第5節 道路交通秩序の維持
1 交通事故抑止に資する交通指導取締り
(1)交通事故分析に基づく交通指導取締り
警察では、交通事故の発生実態等を分析し、取締りを実施する時間、場所等の交通指導取締りに関する方針を策定した上で、計画的に取締りを実施するなどして交通事故抑止に資する交通指導取締りを推進している。
また、交通指導取締りの必要性について国民の理解を深めるため、最高速度違反に起因する交通事故の発生状況や地域住民からの要望等を踏まえた速度取締りに関する指針を策定し、速度取締りを重点的に実施する路線や時間帯をウェブサイト等により公表している。
(2)悪質性・危険性・迷惑性の高い運転行為への対策
警察では、交通街頭活動を推進し、違法行為の未然防止に努めるとともに、無免許運転、飲酒運転、著しい速度超過、信号無視や歩行者妨害をはじめとする交差点関連違反等の交通事故に直結する悪質性・危険性の高い違反及び駐車違反等の迷惑性の高い違反に重点を置いた取締りを推進している。
また、運転中に携帯電話等を使用することは重大な交通事故につながり得る極めて危険な行為であることから、警察では、関係機関・団体等と連携し、その危険性について広報啓発を推進するとともに、携帯電話使用等の交通指導取締りを推進している。
さらに、妨害運転等の悪質・危険な運転行為を防止するため、交通指導取締りを強化するとともに、「思いやり・譲り合い」の気持ちを持った運転の必要性、ドライブレコーダーの有用性等について広報啓発等を推進している。
令和6年(2024年)中は、420万件4,155件の道路交通法違反の取締りを行っている。

悪質・危険な運転行為への交通指導取締り対策

CASE
自営業の男(26)は、令和6年5月、普通乗用自動車の前輪を油圧により車高を上下させるハイドロ装置によりホッピングさせながら、他人に危害を及ぼすような方法で運転した。同月、同男を道路交通法違反(安全運転義務違反)で検挙した(警視庁)。
CASE
外国人留学生の女(36)は、令和6年3月、公安委員会の運転免許を受けないで、一般原動機付自転車に該当する電動スーツケースを運転した。同年6月、同留学生を道路交通法違反(無免許運転)で検挙した(大阪)。

電動スーツケース
(3)使用者等(注)の責任追及等
事業活動に関して行われた過労運転、過積載運転、放置駐車、最高速度違反等の違反やこれらに起因する交通事故事件について、警察では、運転者の取締りにとどまらず、使用者に対する指示や自動車の使用制限命令を行っているほか、これらの行為を下命・容認していた使用者等を検挙するなど、使用者等の責任も追及している。
また、タクシーやトラック等の事業用自動車の運転者が、その業務に関して行った道路交通法等に違反する行為については、運輸支局等に通知して所要の行政処分等を促し、事業用自動車による交通事故防止を図っている。
さらに、自動車整備業者等による車両の不正改造等、事業者による交通の安全を脅かす犯罪に対しても、取締りを推進している。
注:163頁参照
(4)暴走族等対策
暴走族は、グループ数や人員が減少傾向にあるものの、いまだ各地において散発的な暴走行為が認められ、地域住民や道路利用者に多大な迷惑を及ぼしている。
警察では、共同危険行為等禁止違反、騒音関係違反(注)、車両の不正改造に関する違反等の取締りを推進するとともに、家庭、学校、保護司等と連携し、暴走族から離脱させるための措置をとるなど、総合的な暴走族対策を推進している。
注:道路交通法違反のうち、近接排気騒音に係る整備不良、消音器不備及び騒音運転等

(5)「白タク行為」対策
いわゆる「白タク行為」は、道路運送法に違反して旅客の運送を行う行為であり、利用者の安全確保の観点からも問題があることから、警察では、関係機関・団体と連携して、「白タク行為」の防止に係る広報啓発活動を行うとともに、令和6年中は同法違反で80件を検挙するなど、「白タク行為」の未然防止と取締強化に努めている。
