岐阜大会:パネルディスカッション

「よりよい犯罪被害者支援のために」~犯罪被害にあわれた方にあなたができること~

コーディネーター:
大野 正博(朝日大学法学部長・大学院法学研究科長)

パネリスト:
安田 貴彦(基調講演者)
鈴木 雅雄(公益社団法人ぎふ犯罪被害者支援センター理事長、弁護士)
松井 克幸(公益社団法人ぎふ犯罪被害者支援センター理事、犯罪被害者御遺族)

(大野) 皆さん、こんにちは。朝日大学法学部長・大学院法学研究科長の大野でございます。先ほどの安田先生の御講演の中で、被害者支援シンポジウムに関する新聞記事が紹介されておりましたが、その紙面において、宮澤浩一博士等と一緒に並んでおりました田口守一博士の私は門下でございます。おそらく、当時のシンポジウムのころの田口博士の年齢と現在の私の年齢がほぼ一緒ではないかと思います。本日、パネルディスカッションのコーディネーターを務めさせて頂くことになり、何か縁を感じております。

 さて、冒頭に、本日の「犯罪被害者週間岐阜大会」におけるパネルディスカッションの進め方を簡単に説明させていただきます。

 本日のテーマは、「よりよい犯罪被害者支援のために~犯罪被害にあわれた方にあなたができること~」とさせていただいております。本日のパネルディスカッション開催においては、事前に各パネリストに主張されたいキーワードをいくつか出していただいております。本日は、当該キーワードにつき、パネリスト1名から概ね5分程度で発表をいただいたうえで、他のパネリストより、それを踏まえ、御意見を伺う形式で進めさせていただきます。

 まず、本日の1つめのテーマですが、「多機関連携による支援体制の確立」でございます。当該テーマに関しましては松井先生より、御報告をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

(松井) はい、よろしくお願いいたします。

 私は、今、お手元のチラシにもありますし、あと御紹介もいただきましたけれども、犯罪被害者の遺族という立場で少しお話をさせていただければなと思っております。

 事件の詳細については今日は時間がありませんのでお話をすることは割愛させていただきますけれども、8年前に妹が殺害されるという事件が起きておりまして、そのときに感じたことをお話しさせていただきたいと思っております。

 私の妹の事件が起きたときには、今日、安田先生のお話にもありましたけれども、ある程度、被害者支援というものが進んで、ある程度、認識されてきた時期だったのかなというふうに思っておりますけれども、すぐさま、まず岐阜県警の警察の支援チームの方が入って支援に当たってくれました。そこからまたすぐに今度はぎふ犯罪被害者支援センターですね、こちらのほうにつないでいただいたということで、最初から、事件が起きてこれからどういうことが起こるのかとか、どういう手続があるのかとか、そんなことを最初に教えていただいております。

 そこから、今度は、どこか犯罪被害者の団体とか、同じ思いをしている人を知りませんか、ということでお尋ねをしたら、今度は「緒あしす」、犯罪被害者の当事者のグループですね、「緒あしす」につないで紹介いただいたといったような連携があったかと思います。これは非常に被害者としては早い段階でつないでいただいたというか、非常に良かったのかなというふうに思っております。

 ただ、その時点ではそう思っていたのですけれども、後になって思いますと、いろいろな問題点があったなというのをちょっと気付くわけですね。例えば、マスコミの被害が最初からすごくあったわけなんですけれども、その対応を一件一件、頑張って一人でやっていたわけなんですね。そのときもし早く弁護士の先生につながっていたら、たぶんそんな苦労はしなくても済んだはずだと思います。そういったところで、弁護士の先生につながるのが、かなり遅れました。大分たってから、ようやくつながったんですが、もうマスコミ対策という部分では、時、既に遅しとなっていました。また、加害者側からいろいろアプローチが来ますけれども、その対応もちょっと後手に回ってしまったというようなところがあります。

 それから、あと思いますのは、やはり一番身近な市町村ですね。自分の住んでいる町。ここで、本当に被害に遭うと、身の回りのことすら、もうやれなくなってしまいます。外に出ることすら億劫になってしまうわけなんですけれども、そういったときに市町村から地元の町や市が助けてくれたらどんなに良かったのかなということを、やはりこれ、後になって気付くわけです、その当時は全然そんなこと思わないんですけれども。

 被害者というのは、本当にその地域で絶対孤立させてはいけない、というふうに思うわけなんですけれども、地元が当時は関わってこなかったというか、本来であれば基本法に地方自治体の責務として定められていますので、本来はやるべきだったのではないのかなと思っていますけれども、やはり当時はそういった支援が全くなかったという状況があります。なので、いろいろな、それぞれ被害者が多いのですけれども、そういった連携した支援というものが本当に必要だなというふうに、今、しみじみと思っています。

