第3節 今後の展望
SNS等の新たな技術やサービスの普及が国民生活や社会経済活動の利便性を向上させる一方で、これらの技術やサービスが犯罪インフラとして悪用されている実態がみられ、また、犯人側が手口を巧妙化させていることは、これまで述べたとおりである。SNSを取り巻く犯罪に対処するため、警察においては、新たな捜査手法に関する取組や、サイバー人材の育成を進めていく必要があるところ、今後一層取り組むべき主な課題を紹介する。
1 新たな捜査手法の確立
① 仮装身分捜査の導入
SNS等のインターネット上において犯罪実行者が募集された上で実行される犯罪に的確に対処するため、捜査員がその身分を秘して募集に応じ、検挙等につなげる「雇われたふり作戦」を行う場合において、架空の本人確認書類等を使用する「仮装身分捜査」を適正かつ実効的に実施するに当たっての手続その他の遵守事項を令和7年(2025年)1月に定めており、一部の都道府県警察において「仮装身分捜査」が開始されている。これにより、実行犯の身柄の早期確保、首謀者や指示役の検挙を進めていく。
図表特-18 仮装身分捜査のイメージ

② 架空名義口座捜査等の導入に向けた検討
犯罪者グループは、他人名義の預貯金口座等を違法に取得するなどして、犯行に利用していることから、犯罪者グループの上位被疑者の検挙、犯罪収益の剝奪等を図るとともに、口座の悪用をけん制するため、捜査機関等が管理する架空名義口座を利用した新たな捜査手法等を検討することとしている。
③ 暗号化技術等に係る調査・研究、新たな法制度導入に向けた検討
犯罪者グループの壊滅のためには、匿名性の高い通信アプリをはじめとする犯罪に悪用される通信アプリ等について、被疑者間の通信内容や登録者情報等を迅速に把握することが重要である。
こうした被疑者間の通信内容等を迅速に把握するために効果的と考えられる手法について、諸外国における取組を参考にしつつ、技術的アプローチや新たな法制度導入の可能性も含めて検討することとしている。