第2節 科学化する捜査活動

 近年、都市化の進展等に伴い、聞き込み捜査等による「人からの情報」が得られにくくなっているとともに、犯罪の巧妙化、犯行の広域化が進みつつあるなど、犯罪捜査を取り巻く環境は困難化の一途をたどっている。
 このような情勢に対処し、迅速、的確な捜査活動を推進していくためには、まず、犯人が犯罪現場等に遺留した物やこん跡から得られる「物からの情報」の活用度を高めることが重要である。そのため、物的資料の採取、分析、鑑定業務の精度の向上をより一層推進し、従来利用が困難又は不可能であった微物等の資料を有効に利用できるよう、科学技術の活用の高度化を図っている。
 また、広域化しつつある現代の捜査では、各種の捜査情報を広範な地域から収集し、組織的に分析することが必要である。しかし、これらの膨大、多様な情報は、もはや人力によって処理することは極めて困難になっており、コンピュータを用いて大量高速処理を行わなければ効率的な捜査の運営はできなくなっている。このため警察では、利用目的に最適のソフトウェアの開発を行い、コンピュータで分析、照合する新しい捜査手法の導入を進めている。

1 捜査資料の科学的な収集、分析、鑑定

 犯罪捜査においては、犯人に結び付く現場資料をより多く採取することが事件の早期解決と捜査の科学的裏付けの確保につながる。また、採取した資料の分析、鑑定の結果は証拠として使用されることが多く、分析、鑑定は最高の精度を保っていなければならない。さらに、血液、毛髪等の法医、理化学鑑定の件数は、表1-3のとおり年々増加しており、分析、鑑定の迅速化が必要である。

表1-3 法医、理化学鑑定件数の推移(昭和55~59年)

 このため警察では、各種の装備資器材を利用して犯罪現場における資料の発見、収集等の現場鑑識活動を迅速、的確に行うとともに、警察庁の科学警察研究所や都道府県警察の科学捜査研究所(室)において、高度な鑑定技術の活用、開発を進めている。

(1) 遺留された指紋、足跡は残らず採取
 近年、犯罪の巧妙化が進み、犯人は指紋、足跡を現場に明白な形で残すことが少なくなってきている。警察では、検出や採取が困難な指紋、足跡も利用できるように、新しい採取方法の開発と活用に努めている。
ア 採取困難な指紋、足跡に対する新手法
 佐賀県警察が開発した、ポリエチレンや粘着テープ等の粘着面に付着した指紋の採取法は、シアノアクリレート(瞬間接着剤と同一成分)の気化ガスによって指紋が白色化する現象を利用したもので、国内はもとよりアメリカ等諸外国にまで広く普及している。
 また、警視庁で開発した静電気足跡採取器は、単3型乾電池4本で7,000ボルト以上の強力な静電気を発生させることにより、畳やじゅうたんの上に残された足跡の採取を可能とするもので、全国で現場足跡の採取活動に活用されている。
〔事例1〕 6月2日、六ヶ所村で発生した郵便局強盗事件で、現場に残されたポリエチレンの袋から、シアノアクリレート法により鮮明な指紋の採取に成功した。直ちに保管資料と照合した結果、会社員(28)の右手親指と確認された。発生後13時間で逮捕(青森)
〔事例2〕 10月4日、徳山市内のスーパー・マ一ケットで発生した強盗致傷事件において、静電気足跡採取器を活用して現場から採取した足跡を、別の窃盗事件で逮捕した無職者(35)の運動靴の靴底の紋様と照合したところ、同一と確認された。11月26日逮捕(山口)
イ 検出困難な指紋のレーザーによる採取
 警察では、企業や大学等と共同して、レーザー光線を照射して指紋を検出する装置の本格的な研究、開発に取り組んでいる。
 これまでの研究では、従来、検出が困難であった皮革製品や新建材等に残された指紋でも、レーザー光線を照射するとレーザー光とは別な蛍光を発し、写真撮影によって採取できることが判明している。今後は、早期に犯罪捜査に実用化できるよう、実験を進めるとともに、微量の血こんや土砂等の微物の検索にまでその活用範囲を拡大するための実験も行っていくこととしている。
(2)血液型の鑑定
 血液の異同識別については、ABO式(4類型)、MN式(3類型)、ルイス式(3類型)、P式(2類型)、Rh式(18類型)等の血液型、Hp型(3類型)等の血清型、PGM型(3類型)等の赤血球酵素型を組み合わせることにより、精度の高い鑑定を行っている。また、血こんからも、血液型のほか、血清型、赤血球酵素型も鑑定できる。
 さらに、血液型は、血液からだけではなく、だ液、精液、汗、尿や毛髪等からも鑑定することができる。特に、毛髪からの血液型検査については、酵素免疫反応を利用して毛髪中に含まれる血液型抗原を発色させる方法を科学警察研究所において開発し、従来、数センチメートルの長