 今年、岐阜県に、先ほどもありましたけれども、42市町村、全部の市町村で条例が制定できたわけなんですけれども、まずこの機会に、市町村もしっかり連携に加わっていただきたいというふうに思っていますし、更には県の条例、こちらも早く制定していただいて、県にも広域で見るとか、市町村を教育する立場であったりとかいったことで関わりを持っていただきたいなというふうに思っています。あとは、やはり精神的ないろいろ負担を強いられます。時にはカウンセリングであったりとか、医療の支援も必要になってきますので、そういったところもしっかり連携がとれるような体制をとることが必要なんじゃないのかなというふうに思っています。

 私の場合はまだ本当に良かったのかもしれないんですけれども、ただ、いろいろな被害者の方のお話を聞きますと、「私はそんな支援、なかった」とか、「全然、そういったところにつながれなかった」とかいったような声も聞きます。被害者はやはり、最初にもしかしたら支援の説明を受けていたかもしれませんけれども、やはり聞ける状況であったりとかなかったりとか、やはり気分の浮き沈みがありますし、もしその時だめでも、次の市町村の窓口に行ったときにそういった説明が聞けるとか、そういった、よりタッチポイントが多ければ多いほどいいというふうに思っています。

 そういったことで、より多くの面で被害者を支えられるといったようになることが非常に重要だと思いますので、ぜひとも多機関連携ということをこの条例の制定の機会にぜひ進めていってもらいたいなというのを切に思っている次第です。

(大野) ありがとうございました。今の松井先生の御報告でございますが、被害者遺族の視点での内容でございました。松井先生の御報告のキーワードは、「被害者あるいは被害者遺族を孤立させてはいけない」という点であったと私は感じました。これまでも、被害者を支援する各機関・団体は、それぞれ積極的に活動はされているのだと思いますが、おそらくその連携がより図られていたならば、被害者あるいは被害者遺族にとってはさらに良いサポートにつながっていたのではないかとの御趣旨であると思われます。

 現在、岐阜県においても、被害者支援に関する条例制定に向けての検討を行っておりますけれども、当該条例が制定された場合、岐阜県が各市町村の連携を図る意味において調整・援助の役割を担っていけるような内容になればと願っております。また、それが、被害者あるいは被害者遺族にとって、早急かつ継続的な支援体制を整備する根拠になればと考えております。そのような意味で、被害者支援というのは、1機関あるいは1団体でできるわけではない、という点がポイントになろうかと思います。先ほど安田先生は御講演の中で、この点に関しては、パネルディスカッションで詳細な解説を行っていただけるとのことでしたので、安田先生よりコメントをいただければと思います。よろしくお願いいたします。

(安田) ありがとうございます。講演時間内に収めようと連携の部分ははしょらせていただきました。大事なことなんですが、後にとっておいたという形になります。

 先ほど被害者対策要綱のお話をさせていただきましたが、この中でも多機関連携や民間団体との連携は既に謳われておりまして、そういう意味で申し上げると被害者支援の当初の段階から1つの機関・団体では決して完結しないのだという認識はあったわけであります。

 ワンストップ支援センターということで、性犯罪関係については全都道府県に設置されているということも先ほど御紹介しました。確かに理念としてはワンストップ、できる限り一つのところで支援を、という考え方は正しいのですけれども、これも100%できるはずはないのですね。ワンストップ支援センターと言っても、例えば捜査はできませんし、あるいは安全を確保するというようなことも難しいです。行政が提供するような福祉的なサービスもなかなか簡単にできることではありません。ワンストップ支援センターでも完結しないということで、やはりいろいろな機関が関わり合う仕組みを整えなければならないということでございます。

 基調講演(以下、同様)のスライド【スライド75】を御覧になっていただければと思います。被害者支援連絡協議会という多機関連携のための仕組みが県単位では全ての県でありますし、そして警察署単位でもいろいろな機関が関わり合う協議会が20年近く前に一応全国に整備されてはいるのです。協議会の中には、本当にいろいろな官民の被害者支援に関係する機関・団体が参加しているはずなのですね【スライド76】。その上に【スライド77】、市町村レベル、警察署レベルにおきましても、例えば葬儀屋さんとか、あるいは手話のボランティアの方とか、そういった方々も含めて、多種多様な機関・団体による地域のネットワークを構築していることになっているのです。なってはいるのですけれども、正直な話を申し上げますと、この連絡協議会や地域のネットワークの現状は、年に1、2回集まって、顔合わせをして、「うちはこんなことをやっています」とか、「こんな事件があったときにはこんな支援をしました」という情報交換をするというのが精いっぱいのところなのです。これでは大変もったいないというのが私の認識でございます。

 松井様のほうから、民間団体との連携の話、警察からの紹介のお話しがありましたけれども、先ほどお話しした犯罪被害者等給付金支給法を改正した犯罪被害者支援法では、民間団体との連携が法律で制度整備をされていまして【スライド78】、被害者の同意を得て警察から民間団体に情報を提供する。それによりわざわざ被害者の方から「支援をお願いします」と民間団体に対しておっしゃる必要がなくて、民間団体のほうからアウトリーチできるという仕組みになっているわけなんですね。

