第5章 安全かつ快適な交通の確保

2 適正かつ緻密な交通事故事件捜査

(1)交通事故事件の検挙状況

令和6年中の交通事故事件の検挙件数は、図表5-50のとおりである。

 
図表5-50 交通事故事件の検挙状況(令和6年)
図表5-50 交通事故事件の検挙状況(令和6年)
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(2)適正かつ緻密な交通事故事件捜査

警察では、一定の重大・悪質な交通事故事件の発生に際しては、交通事故事件捜査の豊富な経験を有する交通事故事件捜査統括官等が現場に臨場して、初動段階から捜査を統括するとともに、科学的な交通事故解析の研修を積んだ交通事故鑑識官が現場で鑑識活動等を指揮するなど、組織的かつ重点的な捜査を推進している。特に、飲酒運転、信号無視、無免許運転等が疑われるものについては、一般的に交通事故に適用される過失運転致死傷罪より罰則の重い危険運転致死傷罪や過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪等の立件を視野に入れた捜査を推進している。

また、ひき逃げ事件については、交通鑑識資機材や常時録画式交差点カメラ、ドライブレコーダー等の有効活用による被疑者の早期検挙を図っており、令和6年中の死亡ひき逃げ事件の検挙率は、97.3%であった。

(3)交通事故事件捜査の科学化・合理化

緻密で科学的な交通事故事件捜査を推進するため、警察庁では、交通鑑識に携わる都道府県警察の警察職員を対象とした研修を行っている。研修内容は、様々な状況を想定した車両の衝突実験を行い、衝突後の状況のみを見分させた上で交通事故の発生時における車両の状況や速度を究明させるなど、実践的・専門的なものとなるよう工夫している。

また、客観的な証拠に基づいた事故原因の究明を図るとともに、交通事故当事者の負担を軽減するため、常時録画式交差点カメラや3Dレーザースキャナ(注)をはじめとする各種の機器の活用を図っている。

他方で、重大な交通事故事件の捜査に集中することができるよう、軽微な交通事故に関しては、検察庁への送致書類の簡素化を図るなど、業務の合理化も進めている。

注:レーザー光線を周囲に照射することで、事故現場の路面における道路構造上の痕跡、遺留品の散乱状況等を自動的かつ正確に計測し、三次元点群データを作成する機器。同データは、専門のシステムにより、三次元画像処理や図化ができる。

 
事故解析に関する研修の状況
事故解析に関する研修の状況

MEMO ドローンの活用

群馬県警察では、捜査員が小型無人機(ドローン)の操縦技術の向上に努めつつ、交通事故事件捜査において、上空から撮影した現場写真を現場見取図の作成に活用するなど、捜査の科学化・合理化を図っている。

 
ドローンによる空撮状況
ドローンによる空撮状況
 
ドローンにより空撮した写真
ドローンにより空撮した写真

(4)交通事故被害者等(注1)の支援

警察では、「警察庁犯罪被害者支援基本計画」(注2)に基づき、交通事故被害者等の要望や心情に配慮した捜査に努めるとともに、被害者連絡実施要領(注3)等に基づき、図表5-51のとおり、交通事故被害者等に対して、交通事故事件等に関する情報を可能な限り提供するよう努めているほか、その心情に配慮した相談活動を推進している。また、都道府県警察本部の交通事故事件捜査担当課に、交通事故被害者等への連絡を総括する被害者連絡調整官等を配置し、組織的かつ適切な交通事故被害者等の支援を推進するとともに、交通事故被害者等の心情に配慮した適切な対応がなされるよう交通捜査員等に対する教育を強化している。

注1:交通事故事件の被害者及びその家族又は遺族

注2:令和3年3月に第4次犯罪被害者等基本計画が閣議決定されたことを受け、令和7年度末までの5年間において、警察庁が講ずべき具体的な取組内容等について定められている。

注3:犯罪被害者等に捜査状況等を確実に連絡するために制定されたもので、連絡対象となる事件、連絡内容等について定めている。

 
図表5-51 交通事故被害者等支援に関する主な施策
図表5-51 交通事故被害者等支援に関する主な施策

このほか、交通事故被害者等が深い悲しみやつらい体験から立ち直り、回復に向けて再び歩み出すことができるよう、交通事故被害者等の権利及び利益の保護を図ることを目的とする交通事故被害者サポート事業を実施している。



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