さの毛髪が必要であったものが、数ミリメートルのごく短い毛髪から血液型を鑑定することが可能となった。
〔事例〕 昭和58年12月24日、三重県で、死体をバラバラに切断して遺棄する殺人、死体遺棄事件が発生した。科学警察研究所では、死体の一部が入っていたポリバケツから採取された頭髪を、血液型、形態、構成元素等について分析し、それが被害者のものではなく、犯人のものであることを明らかにした。
(3)ミクロ資料からの事件解決
 繊維片、塗膜片、金属片等の微物については、現場において積極的に採取し、各種の高性能分析装置を活用して物質の分子あるいは原子レベルまでの精密な成分分析、異同識別を行うとともに、コンピュータを利用した高度な分析、鑑定を行っている。近年、これら高性能分析装置の精度が向上しており、より微小な資料も活用できるようになってきている。今後更にこれらの装置の整備を進める必要がある。
ア 高性能分析装置による分析、鑑定
(ア) X線マイクロアナライザー
 繊維片、塗膜片、土砂、鉱物、金属、爆発物の残さ等の資料に電子線を照射して放出されるX線を測定することにより、その成分元素を分析するものである。
(イ) 放射化分析装置
 金属、弾丸類、塗膜片、インク等の資料に中性子等を照射して放出される放射線を測定することにより、その成分元素や量を分析するものである。
(ウ) ガスクロマトグラフ質量分析装置
 農薬、医薬品、覚せい剤、石油製品等の資料を気化したものに電子衝撃を与え、これをイオン化させて得られる質量スペクトルを測定するこ

とにより、その成分や構造を分析するものである。
(エ) 熱分解分析装置(キューリーポイント・パイロライザー)
 ゴム、塗膜、合成繊維、プラスチック等の不揮発性物質である高分子化合物をガスクロマトグラフ質量分析装置で分析できるようにするためのものであり、これらの化合物を特殊な強磁性体ホイルに包み、高周波電源を加えることにより、わずか0.2秒でガス化する。
(オ) 微量薬物抽出装置
 科学警察研究所が開発した、尿や血中に含まれる麻薬、覚せい剤等の微量薬物を自動的に抽出、精製する装置で、多数の検体を短時間で処理