 こういった一つの制度整備はしているわけではありますけれども、ただ、先ほど申し上げたように、物足りない部分はいっぱいあります。私は条例の中に連絡協議会等をきちんと書くべきだと思っています【スライド60】。岐阜県で検討されている条例の中でそういったことが検討されているのかどうか私は承知をしていないのですけれども、被害者支援連絡協議会という多機関連携の仕組みを条例にきちんと位置づけるべきだろうと思います。そうしないと、行政だけではなくて民間や事業者の方々も巻き込んで皆さんに意識を持っていただいて、積極的に参加をしていただくということは難しいのではないかと思うのです。加えて、守秘義務というものが非常に大事だと思っているのですね。

 被害者が安心して相談できる、そして多機関で被害者のデリケートな情報を共有できる形をつくるためには、守秘義務を設けて、その関係する構成員の中ではきちんと情報を共有しても構いませんよと。そして、それは外には絶対漏らしませんよという仕組みをつくるということが大事です。そうでないといろいろな機関が関わる中で、被害者が同じことを何度もお話をされるとか、そういう負担も非常に大きいわけですし、被害者も自分が提供した情報がこれで本当に大丈夫かな、と心配になってしまう。それが迅速で円滑な多機関の連携の一つの障害になっていると私は思っています。ぜひこうした条例の整備をしていただきたい、と申し上げ始めてから既に何年か経つのですけれども、まだできている県がございません。連絡協議会を県条例で定めたところは宮城、富山、滋賀の3県であるのですけれども、いずれもまだ守秘義務までは設けていないのですね。何とかそうした制度整備をしていただけるとありがたい、というのが私の切実な思いでございます。以上です。

(大野) ありがとうございました。岐阜県でも、いま説明のございました被害者支援連絡協議会は存在しておりますが、安田先生から御指摘がありましたように、重要な点は条例を制定して、明確にその根拠を示すべきであり、また守秘義務をしっかりと保障するという点であったかと思います。

 なお、安田先生のコメント、あるいは先ほど松井先生の御報告にもございましたが、私もワンストップ窓口の設置も重要ではないかと感じております。犯罪被害者あるいは被害者遺族にとって、突然の犯罪被害に遭われた際に、何処にどのようなことを相談したらよいのかわからない場合は少なくないと思われるからであります。

 そこで、2つ目のテーマは、「センターの役割と支援体制」とさせていただきました。現在、岐阜県におきましては、「ぎふ犯罪被害者支援センター」がこの点の対応を行なっているわけですが、その中心的役割を担っておられるのが、鈴木先生でございます。先ほどの松井先生の御報告も踏まえつつ、「センターの役割と支援体制」について、鈴木先生より御報告いただきます。よろしくお願いいたします。

(鈴木) 鈴木でございます。今、松井さんが言われたように、被害者と弁護士とか医者とかつながりがすごく難しいのですね。15年ほど前にはそういう形で立ち上げということで僕も参加しまして、お医者さんと臨床心理士さんと弁護士と三位一体でその準備から立ち上げまして、平成16年にこのセンターができたのですね。できたのですが、“弁護士”と書いたように、弁護士というのは司法試験もそうなのですけれども、刑事弁護なのです。弁護士という名前を聞くと分かるように、“弁護”という言葉自体は加害者弁護です。弁護士は、そもそも被害者支援を考えておりません、司法試験段階では。

 僕が入ったのは、たまたまここに書いてあるように、テーマが犯罪被害者支援ということで中部弁護士会連合会というものがそういう軸を立ち上げました。それで設立準備に関わったのが初めてでして、僕もそれまでは被害者は単なる客体だと思っていました。加害者の弁護をするに当たっての弁護士が、とにかく量刑段階でそれを低くすればいいのだと。弁護士は、それくらいの感覚しかないんです。未だに、弁護士の中では加害者弁護が多数でして、被害者支援をする弁護士はごく少数だと思います。日弁連の委員もしましたが、被害者委員会の意見は通りません、ほとんど、長い期間おりましたが。だけど、今回、条例の制定に向けてやっているのですが、先ほど言われたように弁護士も精通弁護士なのか、そうではないのかで違ってくるんですね。この刑事手続がかなり変わってきました。もう15年は経っておるのですが、まだまだそれを知らない弁護士さんが多いのです。そうしますと、松井さんはそういう弁護士さんに出会ったとしても、本当のいい情報が得られない。これは悲惨なことですね。

 センターとしては、やはり被害者に特化した、被害者のためのセンター、こういう趣旨でやっておりますので、そこに登録されている先生は被害者支援に精通している弁護士さんがいます。そうなりますと、松井さんが言われたように、すぐ来られれば、「これこれこういうことができますよ」という、選択肢を与えることができる。これは大切です。

