警察活動の最前線
オールジャパンで「匿名・流動型犯罪グループ」の壊滅へ
熊本県警察本部刑事部組織犯罪対策課組織犯罪特捜第二係
水野 賢治

私は特殊詐欺捜査を担当していますが、県民が安全に安心して暮らせる社会を目指して犯罪組織の実態解明や各種犯行ツール対策を行うなど、犯罪組織の壊滅に向けた各種捜査活動を行っています。
最近では、暴力団員が暴走族等に加担していた少年らを集めてグループを結成し、その少年らをオレオレ詐欺の受け子として全国各地に派遣する事件が発生しました。捜査に当たっては、初期の段階から全国の関係警察と密に情報交換を行い、匿名・流動型犯罪グループの犯行であることを特定しました。これにより、早期に合同捜査本部を立ち上げ、グループの首魁を含む多数の被疑者を検挙することができ、その結果、犯行グループを壊滅するに至りました。さらに、グループの背後に存在する暴力団に打撃を与えるべく、同グループ上位者に対し、被害金返還等を求める民事訴訟の支援を行っています。
匿名・流動型犯罪グループは、離合集散を繰り返しながら、次々に新たなグループが出現してきますが、今後も、我々警察は「絶対に悪には負けない」という強い信念を持ち、全国警察が一丸となり、関係機関と連携しながら犯罪組織の壊滅を目指していきたいと思います。

匿名・流動型犯罪グループによる犯罪ビジネスモデルの実態解明とその解体に挑む
前 京都府警察本部刑事部捜査第五課薬物捜査第一係(現 京都府警察本部総務部総務課企画係)
奥村 祐輔

昨今、全国的に大麻事件が増加傾向にありますが、私は、昨年、20代の若者が「闇バイト」として荷受役となった大麻密輸入事件の捜査に従事しました。
犯人として逮捕した若者は金に困っていたところ、地元の先輩から紹介を受けた口座買取グループにSNSで連絡をとり、複数の口座を売っていました。しかしその報酬はもらえず、数日後、SNSを通じて同じグループから、密輸入される大麻の荷受役という「闇バイト」に誘われ、犯行へ加担することとなったのです。
この捜査を通じて、匿名・流動型犯罪グループが、SNSを使って、金銭に困窮した若者を口座譲渡といった「闇バイト」の世界に引き入れ、報酬を支払わないまま、その世界から抜け出せない状態にして、大麻密輸入の荷受役という更に重い犯罪の実行犯に仕立て上げる犯罪ビジネスモデルの実態が判明しました。
私は、捜査を通じて、若者を安易に犯罪に走らせる危険性の高い仕組みが、日本の治安対策上大きな脅威となっている現状と同グループ壊滅の必要性を痛感しました。
今後も様々な警察活動を通じて、若者の将来を蝕(むしば)む同グループによる犯罪ビジネスモデルを解体すべく、日々奮闘してまいります。
