第2章 生活安全の確保と犯罪捜査活動

2 警察による犯罪被害者等支援

(1)基本施策

犯罪被害者等は、犯罪によって直接、身体的、精神的又は経済的な被害を受けるだけでなく、様々な二次的被害を受ける場合がある。そこで、警察では図表2-99のとおり、様々な側面から犯罪被害者等支援の充実を図っている。また、各都道府県警察において、あらかじめ指定された警察職員が事件発生直後に犯罪被害者等支援を行う指定被害者支援要員制度(注)が導入されている。

注:110頁参照

 
図表2-99 犯罪被害者等支援に関する主な施策
図表2-99 犯罪被害者等支援に関する主な施策

(2)犯罪被害給付制度・国外犯罪被害弔慰金等支給制度

警察では、通り魔殺人等の故意の犯罪行為により不慮の死亡、重傷病又は障害という重大な被害を受けたにもかかわらず、公的救済や損害賠償を得られない犯罪被害者又はその遺族に対し、経済的・精神的負担の軽減に資するため、犯罪被害者支援法に基づき、国が一定の給付金を支給する「犯罪被害給付制度」を、昭和56年(1981年)1月から運用している。同制度は、犯罪被害等の早期の軽減に重要な役割を果たしている。

 
図表2-100 犯罪被害給付制度
図表2-100 犯罪被害給付制度

また、日本国外において行われた人の生命又は身体を害する故意の犯罪行為により死亡した日本国籍を有する者(日本国外の永住者を除く。以下同じ。)の第一順位遺族(日本国籍を有せず、かつ、日本国内に住所を有しない者を除く。)に対し、国外犯罪被害弔慰金として被害者一人当たり200万円を、当該犯罪行為により障害等級第1級相当の障害が残った日本国籍を有する者に対し、国外犯罪被害障害見舞金として一人当たり100万円を、国外犯罪被害弔慰金等の支給に関する法律に基づき、国がそれぞれ支給する「国外犯罪被害弔慰金等支給制度」を、平成28年11月から運用している。

(3)犯罪被害者等の特性に応じた施策

犯罪類型等によって犯罪被害者等には異なる特性があることから、警察では、性犯罪被害者、交通事故被害者(注1)、配偶者からの暴力事案の被害者(注2)、ストーカー事案の被害者(注3)、被害少年(注4)、暴力団犯罪被害者等について、その特性に応じた施策を推進している。

注1:187頁参照(第5章)

注2:53頁参照

注3:53頁参照

注4:61頁参照

 
図表2-101 性犯罪被害者の特性に応じた施策
図表2-101 性犯罪被害者の特性に応じた施策

(4)関係機関・団体との連携

犯罪被害者等が支援を必要とする事柄は生活、医療、公判等多岐にわたるため、全ての都道府県において、警察のほか、検察庁、弁護士会、医師会、公認心理師関連団体、地方公共団体の担当部局等の関係機関・団体から構成される被害者支援連絡協議会が設立され、犯罪被害者等支援のための相互の連携を図っているほか、犯罪被害者等の具体的なニーズを把握して、事案に応じたきめ細かな総合的支援を行うため、警察署等を単位とした連絡協議会(被害者支援地域ネットワーク)を設置している。

また、よりきめ細かな犯罪被害者等支援を行うため、全ての都道府県において、犯罪被害者支援法に基づき、都道府県公安委員会が、犯罪被害等の早期の軽減に資する事業を適正かつ確実に実施できる団体を犯罪被害者等早期援助団体として指定している。都道府県警察では、同団体に対し、犯罪被害者等の同意を得て、犯罪被害の概要等に関する情報提供を行うなど、緊密な連携を図っている。

さらに、警察庁では、犯罪被害者等の生活支援を効果的に行うため、地方公共団体の職員に対し、犯罪被害者等施策主管課室長会議、全国犯罪被害者等支援実務者会議等を通じて、総合的対応窓口と関係機関・団体との連携・協力の一層の充実・強化を要請するとともに、犯罪被害者等支援における社会福祉士や公認心理師等の専門職の活用を働き掛けているほか、各都道府県内における市区町村間の連携・協力を促進するため、市区町村の職員等に対する研修会等を開催するなど、犯罪被害者等施策の総合的な推進に関する事業を行っている。



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