う」気持ちは低く、その点が他の犯罪の犯罪被害者等と異なるところであろう。

<必要な支援>

  1. 犯罪被害者等の回復に必要な支援を、事件直後と半年程度経過後を、国民と犯罪被害者等を比較したものが図4-6である。国民一般と犯罪被害者等との間で大きく異なる点は、犯罪被害者等は時間の経過に従い、必要とする支援が「警察との応対の手助け、付き添い」、「事件についての相談相手」から「そっとしておくこと」、「プライバシー等への配慮」へと変化している一方、国民一般は、事件直後は「プライバシー等への配慮」を強くイメージし、半年程度経過後は「日常的な話し相手」や「精神的な自立への支援」など精神的な面での支援に目が行きがちだということである。犯罪被害者等は、事件直後は、国民一般が思う苦悩よりもっと現実的な日常の生活や事件の後始末など、国民一般にはなかなか見えてこないことで苦悩し、半年程度経過後は、「そっとしておいてほしい」と思っている。国民一般はそのような現状を理解し、現実的な生活支援も行っていく必要がある。

「事件後の心境や状況」 散布図 <国民一般と犯罪被害者等、想定罪種・遭遇被害別>

図4-8:「事件後の心境や状況」 散布図 <国民一般と犯罪被害者等、想定罪種・遭遇被害別>【全体】
図4-9:「事件後の心境や状況」 散布図 <国民一般と犯罪被害者等、想定罪種・遭遇被害別>【暴力犯罪】
図4-10:「事件後の心境や状況」 散布図 <国民一般と犯罪被害者等、想定罪種・遭遇被害別>【交通事故等の犯罪】
図4-11:「事件後の心境や状況」 散布図 <国民一般と犯罪被害者等、想定罪種・遭遇被害別>【性犯罪】