できる。
〔事例1〕 10月4日、堺市内のスーパー・マーケット駐車場において発生した殺人事件で、被害者の着衣について、殴打箇所をX線マイクロアナライザーによって分析、鑑定したところ、凶器である丸太棒の炭化部分の炭(カーボン)の付着が確認され、凶器の特定に寄与した。10月8日無職者(38)を逮捕(大阪)
〔事例2〕 ゲルマニウム含有と称したか粒を、体力増進剤として売りさばく事案が発生した際、そのか粒についてゲルマニウム含有の有無に関する鑑定を委嘱された科学警察研究所では、放射化分析装置等を用いて分析し、ゲルマニウムの含有が認められないことを明らかにして、事件の解決に寄与した。4月10日薬事法違反で1法人1人を検挙(愛知)
〔事例3〕 8月28日、大麻取締法違反で逮捕した飲食業者(29)と無職者(28)の尿をガスクロマトグラフ質量分析装置を使用して分析したところ、これまで尿検査では使用の事実を立証した例のないコカインの検出に成功した。9月13日麻薬取締法違反で逮捕(警視庁)
イ ミクロカラー測定検索システム
 ひき逃げ事件では、現場に残された微小な塗膜片が加害車両割出しの有力なかぎとなる。従来、現場から採取した塗膜片と約1万3,000枚の車両塗装見本とを手作業で照合していたが、警視庁科学捜査研究所において、色差計とマイクロコンピュータを利用して迅速、確実に容疑車両を割り出すシステムの開発に成功した。これにより、従来1~2日を要した検索時間が約20分と大幅に短縮されるとともに、従来の約6分の1の直径約0.2ミリメートルの塗膜片も測定可能になるなど、ひき逃げ事件等の捜査に飛躍的な向上がみられた。
 今後は、昭和59年中に試験導入した警視庁に続いてこのシステムの全国的な導入を図ることとしている。
〔事例〕 2月11日、東村山市内で発生した死亡ひき逃げ事件において、現場に残された微小の塗膜片を基に、ミクロカラー測定検索システムを利用して容疑車種等を約20分で割り出し、スピード解決した。2月13日逮捕(警視庁)
(4)写真、映像の活用
 写真は、犯罪捜査に広く活用されている。現在、撮影に紫外線、赤外線等を使用するなど、最新の写真技術を応用しているほか、コンピュータを利用する高度な写真鑑定の研究、開発も進めている。
ア 赤外線応用装置(熱線写真サーモグラフィー)
 大規模な爆発、火災事故においては、事故原因を究明するため、被写体の赤外線エネルギーの残存熱量を測定し、その温度差を色調で表す赤外線応用装置(熱線写真サーモグラフィー)を用いて事故現場を撮影し、爆発、出火部位を特定している。この装置は、被写体周辺部の温度変化も併せてとらえることができるので、2次爆発等の災害の未然防止にも活用できる。
〔事例〕 昭和58年7月29日、大阪市内の石油化学工場において発生した爆発、火災事故で、鎮火後の現場見分中、廃油の入ったドラム缶内の温度が128度に上昇していることを赤外線応用装置によって発見したため、放水冷却することによって2次爆発を防止した(大阪)。
イ 写真計測法
 犯罪現場、事故現場等を撮影した写真が残っている場合は、写真の鑑定に幾何学等の数学を応用する写真計測法を活用して、被写体の大きさ、位置関係等を明らかにできる。例えば、防犯カメラに撮影された写真から犯人の身長、凶器の寸法等が測定できる。また、航空写真を撮影中の飛行機が墜落した事故において、事故の直前に撮影された写真から飛行経路、高度等が、あるいは大規模な事故において、その状況を撮影した航空写真から詳細な損壊状況等が分かる。
 今後は、コンピュータの解析機能を利用したシステムにより、写真計測の高度化及び写真による犯罪現場図面の自動作成化等を図ることとしている。
〔事例1〕 7月18日、渋谷区の金融機関で発生した強盗事件で、防犯カメラに撮影された写真から計測した犯人の身長は、7月28日に逮捕した無職者(41)の身長と一致しており、犯行の裏付けに寄与した(警視庁)。
〔事例2〕 12月14日、大田区で発生した橋りょう落下による業務上過 失致死傷事件で、落下状況について、別々の方向から撮影した2枚 の航空写真を基に解析を行ったところ、高精度の結果が得られ、事 故原因の究明に寄与した(警視庁)。
ウ 画像処理システムの開発
 防犯カメラ等によって撮影された写真は、犯人の動きが速いため、不鮮明な画像となることが多い。そこで、高度な写真技術とコンピュータ解析によって、「ブレ」や「ピンボケ」等を除去して鮮明化処理する画像処理システムの研究、開発を検討している。
(5)音声、筆跡の鑑定
 身の代金目的誘拐事件、脅迫事件等では、犯人が電話や手紙を利用することが多く、音声や筆跡の鑑定が犯人特定に果たす役割は大きい。
ア 音声の鑑定
 音声の分析、鑑定は、現在、サウンドスペクトログラフ、メモリースコープ等の分析機器を活用して得られた声紋のピッチ(声の高さを表す。)及びホルマント(周波数成分の強弱を表す。)の特徴について、犯人と容疑者の声を相互に比較対照する方法により行っている。
 科学警察研究所では、音声をデジタル信号に変えてコンピュータに入力して必要な処理を行い、抽出された個人的特徴を基に話者の識別を行う方法の開発を進めている。これにより、音声の異同識別に要する時間の短縮と精度の向上を図ることができる。
〔事例〕 3月3日に発生した名古屋市内の百貨店に対する恐喝未遂事件で、即日逮捕した会社員(41)の声と脅迫電話の声について声紋鑑定した結果、同一であることが確認できた(愛知)。
イ 筆跡の鑑定
 人が文字を書くときには、その字画構成、筆順、配字、筆勢、筆圧等に固有の特徴が現れるので、犯罪に使われた文書と容疑者等の書いた対照用資料について、筆跡上の特徴を相互に比較対照することによって、筆者の同一性等を明らかにすることができる。
 現在、筆跡鑑定は、経験を積んだ専門の技術者が手作業で行ってい


