6 官民連携の推進
(1)インターネットバンキングに係る不正送金事犯への対策
警察では、インターネットバンキングに係る不正送金事犯に対し、関係機関と連携したフィッシング被害の実態把握や、フィッシングサイトに関する分析及び関係事業者への照会等、早期の実態解明と必要な取締りを推進している。
また、警察では、一般財団法人日本サイバー犯罪対策センター(JC3(注))等との間における官民連携の枠組みも活用して把握したフィッシングサイトの情報をウイルス対策ソフト事業者等に提供するなど、積極的な被害防止対策を推進している。
注:Japan Cybercrime Control Centerの略
(2)日本サイバー犯罪対策センターとの連携
我が国における産学官連携の枠組みとして平成26年から業務が開始されたJC3では、産学官の情報や知見の集約・分析をし、その結果等を還元することで、脅威の大本を特定し、これを軽減し、又は無効化することにより、以後の事案発生の防止を図ることとしている。警察では、捜査関連情報等をJC3において共有し、産学におけるサイバーセキュリティに関する取組に貢献するとともに、JC3において共有された情報を警察活動に迅速・的確に活用し、安全で安心なサイバー空間の構築に努めている。

MEMO フィッシングサイト撲滅チャレンジカップの開催
JC3では、専門的な知識を持たない人でもプラットフォーム事業者等に対してフィッシングサイトのテイクダウン(機能停止)依頼を行うことができるツールを開発し、サイバー防犯ボランティア等に提供している。
また、JC3では、サイバー防犯ボランティア等が同ツールを活用し、フィッシングサイトのテイクダウン件数等を競う「フィッシングサイト撲滅チャレンジカップ」を開催しており、警察庁がこれを後援している。令和6年7月に開催された第2回大会では、46団体が参加し、2,201件のフィッシングサイトがテイクダウンされた。
(3)サイバー防犯ボランティアに対する支援
サイバーパトロールにより発見した違法情報・有害情報をIHC、サイト管理者等に通報する取組やインターネット利用者に対する講演活動等を行うサイバー防犯ボランティアは、全国で301団体、7,298人(令和6年12月末現在)となっており、警察では、研修会を開催するなどして、こうした活動を行う団体の拡大と取組の活性化を図っている。

サイバー防犯ボランティアの活動
MEMO サイバー防犯ボランティアによる犯罪実行者募集への対策に関する活動
警察では、サイバー防犯ボランティアと連携し、社会情勢に応じた活動を展開している。都道府県警察では、いわゆる「闇バイト」による強盗事件等の発生を受け、学生に対する犯罪実行者募集の実態に関する講演等を通じ、これらに加担しないよう注意喚起を実施しているほか、学生ボランティアが自ら犯罪実行者募集情報を発見し、IHC等に通報するサイバーパトロール活動を実施している。
(4)サイバーテロ対策協議会
警察では、各都道府県警察及びサイバー事案の標的となるおそれのある重要インフラ事業者等で構成される「サイバーテロ対策協議会」を全ての都道府県において設置し、サイバー事案の脅威やサイバーセキュリティに関する情報提供、民間の有識者による講演及び参加事業者間の意見交換・情報共有を行っているほか、サイバー事案の発生を想定した共同対処訓練等を行っている。

サイバーテロ対策協議会
(5)サイバーインテリジェンス情報共有ネットワーク
警察では、情報窃取の標的となるおそれの高い先端技術を有する事業者等との間で、情報窃取を企図したとみられるサイバー事案に関する情報共有を行う「サイバーインテリジェンス情報共有ネットワーク」を構築しており、事業者等から提供された情報等を集約・分析し、事業者等に対し、分析結果に基づく注意喚起を行っている。
(6)高度な研究開発を行う大学を標的としたサイバー事案への対策の推進
近年、高度な研究開発を行う大学を標的としたサイバー事案が発生していることから、警察では、当該サイバー事案に関する情報収集・分析を強化するとともに、大学と連携し、サイバー事案をめぐる最新の情勢や被害防止対策等に関する情報共有及びサイバー事案の発生を想定した共同対処訓練を実施することなどにより、高度な研究開発を行う大学を標的としたサイバー事案への対処能力の強化を図っている。
(7)被害の潜在化防止に向けた取組の推進
① 関係機関と連携した通報・相談の推進
サイバー事案対処に当たっては、警察への通報・相談を一層促進し、国民・事業者等からの情報を広範に収集することが求められる一方、被害者自身に対する社会的評価の悪化の懸念等から通報・相談そのものがためらわれる傾向があり、いわゆる「被害の潜在化」が課題となっている。警察では、関係機関・団体、サイバー保険(注)を取り扱う損害保険会社をはじめとする民間事業者等との連携、民間事業者等との共同対処協定の締結等を通じて、サイバー事案による被害に関する警察への通報・相談を促進している。
注:サイバー事案等により企業に生じた損害等を補填する保険
② 通報・相談しやすい環境整備
警察庁では、令和6年3月、インターネットから通報・相談をすることができる一元的な窓口を整備した。また、ウェブサイト等における発信を通じて、サイバー事案に関する警察への通報・相談を促す広報を行うなどの取組を実施している。
さらに、サイバー事案に関する通報・相談に適切に対応するため、採用時教養、昇任時教養等において、サイバー事案対処に関する講義を実施するなど警察職員全体の対処能力の向上に向けた人材育成を推進している。