 残念ながら、そういう弁護士さんに当たらないと、自分がやるべきことができなくなってしまって、もうあとからでは遅いよと。なぜかといいますと、裁判員裁判で被害者側に付く弁護士というのはすごく少ない。これはなぜかというと、知らないんですね。ほとんど、僕は加害者弁護の逆側の席に座っているのですが、そのときにいろいろなことを言ってあげないと、先ほど松井さんが言われたように被害直後って分からないんです。中津川中2の中学生の殺人事件、4人で飛んで行きました、中津川に。そういうときにも被害者の方はまったく覚えていない。「弁護士さんが来たよね」ということくらいは分かるんだけれども、何を弁護士さんが言ったのか、覚えていないんです。被害者というのは、被害直後、裁判、裁判が終わった、それで変わっていくんですね。そのときに的確な助言をするべき者がいないと、遅いんです。

 よく裁判員裁判で、公判前整理手続が参加できません、被害者側は。来られても、公判前がずんずん進んでいってしまうと、検察官の意向で済んでしまっているんです。途中から入っても、もはや、変えれませんよ、と言われちゃうんです。今回、この制度ができたのは、検察官というのはあくまで被害者の味方ですよ、という、そういう趣旨でおられるんですけれども、この制度ができるまではそうでなかったんです。そこに犯罪被害者支援弁護士が入ることによって、公判前に、僕は毎回やるんですけれども、裁判員裁判においては、公判での裁判員の集中審理を可能にするため、公判前に裁判官、検事、弁護人の三者が公判前整理手続を行いますが、そこには犯罪被害者は参加できませんので、公判前整理手続期日ごとに、その後に必ず検事さんと打ち合わせをします。そうしておかないと被害者に反映しない。そうすると、そういう先生が、松井さん、当たらなかったら、多分、今も後悔しているかなと思いますので、そういうために役割としてはセンターがあることによって、アクセスしやすいような状況ができたということは、センターの役割としてはいいかなと思っております。以上です。

(大野) ありがとうございました。私が学生の頃に、やっと「被害者学」という用語が、法学部における刑事政策の講義等で用いられるようになってきたのですが、それでもなお、当時は、「刑事事件における弁護人の役割は加害者側弁護が中心であり、被害者のサポートをするのは、あくまでも損害賠償の側面としてである」との完全に分化した考え方が強かったように記憶しております。

 また、講学上、「犯罪は、加害者と被害者の共同作品」との比喩が用いられることがございますが、事件において被害者は当事者であるにも関わらず、刑事手続においては、当事者としての地位が従来、十分に保障されてこなかったと私も感じております。

 先ほど、安田先生の御講演にもございましたが、現在、わが国においても、「被害者学」の議論がかなり進んできたとのことでしたが、鈴木先生の実務に携われている感覚ですと、たとえば、公判前整理手続の段階で被害者が十分に関与できない等、まだまだ発展途上であるとのことでした。

 また、鈴木先生の感覚としては、実務において、被害者の地位が十分に確立してこなかったが故に、被害者支援に特化した弁護士の育成も遅れてきたように思われるとのことでしたが、松井先生は、御自身の経験を踏まえ、この点につき、何かコメントがあればよろしくお願いします。

(松井) はい、そうですね、確かになかなか被害者支援に精通した弁護士の先生にはつながらないというのが現実に、多分、おそらく今もあるのではないのかなというふうに思っていますけれども、やはりいろいろ法学部の授業ですとかロースクールの授業ですとか、そういった中でぜひとも被害者に対する教育を取り入れていただいて、そういった精通弁護士の方が増えてくるということを願っております。

(大野) ありがとうございました。鈴木先生の御報告にもありましたように、「ぎふ犯罪被害者支援センター」においては医師、臨床心理士等も参加しており、様々な視点でのサポートがなされているとのことでしたが、鈴木先生の御見解としては、何より弁護士による法的側面での支援が必要であり、重要であるとの御意見でした。そこで今一度、この点につき、鈴木先生よりコメントをいただければと思います。

(鈴木) 先ほど申しましたように、法的手続、何ができるかという面から言わなければいけないものですから、基本的には、皆さん、刑事事件と民事事件という、棲み分けは分かりますよね。刑事事件というのは、国家刑罰権の発動として罰を与えるというものなのです。そうなりますと民事が残ってしまう、原則を言いますと。民事賠償の民事事件としてできないということになっていきますと、基本的には、今、刑事手続のほうはかなり進んでおるんです。だけど、民事賠償のほうが全く進んでいないと思うと、損害賠償命令制度はできたんだけれども、僕は毎回セットでやっています。裁判員裁判に基本的に参加します。手続が難しいものですから、分かりづらいのですね。国選被害者参加は起訴後です。それまで法律援助事業という、日弁連がやっているのですが、3つの制度があるものですから、その制度に精通しないと分からない。そうすると、起訴後は国選ができる。今度、判決まではやるんだけど、判決後、今度、扶助制度になってくるんです。3つの制度があるものだから、どこでやるのだか分からない。

 僕は、裁判員裁判に付くのであれば、必ず損害賠償命令までセットでやりましょう、と言うんですけど、未だに、この事件番号ってあるのですが、その中で“損”と書いて何号と書く。それが、僕は損1号、2号、3号やって、あとなしです。年間で損の事件番号が3しかないです。刑事、民事を融合するような制度があるにもかかわらず、それを知らないがためにやっていない被害者の方が多いと思っていますので、そこら辺は的確なアドバイスをしながら援助をしていくということは必要かと思っています。