る。そこで、科学警察研究所と警視庁では、犯罪に使われた記載者不明の筆跡と容疑者の筆跡とが同一であるかどうかをコンピュータを用いて高い確度で識別するための研究を進めている。これは、比較対照する文字をコンピュータによって画像として読み取り、その字画の線の長さや角度等を数値としてとらえることにより、記載者の識別を行うものである。
〔事例〕 失明を装った多額保険金詐欺事件で、失明したと称した以後に被疑者(54)が作成したと認められる文書が、失明前と同一の筆跡であることを鑑定して、失明が虚偽であることを裏付けた。7月14日逮捕(愛媛)

2 捜査情報の大量高速処理

(1)指紋自動識別システム
 指紋は、個人識別に絶対的な価値を持つことから、犯罪捜査には欠くことのできないものであるが、従来、指紋の照合は手作業で行われていたため、大量の指紋を短時間で照合することには限界があった。

 

 このため警察庁では、コンピュータによる精度の高いパターン認識の技術を開発して、これを応用した指紋自動識別システムを実用化し、大量の指紋を高速で自動処理することによって、指紋による犯罪検挙の一層の向上を図っている。
 このシステムは、[1] 指紋読取り装置によって警察庁が保管する指紋カードの指紋を光学的に読み取らせ、これを電気信号に変換し、そこから約100点の特徴点情報を抽出し、これを大容量の磁気ディスク装置に記憶させて指紋ファイルを作成する。[2] 犯罪現場に遺留された指紋や被疑者の指紋の特徴点情報を指紋ファイルと自動的に照合し、類似指紋を出力させる。[3] これらの類似指紋について、指紋カードから該当カードを手作業によって抽出して同一かどうかを鑑定するものである。

 

