特集 SNSを取り巻く犯罪と警察の取組

第1部 特集・トピックス

SNSを取り巻く犯罪と警察の取組

特集に当たって

本年の警察白書の特集のテーマは「SNSを取り巻く犯罪と警察の取組」です。

情報通信技術の著しい発展が社会に様々な便益をもたらす反面、インターネットで提供される技術やサービスの中には、犯罪インフラとして悪用され、犯罪の実行を容易にし、あるいは助長するものも存在しており、これらへの対策が喫緊の課題となっています。

例えば、多くの国民が利用するSNSについても犯罪インフラとして悪用される側面もみられます。具体的には、SNSを通じて対面することなく、やり取りを重ねるなどして関係を深めて信用させたり、恋愛感情や親近感を抱かせたりして金銭をだまし取るSNS型投資・ロマンス詐欺の被害は極めて憂慮すべき状況にあります。また、各種犯罪により得た収益を吸い上げる中核部分は匿名化され、SNSを通じるなどしてメンバー同士が緩やかに結び付くなどの特徴を有する「匿名・流動型犯罪グループ」が、SNS上で高額な報酬を示唆して犯罪の実行者を募集し、詐欺、強盗・窃盗等の犯罪を実行させた上で、末端の実行者を言わば「使い捨て」にしている実態がみられます。これらの犯罪をめぐる情勢は極めて深刻な状況にあり、国民の体感治安を悪化させる大きな要因となっています。

さらに、SNSが薬物の密売や児童買春等の違法行為に悪用されている実態もみられるほか、児童ポルノ等の違法情報や犯罪を誘発するような有害情報に加え、偽情報・誤情報のSNS上における投稿・拡散が社会問題化しています。

この特集では、第1節で「SNSを取り巻く犯罪の情勢と対策」としてSNSを悪用した犯罪とその対策について概観し、第2節では「SNSを取り巻く犯罪に対処するための技術的基盤」として情報技術解析部門の取組等を紹介します。そして、第3節では、SNSを取り巻く犯罪の現状と対策を踏まえ、今後の対策の在り方について展望します。

SNSの普及に伴い、「匿名・流動型犯罪グループ」をはじめとする犯罪者が国民の皆様に容易に接触を図り、犯罪を実行することが可能となっており、治安上の大きな課題となっています。また、SNSのアカウント開設時の本人確認が十分でない場合も見受けられ、SNSや匿名性の高い通信手段が捜査上のハードルとなっています。

今回の特集が、SNSを取り巻く犯罪の情勢と警察の取組状況についての国民の皆様の理解を深めるとともに、このような犯罪の被害を防止し、国民の皆様の安全・安心を確保していくための対策の在り方について考えていただく一助となれば幸いです。

MEMO SNSをめぐる近年の情勢について

SNSは、個人の日常的なコミュニケーション手段としての利用に加え、企業や行政を含む幅広い主体による情報発信にも活用されており、公共的なインフラとして国民生活や社会経済活動に広く浸透している。一方で、SNSは、匿名で誰もが双方向の発信を可能とするため、犯罪に悪用されるケースがみられるほか、これらのサービスを提供する事業者は海外事業者であることが多く、日本法人や国内法人窓口が設置されていない事業者については、円滑な捜査や迅速な情報提供の観点から課題もみられる。この特集では、急速に普及・進展するSNSを悪用する犯罪に対処していくための取組を紹介する。



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