(大野) ありがとうございました。鈴木先生の御意見は、刑事手続における犯罪被害者支援は、損害の賠償とセットで進展しないと真の意味での被害者救済、あるいは被害者遺族救済ではないということであったと思われます。

 なお、事案によっては、損害の賠償が十分になされないこともあり、その意味では、国等の支援の充実もさらに必要な場合もあろうかと存じますが、この点につき、安田先生はどのようにお考えでしょうか。

(安田) 今回のシンポジウムの主題は「地域でできること」なので、国の制度に関わることについては、私からは割愛させていただきたいと思います。長年議論してきてなかなか解決のつかない問題もあります。私自身が長年やってきて思うのは、犯罪被害者については、今までへこみ過ぎていたというか、余りにも配慮されていなかったことが沢山あったわけですね。例えば、刑事裁判の関係で申し上げるならば、公判の日程すら被害者に知らされていないというような時代もあったわけです。余りにもひどいじゃないか、と思うようなことが次々と解決されてきたわけでございますけれども、ただ、現在の第3次計画くらいの段階になってくると、様々な価値とか権利などとの調整を図らないとできないようなことが多くなってきていると思います。それだけ、被害者支援が進展してきたからとも言えるかも知れません。

 また、刑事司法の関係で言うならば、先ほど申し上げたように、警察はまさに被害者支援というのは本来の警察の責務だということを25年も前に位置付けているわけですし、検察においてもある検事総長が「被害者と共に泣く検察」ということもおっしゃったこともあるように、まずは警察や検察というのは被害者のサイドに立って事を進めるというのは当然のことでなければならないと思っています。

 ただ、それでも全部のことができるわけではありませんで、民間の被害者支援団体が行うことというのは非常に大きな役割を果たしていると思うのですね。法的なことでも基本的な情報提供は民間団体でも提供ができると思いますし、また弁護士さんにも紹介できると思います。

 民間団体の特質として、私は7点くらい特徴を挙げて整理をしています。【スライド58】まずは、あらゆる被害者のあらゆる問題に対応するというのが民間団体だと思います。例えば、ワンストップであれば性犯罪だけですよ、ということになるのですけれども、あらゆる種類の犯罪被害者に対して対応するということ。地域に根差した中長期的な支援を行う継続性・持続性というものも民間団体の特質です。専門的な機関というのは被害者の一局面では関わるのですけれども、生活者としての被害者にずっと関わるということができるのはおそらく市町村と民間団体くらいだろうと思います。それと、専門職とか官ではできないような支援。例えば「20年前に被害に遭いました」ということになると警察にできることはほとんど無いわけですけれども、それでも民間だったら精神的な支援とか、あるいは同じような被害に遭った方々との集まりを設定するということもできる。そういう専門的機関のできない隙間を埋めるということができます。あとは敷居が低いということ、アクセシビリティと書きましたけれども、無料ですし、対等な一市民としての関わりですから、相談しやすさというのがあると思います。“非専門性”と書きましたけれども、専門家を前にして、失礼な言い方になるかも知れませんが、専門家というのは下手をすると、要するに自分が金槌を使うのが得意だと、全部、釘に見えてしまう。そういう整理の仕方をしがちな部分が、自戒も込めて思うのですけれども、専門家が陥りかねないところです。専門家ではないからこそ、一市民として共感してできるということがあると思っています。経済性は、ちょっと言い方は悪いですけれども、ボランティア団体ですから、やはりコスト的にも安い。ボランティアは「ただでいい」と言っているわけではないですよ、実費や最低限の日当は賄われるべきですけれど、公務員や専門職よりは費用的にはかからない、そういう面がある。それから、何からの業界団体とか、どこかの利益を代弁するのではなくて、ただ被害者の立場に立って発言できる、ここが民間団体のある種の強みであり、他では代え難いものだろうと思います。この民間団体がもっともっと財政的にも人的にも力量を高めていくということは被害者支援にとってものすごく重要だと思います。

(大野) ありがとうございました。では、仮に鈴木先生が求められる被害者支援に特化した弁護士の育成が今後進められた場合、次に課題となってくるのが、被害者あるいは被害者遺族にとって、最寄に相談できる場所が確保できているかという点であろうと思います。現在、法学部での教育だけでなく、法科大学院、司法修習の段階においても、「被害者学」あるいは「リストラティヴ・ジャスティス(Restorative Justice:RJ)」に関する教育が進められていますが、岐阜県の被害者あるいは被害者遺族の相談場所の確保の現状につき、鈴木先生はどのようにお考えでしょうか。

(鈴木) はい、条例が近々できるかと思うのですが、県内全域でこのセンター、1つなのですね。岐阜市でやっているのです。そうなりますと、迅速な対応ができない。さっき、中津川に、僕、行ったと言いましたね。かなり遠いんですね、2時間半くらいかかるのかな。行ってやっていてもあまりできませんしね。

