施策担当窓口部局の主な業務としては、以下の3つが挙げられる。
被害者等の相談を受けた上で適切なアドバイスを行い、関係機関・専門家等への紹介、庁内関係部局との調整業務を行う。
当該施策を推し進める上で住民への理解促進は重要である。特に地方公共団体にとって広報啓発は、多岐にわたる分野でノウハウを有した業務のひとつであることから、積極的に取り組んでいる事例が見られた。特に都道府県については、広報啓発に重点を置いている傾向が見られる。
当該施策、あるいは安全・安心まちづくり全般にわたる施策を進めていく上で、庁内各部局間の調整や進行管理、計画等の策定に係る検討などを行う組織の運営事務局を担っていることが多い。
アンケート調査の中で、市区町村から多く寄せられた意見として、「当該施策を進めるについて警察がより主体的に取り組むことが望ましいのではないか。」との声が聴かれた。
インタビュー調査の中で、この意見について問いかけたところ、複数の地方公共団体担当者から、警察と地方公共団体の役割の違いとして、「警察では捜査機関としての立場から初期的な支援を行っており、捜査終了後の中長期的な支援まで行うのは困難である。」「地方公共団体では既に福祉・医療・住宅・雇用に関する様々な制度を有しており、これら諸制度を活用して被害者等の生活全般に係る支援を行う意味で地方公共団体も一定の役割を担うことになる。」といったことが聴かれた。
都道府県及び警察署単位で設置されている「被害者支援連絡協議会」等に構成員として参加する、あるいは共同で事務局を担当するほか、施策担当窓口部局単独で事務局を担うところも見られた。
計画等の策定、施策等の進行管理、評価などを行うため、庁内連絡会議等を新設する、安心安全なまちづくりや防犯など関係の深い会議の下に、被害者等支援に関する専門部会を設置するなどの事例も見られた。
各部署の関係者は、部課長級幹部クラスにより構成されるものや、担当実務者クラスにより構成されるものなど、団体によって異なっている。中には被害者等支援に携わる関係機関の相談担当者レベルによる体制が動き出すところも見られた。
小規模な団体では、日常的に部局を超えた横の連携が構築されており、当該施策に限らず、部署横断的な問題が生じた場合には、直ちに声を掛けて関係担当者が集まって対応を検討するなどの環境が整っている場合が見られた。
当該施策を推進するためには、被害者等に関する情報や専門的なノウハウが必要になることから、警察や民間支援団体との連携協力が不可欠である。
都道府県レベルでは、民間支援団体などとの意識共有や連携協力は、日常的に相互の職場を訪問して意見交換するなど、比較的良好に推移しているように窺える。しかしながら、市区町村レベルでは、民間支援団体と積極的に関わりを持っているところも少なく、会員であっても双方がお互いにどのような活動しているのか把握していない場合も見られる。
インタビュー調査対象のほとんどの団体では、当該施策の理解促進や人材育成の目的から、都道府県単位での市町村担当職員研修を実施している。
研修の内容としては、当該施策の理解や意義を伝えるために基本法、国の基本計画の説明、各地域における取組の意義と内容の説明、被害者等本人や民間支援団体関係者の体験に基づく講演会などが挙げられる。
多くの地方公共団体が施策を総合的に推進する一つの手法として、条例・計画等の制定に取り組んでいる。
条例・計画等の策定に際し、多くの団体では国の基本計画に盛り込まれた258施策を参考にしながら、自らの団体が有する既存制度等に落とし込んで施策体系を作成している。その中でさらに補完すべきと認められる施策がある場合には、新規の取組として盛り込んでいる。また、地域の実情に即した独自の切り口を盛り込んだ例も見られる。
条例・計画等を策定するにあたっては、住民に対して計画案等についてのパブリックコメントを実施したり、民間支援団体や犯罪被害者等と意見交換する場を設けたりして、条例・計画等の内容に反映している例も見られた。