 警察庁では、昭和58年10月から、犯罪現場に残された指紋から犯人を割り出す遺留指紋照合業務、59年10月からはこれに加えて、被疑者の身元や余罪を確認する業務を開始している。その結果、遺留指紋照合業務においては、指紋1個対1個の照合時間が大幅に短縮されたほか、従来のシステムではできなかった不鮮明あるいは部分的な遺留指紋の照合も可能となった。導入の前後1年間を比較すると、該当者の確認件数は4.4倍へと飛躍的に増大した。
 このシステムは、アメリカの一部の警察に導入されたのをはじめ、カナダ、韓国等10数箇国の警察でも導入が検討されているなど、諸外国でも高い評価を得ている。
 今後は、全国の遺留指紋の全部を速やかに照合できるようにするため、64年3月を目途に指紋ファイルの充実や関連機器の整備等を進めることとしている。
 しかし、遺留指紋照合によって出力される類似指紋について、手作業により該当カードを抽出して同一かどうかを鑑定する現在のシステムでは、増大する都道府県警察からの照会に対処していくことは不可能となる。このため、保管指紋を画像として光ディスクに登録し、必要な指紋を自動的に検索、画像表示できるシステムを研究、開発中である。
 また、このシステムの導入に合わせて、都道府県警察から警察庁に送られる遺留指紋の微細な部分まで忠実に再現することができる高分解能写真電送装置を開発し、58年度から従来の写真電送装置の更新を始め、59年度までに警察庁ほか18都道府県警察にこの装置が整備された。
〔事例1〕 8月4日、新宿区内のホテルで発生した殺人事件で、現場客室に残されたたばこの空き箱から採取した指紋は、従来のシステムでは照合不能な部分指紋であったが、このシステムにより緊急照合したところ、無職者(29)の右手中指と確認された。8月13日逮捕(警視庁)
事例2〕 8月24日、広島市で発生した強盗未遂事件で、現場付近の下水溝に投棄されていた凶器の文化包丁から採取した指紋は、従来のシステムでは照合不能な不鮮明指紋であったが、このシステムにより緊急照合したところ、無職者(21)の右手示指と確認された。8月25日逮捕(広島)
(2)コンピュータを用いた大量捜査情報の処理
ア 即時照会システム
 犯罪の広域化に対処するためには、捜査対象に関する主要な情報を全国単位で収集、管理し、各都道府県警察が活用できるようにすることが必要である。このため、警察庁のコンピュータには、都道府県警察から送付された資料を基にして、指名手配者、盗難車、各種盗難品等に関する情報が一元的に登録されており、第一線の警察官からの照会に対して、いつでも即時に回答できる体制がとられている。
 このシステムは、指名手配被疑者の検挙や盗難車等の早期発見に効果を挙げている。昭和59年における照会件数は約4,670万件で、前年に比べ約230万件増加した。
イ 捜査資料検索システム
 各種事件の捜査記録については、確実に整理、保管し、以後の事件捜査の参考にしていくことが重要であるが、従来は手作業による索引台帳方式で行っていたため、多大の時間が必要であった。
 警察庁では、都道府県警察からの事件報告文書等保有する捜査記録をマイクロフィルム化するとともに、必要な事項をコンピュータに登録することによって、捜査記録の確実な整理、保管と即時的な検索ができるシステム(捜査資料検索システム)の運用を開始している。
ウ 多角的照合システム
 犯罪捜査の過程で容疑者となる可能性を有する者が複数の観点(例え ば、A企業の関係者、B地域の居住者等)からそれぞれ多数把握された場合においては、各グループに重複している者の中に犯人が含まれている可能性が高い。警察庁では、この点に着目し、コンピュータで重複者の検索を行うことにより容疑者の範囲を絞り込むシステム(多角的照合システム)の開発、普及を進めている。
 従来、犯人に関係あると思われる情報ではあるが、それに基づく捜査対象が多岐にわたり、かつ、非常に大量であり、それらを逐一照合していくことが時間と人手の制約上極めて困難であったようなものも、都道府県警察がこのシステムを効果的に活用することにより、迅速、的確な捜査に役立てることができ、特に、広域犯罪の捜査に有効な手法になりうるものである。
 また、このシステムは、パーソナルコンピュータを整備することにより、警察署においても有効に活用することができる。
エ 重要事件関連検索システム
 現在、同一犯人による広域犯罪であるかどうかの判断については、各都道府県警察の広域捜査官等が中心となって、保管中の未検挙重要事件記録等により行っているが、広域犯罪の増加が著しい今日、細かなデータの突き合わせを手作業で正確に行うことには多大な労力と困難が伴う。
 警察庁では、広域犯罪捜査力の強化を図るため、コンピュータを活用して、重要凶悪事件の中から、同一犯人により2都道府県以上にわたって行われた広域犯罪を割り出すための機能等を有するシステム(重要事件関連検索システム)を開発した。
 このシステムは、まず、各都道府県警察からの報告に基づき、殺人、強盗殺人等の凶悪事件に関して、犯行内容、被疑者等の特徴項目を警察庁のコンピュータに登録し、その後、
○ 重要事件が発生した場合及び入力済みの事件について捜査情報を追加入手した場合、その登録に際し、既登録事件との照合を自動的に行い、類似事件を抽出して、同一犯人によるものかどうかの判断に資すること
○ 既登録事件、未登録事件を問わず、重要事件の被疑者が検挙された場合、既登録の未解決事件の中から類似事件を抽出し、余罪捜査の適正、迅速化に資すること
などにより、広域捜査を効率的に行うことを目的とするものである。
 このシステムは、60年度から運用を開始する予定である。


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