 どっちにしても、基本は、岐阜市1つではもうまずい。現在、センターでは月1回、移動相談車、多治見と高山でやっています。これが広がっていけば、県条例ができて、市がそれに連携していくことによって、東濃であれば多治見市さん、飛騨であれば高山市ですね。そこが協定し、支部的なものをつくっていけばですね。また、センターはそこの地域の方をスタッフにしていくということにすれば、その地域で動きますね。

 精通弁護士、なかなか支部にはいないものですから、そうなりますと弁護士自体も支部に常駐するような支援弁護士さんの、専門的なことができるような方を育てていけば、岐阜市だけでないよと。高山、多治見で起こったこと--東濃って、僕、昔から印象があるんだけれども、凶悪事件が多いんです。個人的か分からないんだけれども、東濃には必ず、僕はやはり被害者支援に特化したようなものが絶対必要だと思いますし、高山でも要りますので、まず岐阜市以外に東濃と飛騨。大垣なんかはもう岐阜市に近いのでいいのですけれども、だから、まず2つくらいはつくっていかないとやりようがないかと思っています。以上です。

(大野) ありがとうございました。現段階では、今後の課題という位置付けになろうかと思いますが、人材の育成と相談場所の確保が重要であるとの内容であったかと思います。

 この点につき、安田先生も御意見があるようですので、よろしくお願いします。

(安田) 被害者支援というのは、本当に人と人とのつながり、絆の問題ですから、実際に会ってお話しする、触れ合うことが大事だということは確かにそのとおりですね。

 ただ、現実問題として考えたときに、人的資源、財政的資源を確保するのは難しい部分があります。何とか頑張らなければいけないのですが、東京都でも被害者支援都民センターがようやく立川に1つ拠点を持っているという状況ですし、北海道も、あの広い北海道で北見方面に別の団体がありますけれども、それと札幌だけなんですね。ですから、目指すべき理想にはかなり遠いというのが実情でございます。

 そこで、理想の追求を諦めるわけではないのですけれども、現状を補う手段・方法を検討しなければならないのではないかと私は今思っていまして、その方法の一つが「デジタル化」であります。特にコロナの時代になって、皆さんが集まるのも大変です。例えばピアサポートグループで集まるのも憚れるという状況ですし、面接相談をされるボランティアの方々にも非常に大きなリスクを負わせることにもなりますので、例えば、今、皆さんもかなりオンラインの会議とかリモートの飲み会とかやっておられると思いますけれども、こうしたデジタル技術のツールをもう少し被害者支援にも活用していいんじゃないかと思うんです。別にデジタルだからって冷たいものじゃないと思いますよ。技術があるからこそ初めてできることも多いんですね。例えば、公判廷のビデオリンクによる被害者の証言なども、そういう技術があるから初めて法廷に実際に出廷しなくても被害者を保護しつつ、目的を達成することができるわけなんですね。こういったことをぜひ考えていく必要があるのではないかなと思っています。

 今、被害者支援ネットワークでもアプリをつくろうかということも検討しているのですけれども、こういったことも一つのヒントとして考えていただければありがたいなと思います。

(大野) ありがとうございました。実は、コロナ禍において浸透したデジタル技術の進歩は、今後、感染拡大が収束した後も、被害者支援に活用していくべきではないかと私も考えておりました。先ほどの鈴木先生から示されました人材育成と場所の確保が充実されるまでの間、まさにこの点を如何に用いるかが鍵になってくると思います。但し、デジタル技術の活用については、併せてセキュリティの問題をクリアする必要があろうかと存じます。つまり、犯罪被害者のプライバシー等、高度な個人情報が関連しますので、セキュリティが脆弱ですと、二次的な被害が生じる危険性も否定できません。

 では、この点に関連して、3つめのテーマでございますが、「二次的被害の防止」に移らせていただきます。当該テーマにつきましては、松井先生より御報告いただきます。よろしくお願いします。

(松井) 二次的被害ということですけれども、まず、私は自分のこういった事件があるまで、二次被害というものはこんなに大変なものだということを全く知りませんでした。ただでさえ大切な家族を殺されまして、悲しみのどん底にいるわけですね。そこに更に追い打ちをかけると。被害者を苦しめるというのがこの二次被害だと思います。

 例えば、ちょっと例を挙げてみますと、警察が何か発表する。加害者の供述をそのまま発表する。それ、実際、事実と違っていたりするわけですね。個人情報が流れる。マスコミの方も根拠のない、曖昧な記事を書いて、それがまたテレビで流れる。そこから世間の人は、会社なんかもそうですけれども、勝手なストーリーを組み立てて、それを想像して、それが広がっていく。今、ネットの話も出ましたけれども、今、本当にネット等でワッと広まってしまう、というのが実際に起きることです。

 実際の被害プラス、この二次被害が相当大きなもので、それに対して、とにかくもう「悪いのは加害者なんだ」ということで強く思えればいいんですけれども、実際のところは、そういった風評ですとか広まって、「普段の行いが悪かったからなんじゃないのか」とか「被害者にも原因があるんじゃないの」とか「被害者も悪いんじゃないの」といったようなことまで言われるようになるわけです。そこまで行かなくても、ただ単に好奇な目で見られたりとか、または避けられたりとかいうことで、本当にちょっと疑心暗鬼になっちゃって、外に出られない、世間からも距離を置いてしまう、家から本当にもう出られなくなってしまうというようなことが起こるわけです。そこから先は、更には自分が犯罪被害者であるということすらも言えなくなる。それすら言うことが憚られるような、そんな状態になるんですね。実際、世間というのはそんなものなんじゃないのかなというふうに思っています。警察の捜査ですとか、マスコミ報道とか、風評ですとか、世間とか職場のその無理解とか誤解とか偏見とか、いろいろなことから二次被害が起きて、被害者の被害回復を更に遅らせるというような状況が起きているかと思います。

 これに対しては、今回、条例ができたものですから、これがしっかりいろいろなところで啓蒙活動、教育活動、啓発活動といったようなことにつながって、世間がしっかり犯罪被害に対して正しい理解をするということを行っていくことが大事なのかなと思います。多分、正しい理解がされれば、そういったことは、二次被害は起こらないと思うわけですね。例えば、今、コロナ禍ですけれども、最初、コロナが全くどういったものか分からないときにはコロナのいじめがあったりとか、コロナ差別があったわけですけれども、今、ある程度、コロナがどんなものかしっかり分かってきて、皆さんがコロナを理解してきたからこそ、今そういった差別的なものはなくなってきていると思います。コロナが非常に身近になったからですね。これと同じように、犯罪被害に対してもしっかり世間に正しい理解をしてもらうということがこの二次被害を防止するということにつながるかと思いますので、そういった活動を今後強化いただけるとありがたいなというふうに思っております。

(大野) ありがとうございました。現在、少年法適用年齢の引き下げに伴いまして、加害者の実名報道の是非が議論されておりますが、加害者だけでなく、被害者についても、報道のあり方については、十分に議論をしていく必要があろうかと思います。

 事件・事故に関し、市民が情報を得ることは非常に重要でありますし、その意味で、メディアの役割は非常に大きいものと思われますが、同時にその与える影響力の大きさについても考える必要があります。つまり、報道のあり方によっては、「被害者にも落ち度があったのではないか」との推測を市民に働かせてしまうと、現代社会においては、リアル、バーチャルを問わず、妙な興味関心や正義心で加害者だけでなく、被害者をもバッシングする現状があることは否定できません。

 また、真の意味での被害者支援に関する知識が啓蒙されないと不必要な憐れみ等が被害者や被害者遺族になされる可能性もあり、これがさらに被害者等を追い込む場合もあり得ます。そのため、家庭あるいは初等・中等教育機関における教育が重要になってきますが、同時に大人に対しても、教育を施すことが必要な時代であると感じます。この点につき、安田先生はどのようにお考えでしょうか。

(安田) ちょっと難しい言葉なのですけれども、“公正世界仮説”という言葉があります。これ、何を言っているかザックリと申し上げますと、結局、この世界というのは正しいことをしていれば正しく自分も幸せになれるのだ、という一つの仮説です。割とそんな風にみんな信じていると思うのですけれども、しかし、率直に申し上げて、どんなに立派に真っ直ぐ生きていた方でも被害に遭ってしまうことというのはあるわけなんですね。ところが、自分が真面目に生きていると、そんな目に遭うとは思いたくないものですから、そんな被害に遭った人というのは、何か、例えば不道徳なことをやっていたのではないか、変なやつと付き合っていたのではないのか、あるいはふしだらな生き方をしていたのではないかと考える。つまり自分とは違うと思いたいわけですね。自分とは違うと思うと、「あの人は自分と違うし、私はそんな生き方をしていないから大丈夫だわ」という、そういう安心感を得たいという、そういった心理というのが意外に人間の中にみんなあると思うのですね。

 だから、例えば性犯罪なんかでも「被害に遭ったほうが悪い。なんでそんな夜中に出歩いているんだ」とか、「なんでそんな男の車に乗っちゃうんだ」とか、「酒飲んで酔っ払って」みたいな、そんなことで被害者を責めてしまうということがありますけれども、悪いのは犯罪者です。一万歩くらい譲って、もうちょっと注意したほうが良かったんじゃないか、というのはあるかもしれませんけれども、でもそれは犯罪ではないですからね。犯罪を犯したのは犯罪者です。ということをきちんと、広報・啓発していかなければいけない。今日もいい機会だと思いますけれども、そういう本当に正しいものの見方というのをお伝えしていかなければならない。「私も被害に遭うかもしれない」と思うのは誰にとっても結構つらい面もあるとは思いますけれども、でも現実ですし、そういった被害に遭った人達は、私達と同じなのだということを理解していくということはとても大事なことだと思います。

 先ほど教育の話もありましたけれども、県で条例を定めるというのは教育にとっても大きな話かなと思うんです。と申しますのは、教育委員会は、ある種独立した機関でありますので、知事部局がこう言ったからということで直ちに動くとは限らないわけですから、そこは条例ができることによって教育の現場においても被害者の問題を取り上げやすくなるし、取り上げる気持ちにもなってもらえるのではないかと思います。

 あとは広報・啓発という意味では、先ほどのインターネットとかデジタルの話にもつながってくるのですけれども、全国被害者支援ネットワークでも私が提案させていただいて「もっと発信していこうよ」ということで、FacebookとかTwitterでも発信するようになりました。各地のセンターではなかなかそこまでのことはなさっていないところが多いようですが、SNSは結構、効果ありますし影響力大です。特に若い人に伝わるという意味で非常に大きいですし、あまりお金もかからないんですね。また、大学生の方とか若いボランティアの方々に手伝っていただけるとか、そういったことでも非常に大きな効果を上げていくのではないかなと、一つのアイデアとして思っているところです。

 そうして手法やツールも工夫して、繰り返し繰り返し、被害者の立場、あるいは被害者の置かれている状況、そしてそれに対して各人に何ができるのかということをいろいろな角度から、あの手この手でお伝えてしていければなと思います。

(大野) ありがとうございました。今後、岐阜県におきましても、犯罪被害者支援に関する条例が制定されれば、メディア情報リテラシー(Media and Information Literacy)も含めて、教育・広報等が行ないやすくなるのではないかとの御意見であったと思います。

 最後になりますが、「ぎふ犯罪被害者支援センター」において、これまで二次被害に関する相談等がなされたケースがあれば、その対応方法も含め、御紹介いただければと思います。

(鈴木) いや、特に二次的被害、僕、相談員ではないものですから、相談員の中には二次的被害があると思うのですが、やはり相談員自体も二次的被害を与えてはいけないということで、そこらは気を付けてやっておりますね。

 二次的被害で酷いものは、犯罪的なもので弁護士の必要性があれば相談員さんのほうから「こういう被害がありましたよ」ということで訴えがありますので、それは対応できるのですけれども、そこら辺が法的な面でそこまで行かない場合にはなかなか難しい面もあるので、それに関してはなかなかコメントしにくいなと思っています。

(大野) ありがとうございました。今後、私たち市民も、被害者や被害者遺族に対する配慮を十分に行なっていかなければならないと思います。

 ここで、松井先生から、御意見があるようですので、よろしくお願いします。

(松井) すみません、よろしいですか。今、「支援する側も気を付けなければいけない」というお話があったので、少しだけ発言させてもらおうと思いますけれども、本当に支援する側だったり警察だったりとか、そういったところからやはりつらい思いをさせられるということも現に起きます。当然、先ほどから言っていますけれども、隣近所の人だとか周りから受けることもあります。例えば、先ほど大野先生が「犯罪は加害者と被害者の共同作品だ」とおっしゃったのですけれども、被害者は共同作品だなんていうことは一切思っていなくて、別につくろうと思って、そんな犯罪に巻き込まれているわけではないものですから、そういった言葉一つとっても、やっぱり違和感をすごく感じるわけです。なので、そういった部分はちょっと配慮いただきたいなと思います。

 あともう一つは、例えば市町村なんかも、こういった被害者の支援、人権を守るということは責務としてあるわけなんですけれども、そこで何もしないということ自体が、なんていうか、被害者にとってみれば、それ自体が二次被害のようなふうにも取れてしまうわけですね。なので、そういった部分で見て見ぬふりをするとか、そういったこともないように、そんなことがないような社会になるといいなと思っています。

(大野) ありがとうございました。私の説明が不十分だったのだと思いますけれども、先ほどの比喩については、その前後の脈略からして、通常であれば講学上の意味を誤解される方は、まずいないと思われますが、松井先生から御指摘がありましたように、たとえ講学上の比喩であったとしても、被害者や被害者遺族によっては、配慮が足りないと感じさせる面があることを改めて学ばせて頂きました。反省したいと思います。

 さて、本日は、さらに多岐にわたり、パネリストの先生には御議論をいただければと思っておりましたが、司会の不手際で、時間の関係上、パネルディスカッションは終了となります。

 最後に簡潔に本日のパネルディスカッションについてまとめさせていただきます。本日のパネルディスカッションを通じ、事件・事故は、誰にとっても、決して対岸の火事ではないということを、まずは、みなさんに理解していただければと考えております。日常生活において、誰も事件・事故の当事者になろうことは考えていないかと思いますが、誰が、いつ当事者になってもおかしくはありません。また、事件・事故は、私たちが生活している社会で発生していることであり、まったくの他人事ではないのです。「もし、自身が犯罪・事故に巻き込まれたら」ということを意識し、今後、市民として被害者支援において何ができるかを考えるきっかけに本日のパネルディスカッションがなっていればと願ってやみません。

 本日、長時間にわたるパネルディスカッションにお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。パネリストの先生にいま一度、大きな拍手をしていただければと思います。ありがとうございました。

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